第二章『だからおいらは前科者なのさ』
おはよう。
おいらは生き恥晒しの無礼者なんだけど、今日清掃の帰りに皆んなから「おかえりなさい」って挨拶されたよ。無視して喫煙所行ったけど。
天気は雨だったから作業所は昼で帰ったよ。
おいらダルマに似てるって言われるけど、泥棒にも似ているって、知り合いが言ってた。
おいら野菜と魚が嫌いなのよ。肉ばっか好んでいるせいで、顔つきが貪欲だって言われた。知り合いはおいらの事泥棒って言うけど、実際そうだよ。作業所に置いてあるお土産は、必要以上に食うよ。
この間は小憎たらしいって言われた。あと、貧乏くさいって言われた。
おいら知り合ったばかりの人に、自分の母親をためらわずに紹介するよ。それと、まだ十分に信頼関係を築けていない奴の事、「友達」って呼んだり「親友」って呼んだりするよ。歯は磨かなくて、コーヒーに砂糖ばっか入れて、タバコもめっちゃ吸うよ。そのせいで歯は真っ黄色でボロくなっちまったよ。
他の人のものは横取りするし、自分本位で、作業所にある共用の物はおいらのモノ。好き放題使って何か悪いの?
おいら弟分が出来るのに憧れてて、注目されたくて、それ位自分の事が好きなのよ。特に出来る事とかないけど、自分の事を特別って思ってる。知り合いにはおいらの事「兄貴」って呼ばせてるよ。
おいらトイレは上手に出来なくて、いつも床を汚しちゃうよ。
おいら作業所行ったり、生活保護とか受けてるけど、そういうの利用して楽したいのよ、だってそうでしょ。人の優しさは利用してるし、何かを好きとか嫌いとか言うのって、結局おいらにはそれがどれだけかっこいいかとか、言葉の響きがすごいとかそんなもんなのよ。
外面だけ見てるって事。
おいら野球が好きなんだけどさ、野球の事知らない相手にもその話聞いてもらいたいから、無理矢理その話したりするよ。
この間知り合いの家に泊まれそうになったんだけどさ、朝飯は出させようとした。
社会的な場のルールを守りたいって思わないし、現に守ってもいないで、チャリとかこの間パクった。ほんでおいら、窃盗で捕まった。だから海外には行けないよ。
友達と約束した時間とかおいらには関係ないし。
というか、決まりを守るのが嫌だ。
だからおいら、前科者なのよ。