貴方と遭う日まで
どのくらい前のことだっただろうか。あの日僕はどこかの山の中にいた。
近くには大きな木や鳥居があって、雨の降る空の下、足に怪我をして泣いている小さな女の子がいた。僕はその子を助けてあげようと思い、手を伸ばしてみる。届かない。足が動かないのだ。でも諦められず、一生懸命に手を伸ばす、伸ばし続ける。あ。あと少しで届きそうだ。
「あきつくん、あきつくん」
「秋津誠くん!」
僕は知らない女性の声で目を覚ました。
「やっと起きたぁ。初日から居眠りとか度胸あるねぇ。」
そういえば今日は高校の入学式だ。今は入学式が終わって、たしか教室で自己紹介をしていたっけ。
「秋津くん次は君の番だよ」
この人は俺の担任か。
流石に恥ずかしいのでとっとと終わらせてしまおう。
「秋津誠です。中学は埼玉の秩父のところに通ってました。趣味は特にありませんが、山には詳しいです。」
パチパチパチと渇いた拍手が教室に鳴り響く。
僕の高校生ライフは少し躓いてスタートした。




