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レジェンドオブアストラル  作者: ゆきみだいふく
プリンセスナイトと異能

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プリンセスナイトとエンデヴァー

 市内のとある路地には、走る皐月と叶魅の姿があった。


『ここは僕に任せて二人は逃げてほしい。必ず追いかける。だから心配するな』

『だったら私も残るよ!』

『叶魅頼む』

「……わかった……。お兄ちゃん気をつけてね」


 皐月と叶魅は、自分達を逃がすために残った一葉の言葉を思い返し、走りながら涙を拭う。


「お兄ちゃん……」

「一葉くん……」


 捕まれば、世界が組織の手に落ちるかもしれないという重責。一葉と叶魅と過ごす何気無い日常を、また送りたいという希望。

 様々な思いを抱えながら、皐月と叶魅は助けを求めて必死に走る。


「警察は……組織の手が及んでるかもしれない。スマホは壊されたから、ノノミさんとも連絡が取れないっ。どうしよう、どうすればっ」

「なんとか、真白くんと合流して助けを求めよう。今はそれしか方法がないから」

「うん」


 しかし、そんな彼女達の思いを阻むように、大男が眼前に立ちはだかる。


「鬼ごっこはここまでだ。大人しく捕まるがいい」

「「!?」」


 目の前に現れたエンデヴァーの存在に、叶魅と皐月の表情は絶望の色に染まる。

 エンデヴァーが追ってこれたということは、自分達を逃がすために残った一葉が捕らえられたことを意味していたためだ。


「一葉を心配しているのか? それなら安心しろちゃんと生きている。ちょっと怪我をしているがな」


 一葉の生存に安堵すると同時に、二人は別方向へ逃げようと足を踏み出す。


「大人しくしろ。『結合』の異能を持つお前が、一番重要なんでな」

「くっ!」

「皐月を離して!」


 だが、一瞬にして皐月は組み伏せられた。エンデヴァーとの距離は10メートル以上開いていたにも関わらずだ。

 ランクAの異能による規格外の現象に、皐月と叶魅は再度驚愕する。


「だ、誰か、助け……」

「お願い誰か! 皐月を助けて!」

「無駄だ。誰も助けには来ない」


 その時、舞花の式神がエンデヴァーの頭部を狙い、真白はその隙に佳織を取り戻し、叶魅を後ろに下がらせた。


「大丈夫……!? 皐月さん、叶魅さん……!」

「神原さん!?」

「真白くん!?」

「怪我はない?」

「水瀬さん……?」


 舞花は叶魅と皐月と知り合いのようだ。


「話は後で、さっき応援を呼んだから……ここは私に任せて楓原さんと神原くんと逃げて!」

「!? で、でも……」

「大丈夫だから、お兄さんのことも心配しないで……」

「ククク、クククク……やってくれたな神原真白。攻撃はそこの小娘だな? 的確に頭を狙うとはやるな」

「「……」」

「ああ、そうだ。組織は神原真白(お前)の件からは手を引く」

「……」


 叶魅と皐月が体が震えているのに気がついた。


「俺としては不本意だが、そこの娘らをこちらに渡せば見逃そう」

「ふざけないでください……。『デウス・エクス・マキナ』は一体どこまで、碌でもない連中の集まりなんですか? 僕は……貴方達のやってることが気に食わない……!」


 組織のやることに真白は心底ムカついていた。ウィルの婚約者である、シスベルを捕らえたこと。部下の独断とはいえ、紗希に手を出したこと。組織から逃げ出して、平穏な生活を送っている叶魅達の邪魔をすることなど、真白は許せなかった。


「神原くん、私がこの人を足止めするから二人をお願い!」

「わかりました! 舞花さん、すぐに戻ってくるのでそれまでお願いします!」


 二人の手を繋ぎ、真白は舞花に強化を施した。

 そして『空間跳躍』を行ったのだった。





「カーカ、カ」

「カー!?」


 少し前、屋根上で家の警備をしていたクロウは、部下カラスからの報告を聞き、焦りを覚える。

 報告では、自らの主人が怪力を持つ大男に襲われ、今まさに交戦中だというのだ。


「カー、カーカ」

「カーカ!?」


 また、真白の知り合いと思われる1人が気絶させられ『デウス・エクス・マキナ』に捕らえられてしまったという。


「カー……」

「クロウよ、どうかしたのか?」


 報告を聞き終えたクロウのもとへ、異常を察した琥珀がやってくる。


「カー、カーカ」

「ふむ。それは、あまり良くない状況だな」


 クロウは、部下からの報告を琥珀に説明した。


「おそらくだが、エンデヴァーじゃろうな」

「カー!」


 琥珀の推測を聞き、クロウは真白を助けるために自らも向かう意思を示す。


「まぁ待つのだ。確かにエンデヴァーは厄介な相手じゃ。じゃが、エンデヴァーは怪我は完治していないはず、まだ本調子ではないだろう。我らが主人は、その程度の輩にやられるほど弱くはない。主人にはアイが付いている。本当に危ない時は、アイからの報せがあるはずだ。それに真白には少しでも戦闘経験を積ませたほうがいい」


 真白は知らないが、アイが危険だと判断した際には家の固定電話を鳴らすよう、琥珀たちとの間で取り決めをしているのである。

 そして、固定電話は未だに鳴っていない。


「カー……」

「心配する気持ちは分かるが、お主は偵察の要だ。今は情報の収集に専念することが適切な選択だと儂は思うぞ?」

「カー…」


 琥珀の言葉に、クロウは歯切れの悪い返事をする。


「落ち着いて状況を整理するぞ。真白と共にいた長い黒髪の少女というのは、恐らく舞花じゃろう。そして襲われていた少年少女……これもあくまで儂の考えでしかないが、真白が『デウス・エクス・マキナ』から守ろうとしていた者達じゃろう。」

「カーカカカー」

「そうじゃな『平穏な生活』……主人のその願いを汲むためにも、こちらから我々が打って出る頃合いやもしれん。おそらく、前の本拠地は放棄してどこかに、仮の支部があるはずだ。そこを特定してほしい」

「カー!」


 クロウは部下のカラスへ指示を出す。

 1つは、主人である真白の動向を見守ること。そしてもう1つは、敵組織の本拠地を特定することだ。


「カー!」


 部下のカラスは了解の意を示し、飛び立っていった。


「うむ、的確な指示だな。本拠地がわかれば、こちらからも行動を起こす事ができる。それでは、儂も動くとしよう」

「カー?」

「龍翠のところへ行ってくる。儂らが暴れる前に、知らせておいたほうが良いと思ってな」


 琥珀の呟いた「暴れる」という言葉から、彼の心境をクロウは感じ取った。

 自らの主人を襲撃したことと、真白の家族である紗希を襲った事実に、琥珀も相当な怒りを感じていたのだ。


「それでは、行ってくる」

「カー!」


 屋根を伝って出掛けて行く琥珀を見送りながら、クロウは部下からの報告を待つのだった……。


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