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レジェンドオブアストラル  作者: ゆきみだいふく
プリンセスナイトと異能

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プリンセスナイトと襲撃

今日もいつも通り、平穏な1日だった。


「いつも通り平穏な……平穏?」


 スマホで調べてみる。

 平穏とは、『変わったことも起こらず、穏やかなさま』らしい。いつも通りではないが、今日はほんとに平穏だ。間違ってはいない。


「マスター、大丈夫デスカ?」


 心配したのか、スマートフォンのアイが話しかけてくれた。さっそく変わったことが起きた。

 はい、平穏終了。


「あ、大丈夫だよアイ。それと、人前ではなるべく話さないようにね」

「了解シマシタ」


 授業終了直後でよかった。授業終わりの余韻で教室がざわついているため、アイの声は誰にも聞こえなかったようだ。


「それにしても、平穏かぁ……」


 平穏に生きたいという真白の人生設計は、最近狂いっぱなしだ。

 陰陽術の試合に参加したり、宇宙人に会ったりなどなど。神様と出会ってからトラブルに巻き込まれやすくなった気がする。


「まてよ? それに比べれば、スマホが話すとか普通だね」


 さっきのはノーカンだ。今日はまぎれもなく平穏な1日だ。



周囲の人達が空を見上げている事に気付く。


「えっ、何これ?超ヤバイじゃん」

「世界の終わり……か?」

「すげぇ……」


 真白もその方向を見上げると、周辺に建つビルの屋上や電線の上を埋めつくすほどのカラスの大群がいた。


「……ん?」

「どうしたの、弟くん?」

「いや、カラスの群れにクロウがいて」


 そのカラスの群れの中、一際高い位置に、見覚えのある白いカラスがとまっている。


「……クロウ何やってるの?」


 真白と一定の間隔を保つように、クロウも移動した。

 そして、そのクロウに付き従うように、カラスの大群も移動する。


「やだ、怖い」

「ちょっ、これヤバイんじゃね?」


 周囲では、ちょっとしたパニックが巻き起こっている。


「本当だ。何やってるんだろうね」

「あれ?あの道、工事中なのか」


どうやら、真白の護衛をしてくれていたらしい。ジェスチャーだったので、カラスのボスになっている理由や護衛をしてくれている理由は分からなかったが。

 そんな事を考えながら歩いていると、工事中の看板が立っているのが見えた。朝は何も無かったのだが、工事が始まったらしい。


「工事中ですけど通れますよ、どうぞ」

「あ、そうなんですか。失礼します」

「すみません。失礼します」


 看板の前まで行くと、工事のおじさんが通してくれた。遠回りする必要が無くなったので、ありがたい。

 普段はひと気の無い寂しい道なのだが、今は何台もとまっている工事用車両のエンジン音で少し騒がしい。


「あれ? 工事の人、いないのかな?」

「なんだか変だねー」


 無人で動いてるということはないはずだ。なにやら嫌な予感がした。


「カー! カー!」


『ここから急いで離れろ』とクロウが鳴いた。


「ふふふ、神原真白。貴方を倒しに来たである」

「貴方はあの時の……!」


 さっさと通り抜けようと思ったら、前方から歩いてきた怪しい男に絡まれた。燕尾服を纏い、シルクハットを被っている。『デウス・エクス・マキナ』の一員であるジェントルだった。


「それでは、さようならなのである」


 シルクハットの男が持っているステッキで地面を叩くと、とめられていたショベルカーが人型ロボットにトランスフォームした。


「まずい……!」


真白と紗希はトラン◯フォーマーの鉄拳に押しつぶされたのだった。


「ジェントルとサンゴが神原真白に襲撃をかけたですって!?」

「は、はい」


 部下の報告を聞き、ルチルは頭を抑える。


支部へと戻ってきたのは、エンデヴァーとジルコンだったのである。

 戻ってこなかったジェントルとサンゴには、前から勝手な行動をとる節があった。そのため、いつも通り寄り道でもしているのかと思い、2人が戻らないことをルチルは重要視せずにいたのだ。


「しっかりと動向を見ておけばよかったわ……」


 ルチルは、頭を抑えながら静かに悔やむ。


「工作員を何名か使い、神原真白の帰路の一部を封鎖。現在、戦闘にはいった模様です」

「独断で、勝手なことを……」


 ルチルは、即座に『感知』を発動した。

 仮設支部から神原真白の家までは、数十キロも無い。帰路の途中であれば、ルチルの異能の効果範囲内なのである。


「見つけたわ、まだ戦闘は始まったばかりね。すぐに工作員の増援を送りなさい!ランクC以下を連れて行っても構わないわ、周辺の住人に気づかれないよう隠蔽工作の強化を行いなさい!それと、戦闘後に殺されていなければ、ジェントルとサンゴも回収しなさい」

「了解しました!」


 部下は駆け足で部屋から退室する。


「こうなった以上、仕方ないわ。二人が彼に殺されないように祈るしかないわね」


 そう呟き、ルチルは自らの異能に集中するのだった。











 少しだけ広く作られたとある路地。ひと気の無いその道では、工事用車両のエンジン音とともに、鉄塊を叩きつけるような轟音が何度も鳴り響いていた。


「手応えは、あったのである。どんな異能を持っていようとも、無事では済まないはずなのである。まあ、一般人を巻き込んでしまったが仕方ないのである」


ジェントルは、鉄拳を幾度も振り下ろす機械人形を見ながらそう呟いた。

 しかし、その予想は大きく外れることとなる。


「なっ!?」


 直後。鉄拳を振り下ろしていた人形の四肢が切り落とされ、崩れるようにしてその場に倒れたのだ。

 そして、残骸の中から現れた青年と少女は、学生服を纏いながらも一切の傷はない。


「あれだけの攻撃をくらって、なぜ無傷なのである!?」

「企業秘密です」


 そう叫んだ後、青年は手に持っていた剣を構え直した。

 

「無傷の理由は分からないであるが、私の人形を壊したのは、その剣を用いた異能であるな?」

「教えるわけないじゃないですか。紗希姉さんを巻き込んで死んだらどうなってたんですか」

「一般人を巻き込んだのは悪いであるが、私達がランクAに到るため、犠牲になってもらう必要があったのである!」


 青年の言葉を無視し、ジェントルは自らの異能を全力で発動した。











 鉄拳に押し潰された時は、真白と紗希はマジで死ぬかと思った。鉄拳が来る前にクロウの警告のおかげで咄嗟に『三重結界』と『多重障壁』を張ることができた。


「クロウのおかげで助かったよ。ありがとう」

「カー!」


『どういたしまして』とクロウは言っている。


「真白くん、この人はなんなの!?」

「ごめんね姉さん。僕のせいでこんなことに巻き込んで。簡単に説明するとウィルとシスベルさんを捉えようとした組織の人間」


あの後警察に捕まっていたが、こんなに早く釈放されるとは思っていなかった。

沸々と真白は怒りが湧いてくる。紗希ごと巻き込んだことを許せなかった。


「クロウ、レメ! 姉さんを守って!」

「カー!」

「オ任セクダサイ!」

「それと姉さん、この身代わり札を肌に貼っておいて。ダメージを肩代わりしてくれるから。それと一歩も動かないでね」


出現したアイ。護衛をしているクロウに紗希の守りを任せて。身代わり札を何枚か渡した。

紗希を囲むように『三重結界』、『多重障壁』を張った。身代わり札はあるがダメージを肩代わりしてくれても痛みは残るのだ。

 真白の眼前には、工事用車両がトランスフォームしたロボット達が道を埋め尽くしている。今はこいつらをどうにかしないといけない。

 数は、9体くらい。


「さあ、吾輩の異能『玩具』の素晴らしさを、とくと味わうのである!」


 いきなり殺そうとしてきた。


「くらうのである!」


 人型ダンプカーが突進してきたが、動きが遅いうえに単調だ。ただ大きいだけ。


「飛ぶ斬撃」


 ソードビットで生み出した剣に纏わせた霊力を、斬撃として放つ。ダンプカーを解体する。


「なるほど、斬撃を飛ばす異能であるか。だが、吾輩の人形はまだまだ存在するのである!」


 ジェントルの掛け声で、ロボット化したクレーン車、ショベルカー、ロードローラーが次々と襲い掛かってくる。


「いけ!いくのである!」

 

 続けて2体のロボットが突進してくるが、関係ない。片っ端から解体する。

感知の異能で人が乗ってないので、問題なく切ることができる。


「くっ、まだなのである!」


 残りは3体か。だがーーー


「ーーーでかい……」


 1体の掌にはシルクハットが乗っており、指揮官機のようになっている。そいつは普通のサイズなので簡単に解体できそうだ。だが、それを守る2体が物凄くでかい。今までのロボの倍くらいの大きさがある。


「おおっと」


 動きは相変わらず遅いが、拳も倍くらいの大きさだ。なので、躱すのが難しい。これじゃあ近づけない。


「ちょっと怖いけど、飛ぶかな」


 足の裏から『火炎弾』を放つ。


「なっ!空を飛べるのである!?」


こういった不測の事態に備えて、真白は体育の無い日は足に『火炎弾』の術式を描いているのである。

 ちなみに、腕には描いてない。腕まくりした時とかに見られたら、厨二病確定だ。


「飛ぶ斬撃」


 空中から斬撃をばら撒き、大型ロボ2体を解体した。そして、残った指揮官機へと接近。


「ごはっ!」


 する前に、背後から迫る拳に殴られ、真白は道路に叩き落とされた。


「『火炎弾』!」

 

 痛む左腕をさすりながら、火炎弾で緊急回避する。直後、真白の叩き落とされた地点にロボの鉄拳が炸裂した。


「やばい」


 くらっても死にはしないが、痛みは感じるのだ。殴られた左腕も無傷だが、ちょっと痛い。


「にしても、なんで背後から……あ、そういう事ね」


 でかいロボットは、2体のロボが合体した姿だったらしい。真白が切り落としたのは、上半身ロボの両腕と下半身ロボの両足だったわけで、下半身側のロボットが細長い腕を目一杯伸ばし、ぶんぶん振り回している。


「飛ぶ斬撃」


 速攻で解体する。ついでに、倒し損ねた他のロボ達も解体した。

 

「斬撃を飛ばし、空を飛び、どんな攻撃でも無傷……い、一体なんの異能を所有しているのである!?」

「企業秘密です!」


 シルクハットが半狂乱で叫んでいるが、いきなり襲ってきた礼儀知らずに真白は教えるつもりなどない。

 口ぶり的に陰陽術は知らないようだし、このまま混乱していてもらおう。


「『火炎弾』!」


 散弾の推進力でシルクハットへと迫る。


「ち、近づけさせないのである!」


 指揮官機が腕を振りかぶるが、遅すぎだ。あっという間に四肢を切り落としす。落下した腕に乗っていたシルクハットは、衝撃で尻餅をついている。


「なんで僕を襲ってきたのか、話してもらいますよ」


 そんなシルクハットを剣で脅しながら、質問を投げかける。


「ひいっ!……なんちゃって、なのである」

「え?」


 シルクハットの「なんちゃって」に苛立ちを覚えた直後。指揮官機の胴体が溶け、誰かが抱きついてきた。


「つーかまーえたー」


 見ると、抱きついてきた相手はタンクトップ姿のピンク髪少女だった。楓とクロウが戦った一人だ。というか、なんて格好しているんだと思った。

 

「キャハハ、溶けちゃえ!」


 タンクトップ少女がそう言うと、少女の肌と接触している服がみるみるうちに溶けていくと思いきや、溶けていかない。


「キャハハ、気付くのが遅すぎー!……って、あれ? 溶けない。なんで?」


 服も体も一切溶けていない。『三重結界』で攻撃を無効化している。

『感知』でサンゴが地面に潜り込んでいたのは気づいていた。


「えっ、なんで? なんで溶けないの!?」

「……よいしょっと」


 軽いパニック状態の少女を優しく引き剥がし、その顔を見据える。


「『アストラルバインド」

「え?」


 ピンク髪の少女サンゴを『アストラルバインド』で拘束した。


「まずは一人目」

「ちょっとなにこれ!? 全然抜け出せないんですけど!!」


 サンゴは必死にもがくが拘束からは抜け出せない。


「さてと……」

「ひっ!」

 

 シルクハットへ向き直ると、めちゃくちゃ怯えている。切り札だったらしい少女が呆気なく拘束され、相当動揺しているみたいだ。 


「おじさん」

「ひ、ごはっ……」

「あれれ?」


 少し強めの口調で怒鳴っただけなのだがシルクハットの人は夢の世界へ旅立ってしまったらしい。どんだけ怯えてるんだよと思った。


「僕達をどうするつもりなの!?」

「落ち着いて。殺すつもりはないから。知り合いに君たちをどうするか相談はさせてもらうけど」


 襲われた理由は気になるが、帰ったら琥珀にでも相談するつもりだ。

襲われたことに少し腹が立つが、殺したくはない。

 真白は持ち物を回収する。


「マスター、メールです」

「ん? メール?」


 アイからメールの着信音が聞こえてきた。受信ボックスに一通のメールが届いていた。


『初めましてノノミです。神原真白くんにちょっと『デウス・エクス・マキナ』の件と楓原一葉、楓原叶魅、皐月の三人をお願いしたい事があるんですけど、よろしいでしょうか?』


 怪しい雰囲気が漂っている。迷惑メールっぽいようにも見えるが、なぜか真白の名前を知っているようだ。

そして組織と叶魅達についてのこと。組織と叶魅と皐月が関わるのかまったくわからない。


「アイ、これどう思う?」

「マスター、調ベテミマショウカ?」

「うん、お願い」

「了解シマシタ」

「真白くん、どういうこと?」

「帰ったら説明するよ」

 

真白は琥珀達に相談するために急いで帰宅するのだった。


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