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レジェンドオブアストラル  作者: ゆきみだいふく
プリンセスナイトと異能

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プリンセスナイトと未知との遭遇3

 ボロボロとなった自身の体。


「何が……起こった……?」

「……ふむ。やはり、儂の能力は理解できなかったようだな。霊力による衝撃波を発生させたのじゃよ。殺しはせんよ。あくまで救出が優先じゃからな」


 エンデヴァーの言葉に、琥珀は首振りながら答える。


「……降参だ。複数の異能を使える化け物なんて、俺の手に余る。こんな体じゃ戦うこともできん」


 降伏したエンデヴァーを見やり、琥珀は満足げに頷く。


「侵入者だ!! 捕えろ!!」

「『アストラルバインド』」


 琥珀達に戦闘を任せて真白とウィルが目指したのは、最上階。

 地を這うように疾走しながら、警棒を持った男と刺股を持った女性を拘束していく。

 なかなか使い勝手いいのスキルで相手を無力化できる。


(この人たちウィルがシスベルさんを助けにくることを想定して捕らえようとしているね。ウィルはこの人たちを殺さないように、周囲に危害を与えないように我慢していたっていうのに……吐き気がする人たちだ)


 突然扉をぶち破り、人間が室内へ侵入してきたのだ。

 ウィルの恋人シスベルが監禁されている部屋は、20畳ほどのスペースがある。

 宇宙人を確保している施設にどのような罠があるかわからない。扉を壊した方が早かった。

 部屋に入ると、手術台のような机にひとりのグレイ型宇宙人が寝かされていた。

 手足と腹部を革ベルトで固定され、動けないようだ。

 よほど辛かったのだろう。真っ黒な瞳からは、人と変わらない透明な涙が流れている。


「シスベル!」


 ウィルが駆け寄り革ベルトを外そうとするが、鍵がかかるタイプのようで難しいようだ。

 真白が近づくと、シスベルと呼ばれた宇宙人が怯えた様子を見せる。


「安心してくれ、シスベル。彼は、神原真白。地球の友人だ」

「どうも、神原真白です。ウィリアムさんの友達です。よろしくお願いします」


 安心させるように笑顔を浮かべた真白が革ベルトを引きちぎった。

 触れて気づいたが、ただの革ベルトではなく、何かしらの動物の皮に血と墨を塗ったものだ。

 観察してみると魔道具と呼ばれるものらしい。


(……ここの人たち、本気で彼女を解剖するつもりだったみたいだね。胸糞悪い)


 シスベルが寝かされていた台の横には、メスを始めとした様々な器具が置かれていた。

 使用される前でよかった、感動の再会を果たして抱きしめ合う宇宙人カップル。


「それじゃあ二人とも僕の手を繋いでください」

「ああすぐに……なっ!」

「……どうやら、このまま帰してはくれないようだね」


 真白が部屋の入り口を見ると、2人の男女が入ってきた。


「私の名はルチル、こちらはジルコンよ。あなたは一体、何者なの?」

「僕の名前は神原真白。この宇宙人を助けにました。おとなしくそこを空けてくれるとありがたいのですけど」

「それは無理ね。こちらにもメンツがあるの。ただで帰すわけにはいかないわ」

「そうかですか……」


 戦闘態勢をとる真白へ、ウィルが話しかける。


「マシロサンキヲツケテクダサイジョセイノカタガ『感知』、男ダンセイのカタガッ……」

「それ以上は、話させませんよ」

「キャ!!」

「シスベル!?」


 ジルコンの発動した『捕縛』により、シスベルとウィルは動きを止められた。


「大人しく帰してはくれませんか? 人質の救出さえできれば、こちらとしては問題ないので」

「確かに、あなた達の力は強大だわ。今まで組織が見つけられなかったことが不思議なほどにね。でも、だからこそ、このまま何の成果もなく帰すわけにはいかないのよ!」


 ルチルは真白の警告を無視し、拳銃を取り出す。狙いは、真白の背後で動きを止められているウィルとシスベルだ。


「『三重結界』」


 放たれた弾丸は、見えない壁によって防がれる。


「それが貴方の異能なのかしら?」

「企業秘密です」


 敵に教える義理はなく真白は答えない。 

 銃弾を防がれたことなど気にもとめず、ルチルは銃を乱射する。


「ただでやられるつもりはないわよ」

「無駄ですよ。この結界を貫くことは……!?」


 瞬間、真白は驚愕した。背後から迫った一発の銃弾が、真白の頬を掠めたのである。


「結界が無効化された……?」

「ジルコン今よ!」

「『捕縛』!」

「動けない」


 ジルコンが『捕縛』を発動した。今出せる全力を注いだ捕縛である。

 しかし、身動きを封じられた真白の表情には、一切の焦りはない。

『強化』。自身の身体能力と触れている物体の性質を強化できる異能。

 エンデヴァーの『強化』見て先程、覚えることができた。神様が強化してくれた身体能力に『強化』の異能を重ね掛けして捕縛から力技で無理矢理抜け出した。


「これは……『強化』の異能。エンデヴァーの異能も使えるの!?」

「ルチルさん、これは厄介です」


 結界を破られたことに驚いた。しかし、ルチルの異能は感知の能力だ。能力を無効化する弾丸は何発も撃てるほどの数はないだろうと推測する。

 真白はルチルの一連の言動について考える。

 そして、「ただでやられるつもりはない」という言葉から、感じていた違和感が確信へと変わった。


「僕に勝つ気がないですね?」

「な、何を……」

「『捕縛』の異能は僕に効力が薄く、貴女の『感知』も決定打にはなり得ない力です。協力すれば僕を止める事はできるかもしれませんが、倒すことはできない。今の弾丸も、何発も撃てるほどの数はないんじゃないですか?」

「……」

「あなた達はそれを理解したうえで挑んできている節があります。それは何故ですか?」

「……」


 策が看破されかけている事実に、ルチルは押し黙る。


「おそらくですけど、下の階で待機している仲間も関係しているのではないですか?そして、貴女の胸ポケットに入っているその機械にも、意味がありそうですね」

「!!!」


 待機している仲間の存在を既に見破っていた事実と、それを踏まえた真白の鋭い予測に、ルチルは驚愕し目を見開く。

 そして、閉ざしていた口を開いた。


「……そうね。もう気づいてそうだから、正直に話すわ。私達は、あなたに勝てると思っていない。実際、戦えば確実に負けるでしょうね。能力を無効化する弾薬もそれほど量産できないわ」

「やはりそうでしたか。二人の異能は『感知』と『捕縛』。能力無効化の異能者はここにはいないのでしょう」

「でも、あなたの能力さえわかれば対処のしようがあるわ。下の階にいる部下には、私と同じ『感知』の異能を持つものがいる。そして、胸ポケットの機械は戦闘を記録するための小型カメラよ」


 ルチルの胸ポケットに装着されているカメラ映像は、本部のPCと繋がっている。そして、待機している『感知』の異能者は、最大で数百メートル以内の情報を感じ取る事ができるため、この戦闘を観察する事が可能なのだ。

 これらの備えによって本部に真白の情報を知らせる事こそが、彼女の最大の目的だったのである。


「なるほど。それは厄介ですね。ならあなた達を捕縛させてもらいます」

「こっちは全力で抵抗させてもらうわ」


 会話はここまでというように、ルチルは銃撃を再開する。

 しかし、結界は、着弾でも傷一つつかない。


「僕にも意地があるので、見られていると分かっていて、普通に戦うのは癪なのですぐに終わらせます。『アストラルバインド』」


 真白言葉と同時に、引き金を引くルチルの指が、止められる。


「な、なんで!? 指がっ! 体が動かないっ!?」


 彼らはなすすべもなく真白に拘束されるのだった。




 白いカラスが2人の前へと降りたった。そして、「お前たちの相手は自分だ」とでも言うような眼差しを2人へ向ける。


 あっという間に解体された5体の機械人形を目にし、ジェントルは叫ぶ。

 残りの機械人形は3体。対して、クロウは無傷。この時点で既に、勝敗は決していた。


「カーカカーカ!」

「……言葉がわからないのである」


「お前に勝ち目はない、大人しく降伏しろ!」というクロウの決め台詞は、ジェントルに届くことはなかった。


「だが、このまま終わるわけにはいかないのである。せめて1人だけでも、道連れにさせてもらうのである!」

「!」


 ジェントルの覚悟を感じ取り、クロウは咄嗟に距離をとる。しかし、何も起こらない。


「地面がドロドロです……」

「カ!?」


 クロウが慌てて振り向くと、既に腰までが地面に沈んでいる楓の姿が目に映った。

 道連れにするために狙われた対象は、楓だったのである。


「もう、地面に潜るの大変なんだからね〜」


 サンゴのその言葉とともに、楓の背後の地面から機械人形に乗ったが現れ、鉄拳を放った。


「カ!」


 サンゴの存在を忘れていた事を悔やみながら、クロウは楓のもとへと向かう。だが、クロウの速度をもってしても、至近距離で放たれた鉄拳には間に合わない。


「……」


 そんな状況の中、楓は、鞘に納めたままの短刀を頭上へ構える。そしてーーー


「えっ、ぐへっ!」


 ーーー勢いよく短刀を振り下ろしたのである。


「しょ、衝撃波!?なぜあの幼女も、カラスと同じ衝撃波を放てるのである!?」


 楓の振り下ろしによって発生した衝撃波は、サンゴと機械人形を溶けた地面ごと吹き飛ばした。

 結界に叩きつけられたサンゴは気絶し、至近距離で衝撃波の直撃を受けた機械人形は四肢がバラバラとなっている。

 その光景を目撃したは、開いた口が塞がらないほどの驚愕を示した。


「カーカ」


 そんなのもとへ、クロウが静かに降り立つ。そして、「もう勝敗は決した、降伏しろ」というように、鳴き声を発した。


「くっ、もはやここまでなのであるな……」


 今回は言葉の意味を理解できたジェントルは、残っていた機械人形を車の状態に戻し、両手を挙げて降伏のポーズをとった。


「ジェントルさんとサンゴさんが、負けた!?」

「ランクAに近いあの2人を倒せたってことは、あの幼女とカラスは、ランクAの異能者ってことかよ!」

「む、無理だ。俺も降伏する」

「わ、私も!」


 その光景を目撃していた戦闘員達は次々と武器を捨て、と同じく両手を挙げる。


「カー!」

「勝ちました」


 そして、1人と1匹の勝利の叫びが結界内にこだまするのだった。


 捕縛されていたウィルとシスベルを助け出した後、真白は拘束したルチルとジルコンに宇宙人を捕らえた目的を聞き出していた。


(この人ら、ウィルがシスベルさんを助けにくることを想定して捕らえようとしていた)


 宇宙人を発見し、捕らえたということは興奮するだろう。

 真白個人からすると、友好的な宇宙人と邂逅していながら敵対するような行動をとるのは滑稽でしかない。

 仮にも『デウス・エクス・マキナ』を名乗るのであれば、宇宙人と交流して未知なる世界に足を踏み込もうとする浪漫があってもいいはずだ。


「宇宙人を捕まえて何するつもりだったんですか?」

「……」

「素直に答えた方がいいですよ? 素直に答えない場合は、もっと過激なことします」


 もちろんただの脅しである。真白は傷つけるつもりは全くない。


「わかったわ。話すから。神々が宇宙から現れた存在だと考えているのよ」

「んん?」


 ルチルから急に持論を展開されて、さすがに真白も戸惑った。


「神って宇宙人なんですか?」

「それを確かめたいから、宇宙人が神々なら、仲間の危機に神族が駆けつけるかもしれないじゃない。そうなれば、我らの考えが合っていたことになる! なのに、貴方が邪魔したせいで!」

「そんなどうでもいい理由で捕まったシスベルさんが不憫でならないですよ」


 以前、動画サイトで各地に残る伝承に登場する神が宇宙から現れた存在だとかいう動画を見たことがある。

 その時は興味があったが、神様や陰陽師に異能者に会ってからなんでもありじゃないか、と思えてくる。

 さすがに宇宙人との邂逅にはビビったし、胸が高鳴ったが、神が宇宙人説とかを聞いてしまうと萎える。


「もしかして、ツチノコもいたりします?」

「都市伝説みたいな存在まで知らないわよ! そういうのは研究している奴らに聞け!」

「それは残念。ここの施設の人達は宇宙人を捕らえようとしていたってのは、理解に苦しみますけどけど」


 ルチルとジルコンのスマホを回収して、指紋認証でロックを解除すると、メッセージなどで誰かに宇宙人のことを話していないか確認していく。

 幸い、誰にも伝えていないようだ。ルチルの胸ポケットに入っている小型カメラも回収する。


「よし。これで仲間が後から来ることはないはず。監視カメラを潰したようにスマホとかその辺もみんな潰してもらって……せいぜい修理代に泣くといい」

「全て真白に任せてすまない」


 ウィルの感情こそ読めないが、彼が真白に負い目を感じていることくらいは声のトーンでわかった。


「あはは、いいっていいって。ハッキングしてくれただけでも充分だよ。シスベルさんを無事に救出できたわけだし、琥珀達と合流しようか」

「ああ、そうだな。ありがとう真白」


 真白は自然と人差し指を伸ばした。

 ウィルも応じてくれた。

 人差し指と人差し指が触れあった瞬間、真白とウィルは友達を超えた存在になった。


 ――時間は少し遡る。

 櫻川丘警察署署長室にて、星宮謙吾ほしみやけんごは苦い顔をしてお茶を啜っていた。

 友人である龍翠からの電話がかかってきたのだ。

 謙吾は中学時代から様々な事件に巻き込まれ、警察官になっても非日常な世界に身を置き続けた。

 そのため陰陽術や異能などの存在も知っているのだ。

 そしてドームの客席で神前試合を見ていた。仮面の術師の正体は伏せられており、龍翠からはなにも聞かされてはいなかった。

 はぁ、謙吾とため息をつく。

 ため息の原因は、真白や龍翠のことである。

 パンツスーツを身に着け、長い髪をポニーテールにしている、二十歳ほどの女性だ。

 名を星宮雅ほしみやみやびと言い、星宮謙吾の娘だった。


「どうしたの? ため息なんかついて?」

「さっき、龍翠から電話があってな」

「龍翠さんがどうしたの?」

「神前試合で水瀬家に力を貸してくれた仮面の術師を覚えているか?」

「ああー……ドームを壊した謎の陰陽師ね。それがどうしたの?」

「水瀬家の守り神である白虎様から龍翠に連絡があってよ。その仮面の術師が何かやらかしたらしい。あとで、俺も行くが、手伝ってやれ」

「えー、とっくにお家帰る時間なんだけどぉ」

「お前は年下趣味だろ?」

「ちょ、ま、なにを、いきなり、ていうか、どうして」


 父親の突然すぎる発言に、雅は驚き大慌てした。

 その慌てっぷりを見て謙吾は確信した。


「以前な、お母さんがお前の部屋を掃除した時に、可愛い男の子の――」

「ぎゃぁあああああああああああああああああああああっ!」

「待て、落ち着け。お父さんは理解がある。安心しろ」

「安心しろ、じゃねーよ! プライバシーの侵害すぎる!」

「お前の好きなサークルや作品の傾向も、お母さんとすべてチェック済みだ」

「ぶっ殺すぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 刀を抜いて構える雅の顔は真っ赤だった。

 まさか自分の趣味をすべて両親に把握されていたとは思いもしなかったのだろう。

 彼女の頭の中で、押し入れに入れてある「アレ」だけはバレていませんように、と願う。


「しっかし、押し入れにあったやつは内容がエグかったな。しばらくお前がよからぬことをしないか心配になったぞ」

「だからプライバシーはどこに!?」

「部屋の片付けをちゃんとしないお前が悪い。趣味だからと呑み込んで見逃してやっていたんだぞ」

「礼を言えと!? 違法じゃないよ! ていうか、私の趣味と仮面の術師に何か関係あるわけ!?」

「仮面の術師はきっと中学生か高校生くらいだろ? 水瀬家の守り神を助け、今や名を縛り使役するほどの力の持ち主だ。そいつの存在自体が今後大きな争いの火種となる気がしてならないんだよ。というわけで、お前、嫁に行け!」

「は? なにがというわけな? 頭沸いちゃったの? 仮面の術師がやべぇって話しているのに、なんで嫁に行く話になってるの?」


 謙吾の提案はマイペースな娘でも困惑させるには十分だった。


「監視役を頼みたい。まあお前が気に入って、その仮面の術式と結婚したいと思ったなら健全なお付き合いは心がけてもらう。たぶんだがお前の好みに合う気がするんだ。まあ、三年四年くらい我慢だな」

「生殺しじゃない! 結婚するならいろいろやらせてよ!」

「……お前、仮にも警察官だろうに。」


 意外とまんざらでもなかった娘に謙吾が内心にやり、と笑う。


「仮面の術師を見て雅、お前はどう思った?」

「戦闘の実践経験が足りないけど、あの子はやばいよー」

「だよな」


 娘が仮面の術師を話題にしてくれたので乗っかる。

 自分の娘ながら、マイペースなので扱いに困る。

 普段は上司と部下として扱っているものの、実際は謙吾にしか扱えない問題児でもある。


「お前からみてもやばいのか、仮面の術師は?」

「逆に聞きくけど、あの子にやばくない要素ってある? 水瀬家の守り神を従えて、強力な式神もいる」

「――だよな。あとで、俺も行くが、手伝ってやれ」

「なんか嫌な予感がするから私が行かなくてもいい?」

「――仕事だ。行け!」

「いやぁああああああああああああああああああああああああああ!」


 雅が未知との遭遇を果たすまで、あと十五分。


「マシロサン、タスケテクダサリ、ドウモアリガトウゴザイマシタ」

「いえいえ、シスベルさんも無事でなによりです。人間が怖い思いさせてごめんなさい。だけど、あんな人らばかりじゃないから、ウィルも、人間を嫌いにならないでくれると嬉しいな」

「気にすることはない、友よ。我々の中にも悪人と善人がいる。人間全てが悪人ではないとわかっている」

「ニンゲンノコトハスキデス。ワタシ、ガクセイジダイ、ニンゲンノレキシヲベンキョウシテイマシタノデ」

「勉強熱心なんですね。すごいな」

「シスベルは地球学を専攻しているのだよ。だから婚前旅行も地球を選んだのだ」


 とにかくこの気のいいグレイたちが不幸な目に遭わずに済んでよかった。なによりも宇宙人と大戦争に発展しなくてよかったと安堵した。


「琥珀達のところに戻ろうか。いま『感知』で確認したけど、1階では既に勝敗が決したみたいだし」

「ああ、そうだな」

「ハイ」


 新しく取得した『感知』を使い、真白は1階の状況を把握した。


「琥珀達お疲れー」

「主さま!」

「カー!」

「お主達もお疲れだ。無事に恋人を救出できたみたいだな。ウィルよ」

「ああ、真白達のおかげでシスベルを救出することができた。感謝する。ありがとう」

「ウィルカラハナシヲキキマシタ。タスケテクレテアリガトウゴザイマシタ」


 1階に戻ってくると、琥珀達の手により能力者達が拘束されていた。



 雅は父親に命じられて、真白のやらかした事後処理に向かっているのだが、最低限の結界を張っているおかげか、力の大半は遮断できている。

 どのような術を使っているのか不明だが、ぜひスカウトしたい使い手だと思った。


「あー、やだやだ。私はただの公務員なんだけどなー」


 コンパクトな旧型の外車を恐る恐る運転しながら、『デウス・エクス・マキナ』の所有しているビルに近づく。


「さーて、仮面の術師の手助けに来たものの、なにをすればいいんでしょうね?」


 雅がはぁ、とため息をついた時だった。

 こんこん、と愛車の窓を誰かがノックした。


「はいはい、誰です――か?」


 車外に、大きな白い虎とグレイと呼ばれる宇宙人がいた。


「失礼するぞ。お主が龍翠が呼んだが応援でいいのかの?」

「はい、そうです。水瀬家の守り神、白虎様ですか?」

「ああ、そうじゃよ。琥珀だ」

「初めまして琥珀さん。私は龍翠さんの友人である星宮謙吾の娘、星宮雅です! それで……隣にいる方々は……?」

「失礼。私はウィリアム・ヘンダーソンだ。」

「ぎゃぁあああああああああああああああああ! 宇宙人! グレイ! ていうか、日本語を流暢に喋ったっ!?」

「こちらは私の婚約者のシスベルだ。彼女を助けるために、真白が力を貸してくれた」

「え? ぎゃぁあああああああああああああああ! まだいたぁあああああああああああああ!」

「ハジメマシテ、チキュウノセイメイタイ。ワタシハ、シスベル、ヨロシク」

「落ち着いてほしい。私はあなたに危害を加えるつもりはない。彼ら保護を頼みたい」

「無駄にイケボなのが怖い! って、よく見たら誰かを抱えてるじゃない! あれ、キャトる? 晩御飯にするなら、そいつらだけでお願い! 私は美味しくないよ!」

「我々は人間を食さない。いろいろ誤解があるようだ。まず、ちゃんと話し合おう」


 刀を掴むも、狭い車内のため振り回すことができない。

 雅は、次の車は車内の広い車種にしようと誓った。

 宇宙人と邂逅したせいか情緒不安定になっただったが、今まで悪魔や妖怪と戦った経験があるため、なんとか冷静さを取り戻した。


「よく見ると神前試合にいたカラスと幼女がいる。神前試合にいた仮面の術師もいますか?」

「あっ、それは僕のことですか?」

「キミがあの時の仮面の術師?」

「はい、初めまして神原真白です。えっと、お姉さんは……」

「どーも、初めまして星宮雅です! てか、私、未知との遭遇とかしちゃったじゃない! どうしてくれる

 の!」

「落ち着いてください。僕も数時間前に遭遇したばかりで……」

「どうして宇宙人がいるのか話してもらっていい?」

「実は……」


 ウィルとの出会いやこれまでの経緯を雅に話した。


「宇宙人と友達になるとか、真白くんコミュ力高すぎない!?」


 ウィルとシスベルの無事と、龍翠が信頼できる人として宇宙人との邂逅に動揺を隠せない女性を送ってくれたことがわかり、真白の肩から力が抜けた。


「それで彼らどうします?」

「あまり我々の存在は知られたくない。宇宙的装置で記憶を消しておこう」

「ウィルもシスベルも人がいいの。もしかしたら解剖されてたのに助けるなんて」

「我々は人間の死を望まない。やむを得ない場合もあるが、真白達のおかげでそうはならなかった。感謝している」

「アリガトウゴザイマス」

「なんだか、照れくさいな。たいしたことしてないんだけどなぁ」


 ウィルとナンシーは本当に心から感謝してくれている。それが、心地よく、少しくすぐったかったのだった。


 To be comtinued

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