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レジェンドオブアストラル  作者: ゆきみだいふく
プリンセスナイト
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プリンセスナイトと現実での再会

 昴と会った次の日の午後。ピンポーンとチャイムがなり真白は宅配かなと思いドアを開けた。

 まばゆい日差しが、オレンジの髪に陽光が当たり、きらめいていて美しかった。

 身に纏っているのは黒を基調としたドレス風のタイトな洋服だ。それはなんとなく英国のメイドのようであった。


「初めまして真白様、今日から住み込みで働かせていただきますセレナと申します」


 セレナと名乗る少女は見たところ、真白より少し上くらいの年齢に見える。一年前ぐらいまで働いていたハウスキーパーは年齢のために辞めていた。

 両親は滅多に帰ってこなく、帰ってきても宿泊施設として使っているだけだったので、実質ハウスキーパーの人が育ての親代わりだった。


「セレナさんでしたっけ? 何も聞いてなくて……」

「申し訳ありません真白様。まずはこれをお読みください」


 セレナから渡された手紙を開けて読む。


『やっほー、少年元気にしてるー? これは私からのサプライズだよ。キミを探して色々と身辺調査をさせてもらった。少年の家庭環境は色々と複雑だねー。

 何かあれば私の実家を頼っていいよー。家族にはキミの事情は話してあるから手紙には連絡先を記してある。

 私は七冠から逃げ回っている。今はキミの手助けはできないけど、代わりとしてセレナに少年のサポートを頼んだからよろしくねー。キミのご両親には話し合いをして了承を得ているから大丈夫だよ。それとセレナはよく食べる方だから、少年の銀行口座に食費を入れておいたから生活の足しにしてくれて構わない。キミに太陽と星の祝福を。迷宮寺昴より』


 もう一枚の紙には連絡先が書いてある。しかも驚いたことに桐生院の連絡先が書かれていた。

 桐生院とは名の知れた資産家だ。昴が桐生院家の人とは思わなかった。


「セレナさんは本当に住み込みで?」

「昴様からの指示で生活及び、アストラルでのサポートをさせていただきます」

「なるほど、わかりました。もしかしなくてもアストラルで会ったセレナさんでいいのかな?」

「はい、そうです。こちらでもセレナとお呼びください」


 戸惑いが大きいものの、真白は気にしないことにした。

 メイド服姿と髪の長さ以外は変わったところないといった感じだ。


「僕は別に構わないけど……その身の危険感じないのかな? 年頃の男女が住むわけなんだけど」

「何かするなら潰します。物理的に及び精神的に。そして再起不能に」

「ヒエッ、やだこわい」


 真白も馬鹿でも節操なしでもない。というよりしたいという気にならないのが本音だ。年頃の男の子だったらそういう気を持っていてもおかしくないだろうが。

 彼女からはどこか隠しきれない気品と高貴差を感じるからなのか、どうもしたいという気にならない。ただのメイドではないと思うが、余計な詮索をしない方がいいと思った。


「部屋は余っているから好きなところを使っていいよ。」

「ありがとうございます」


 真白は二階の余っている部屋を案内をする。セレナの荷物はスーツケースだけのようだ。


「ふむ……真白様は掃除が苦手ですか?」

「あはは……一応はやってるんだけどね?」


 トイレを始めとした水回りや往来の激しいリビングのカーペットなど、最低限の掃除はしているつもりなのだが、やはり一人で家事をするとなると時間は限られているのでそれどうしても手が回らない部分があった。

 使われてない部屋も掃除はしているが最低限に掃除しかしておらず、セレナの部屋は少し埃を被っている。真白は申し訳なく思う。


「ごめん、ちゃんと掃除してなくて」

「いえ、責める気はありませんので。早速ですが今日は家中を掃除をしましょう。」

「ふふふ……そういうことならお姉ちゃんも手伝わせてもらうよ!」

「お兄ちゃん、私も手伝います!」


 バンとドアが開けられる紗希(さき)瑠璃るりの姉妹だ

 真白の幼馴染で長女の紗希は女子にしては高い身長に出るところは出て引っ込むところは引っ込んだ均整取れた体つきの美人だ。黙っていれば物静かな淑女に見えるが、口を開けばハイテンションな人でお喋りが好きで誰とでも仲良くなれる。

 次女の瑠璃は明るくハキハキとした性格でお喋り好きで畳みかけるように話すことが多い。ちょっとアホでドジっ子なところがあるものの素直で良い娘だ。


「やっほー、セレナちゃん」

「セレナさん、どうもです!」

「紗希様、瑠璃様」

「あれ? 三人は知り合い?」

「お二人には事前に会って話をしましたので」

「一週間ぐらい前にね」

「そうですね。美人な方が家に来た時は驚きました」

「そうだったのか」


 三人はすでに会っていたみたいだ。


「お兄ちゃん、皆でお掃除をしましょう!」

「でも手伝ってもらうのは悪いし……」

「いいのいいの気にしないで。好きでやりたいだけだしね」

「お兄ちゃん。一緒にやりましょう。みんなでやればお掃除楽しいですよ!」


 ニ人は乗り気で、こうなると真白は、好意を突っぱねるわけにはいかなくなる。


「わかったよ。手伝いに来てくれてありがとうね」


 真白は素直にお礼を言い、急遽家の掃除が始まるのだった。


「……ふう、綺麗になったね」


 怒涛の掃除を終えた時には、夕方になっていた。徹底的に掃除をしたおかげで、部屋全体が見間違えるように綺麗になっていた。


「疲れましたー」


 真白と瑠璃はリビングのソファーに深く腰を掛ける。


「みんなお疲れさまー」

「皆様お疲れ様でした」


 三人の前に、カップの入ったをお茶を持ってきてくれる紗希。

 誰よりも働いていた紗希とセレナは疲労の顔を浮かばせないでいた。


「二人はまだまだ元気そうだね」

「ふふふ、お姉ちゃんだからね」

「慣れですので」


 紗希は答えになっていないことを言い、セレナは元々メイドとして慣れているから余裕なのだろう。


「夕食はもう買い物に行く気にもならないから、出前か外食でもしようか。さすがに今日は奢らせてください。普段なんか家事を手伝ってもらってるから」

「お姉ちゃん達は好きでやってるんだよ!」

「お兄ちゃんは気にしなくていいですよ」


 家事は一通りできるが、草摩家でお世話になったりとしている。


「それにまだまだ余裕だよ!」


 見るかぎり余裕そうなのがわかるがお世話になっているとはいえ夕食を作らせる、というのは気が引けた。

 普段からお世話になっているのに更に動かせるというのが申し訳なかった。


「普段からお世話になってるからたまには奢らせてよ。ね?」

「真白君がそういうならわかったよ」

「今日は僕の奢りだから、何か食べたい物の希望はあるかな?」

「お兄ちゃん、私はピザが食べたいです!」

「私はみんなが食べたい物でいいよ」

「セレナは何か食べたい物の希望はあるかな?」

「私もよろしいのですか?」

「もちろんだよ。セレナも頑張ってくれたしね。もしかして皆と一緒にご飯を食べるのは嫌だったかな?」

「いえ、そうではなくて……その皆様とご一緒してよろしいのですか?」


 真白は一人よりみんなで食べるのが好きだ。なので遠慮しないでほしいのだ。


「もちろんいいよ。セレナも一緒にご飯を食べよう。一人よりみんなで食べる方がいいな」

「……わかりました。ありがとうございます。」

「いいっていいって、セレナは何か食べたい物はあるかな?」

「私もピザでいいです」

「りょーかい、それじゃあ出前はピザにしようか」


 メニュー表を受け取って、早速目を通している。クールであまり感情を浮かべない瞳だが、この時はどこか生き生きとして輝いているように見える。


(……もしかして、結構楽しみにしてるのかな?)


 心なしかそわそわしているようなセレナは少しの間メニューを見てから「これがいいです」と控えめに四種類の味が楽しめるパーティー向けのピザを指差す。

 窺うようにこちらを見てくるセレナに了承すれば僅かに瞳が輝いた。

 ほんのりと表情も嬉しそうなので、真白はうっすら微笑しながらスマホを片手に広告に掲載されている電話番号を打ち込んだ。

 約一時間後に届いたピザを、セレナは早速食べていた。

 食べる姿はどこか品があるように見えるのは、やはりどこかのお嬢様なのだろう。

 それでいて、どこか小動物のような小さなものを見て感じる愛らしさにも似た感覚を抱かせた。

 伸びるチーズにへにゃりと目を細め、ほんのりと頬を緩めている姿が、妙に可愛らしい。

 大人びて見える彼女はクールで落ち着いた雰囲気があったのだが、今のセレナは年相応の雰囲気だ。

 小さな口でピザを堪能しているセレナに可愛らしく感じて、微笑みそうになるが表に表情を出さないように我慢する。


「……なにか?」

「いや、美味しそうに食べると思ってね」

「……あまりじろじろ見ないでください」

「ごめんごめん」


 嫌そうに眉を寄せるセレナに真白はうっすら苦笑して謝る。手紙に書いてあった通り、セレナはよく食べる方で次々とピザを平らげていた。


「紗希お姉ちゃん、今のところは大丈夫ですけど……なんだかまずい気がします」

「うん、そうだね。非常に強力なライバル出現って感じだね」


 二人でこそこそと話していることに真白は気づいていなかった。


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