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板書の読めない授業を受ける

作者: 紀伊章


 ちょっと突然の思い出話で恐縮ですが、

 中学や高校の先生と、大学の先生って結構違いますよねぇ、という話です。


 中学や高校の先生は教える事が専門ですが、大学の先生は研究が専門です。

 なので、大学の先生は教える事にあんまり熱心じゃなかったりする。


 とは言え、教える事への情熱もそれなりに持っていらっしゃる先生もいらっしゃって。


 このような先生に出会ったことがあります。


「板書を取る事に重きを置かないで、もっとしっかり授業を聞いてほしい。

 そのために、板書を取りにくい授業をします」


 授業の初回に、ちょっと理解し難い事を仰る先生。


 ざわつく学生。

「え?この先生、何言ってんの?」

「この授業、必修なんだけど、大丈夫か?」

※必修の単位は卒業に絶対必要ですが、高校までと違ってあっさり落としたりします。


 学生達の理解が及ばないうちに、切られる戦いの火蓋。


 先生の心の赴くままに、縦横無尽に書かれる板書。

(左から右へとか、上から下に、という秩序が無い。消される順番も、書いた順番と違う)


 そうでなくても分かりにくい記号(ζとかρとか)が使われるのに、数字の「3」なんだか、ひらがなの「ろ」なんだかも読み分けられない悪筆。


 全てを無事に写し終えても、授業を覚えていないと意味を成さないノート。


 無駄に繰り広げられる、先生と学生達の攻防。


 重要っぽい板書を、自身の背中で学生達の視線から隠す先生。


 必死で盗み見ようとして、頭の動きがエグ〇イルみたいになってる学生達。


 湧き起こる疑問。

学生達(我々)は何をやらされているのか?)


 上がる学生達の悲鳴。

「まだ、そこ書いてなかったのに!」

「先生の背中で隠れてた、一番新しい板書、消された!」


 やけに良い笑顔で授業を続ける先生。


 ……嫌がらせなの?

 いいえ、教育熱心なんです。

 その証拠に、必修の授業を四つとか持っていらっしゃる。


 先生の仰る事も一理あるんです。


 ノートの奇麗な学生って、成績順で並べると、一番手グループにはほとんどいない。

 一番手グループの人間は、授業を聞く事に集中していて、ノートはキーワードやメモ程度。

 そんで、奇麗なノート取ってるクラスメートからノート借りてコピー取って、テストはその子より成績良い。理不尽ですな。

 ノートが奇麗な人は、授業を集中して聞く事に使うべき労力を、ノートを綺麗に書くことに使っちゃうわけです。


 先生は、多分、それを止めさせたいのね。


 まぁ、もっと理不尽な、授業も出ないでテストだけ受けて、一番良い成績取っちゃう人もいますけど。


 我が母校は、世の中が理不尽だ、という事を学生に嫌という程、教え込んでくれる学校でした。


 そもそも、入試の日に、雪で交通機関が止まったところがあっても、再試や追試のような考慮をしてくれない。

 運も実力の内、という訳です。

 ちなみに、私の先輩がそれで浪人したそうです。

 何故先輩が、浪人してまでそんな不親切な大学に入ろうと思ったのか、未だに疑問。(当時、聞けなかった)

 

 授業を受ける教室の席も、学生の数より少なかったり。(初回の授業で溢れるが、GW超えるとちょうど良くなる)

 必修の授業なのに、偏差値45未満を落第させるとか。(さっきとは別の先生。偏差値だから相対評価なんで、毎年下から30%位を落第させてる)


 大学は、社会に出る直前の教育期間なので、世の中の厳しさにさらされるのも有かな、とは思います。


 高校までの授業で、教えるのが上手い先生の授業は、板書をただ書き写してるだけで、参考書みたいなノートが出来上がって、それを見れば勉強が出来ました。


 でも、大学の卒業研究位になると、先生にお膳立てしてもらう訳にいきません。


 曲がりなりにも、世界で自分しか研究していない内容をまとめないといけないので、先達がいないんです。

 先生も、良さそうな行き先を示してくれるだけ。

 自分で計画立てて、自分で準備して、自分で実行して、自分でまとめないといけない。


 そういう事を出来るようになるまでに、三年しかない。

 一年の授業を聞いたり理解したりという段階から、自分で工夫を始めなさいよ、という事かもしれません。


 ビックリするけどな。

 足の着くプールでしか泳いだこと無いのに、突然、海の沖合に放り出されたみたいに思ったぜ。

※高校までと違って、大学は普通に脱落者が多量に出ます。


 後、こうして理不尽に慣れた母校の卒業生(我々)は、図らずも高い会社員(社畜)適性を獲得してしまうらしく、各企業の採用担当(奴隷商人)からの評価が高く、就職難の時代にあっても就職率(出荷状況)が結構良いです。


 私なりの、板書の取れない授業を受けるコツを、一応まとめておきます。


 ①予習必須。

  使われる記号などは、先に把握しておく。


 ②ノートは、キーワードやメモ程度。

  見て思い出せるようにするのが目的。


 ③聞く事に集中。

  最大の集中力は、日ごろの授業でこそ発揮するべし。

  各回の授業で、各回の内容の流れを頭に入れてしまう。

  出来るかどうかはともかく、頑張る。


 ④先生が板書している→その時に話している内容が重要という目印だと思う。

  先生が板書をしている時こそ、重要な事を話しているので、書いている内容ではなく、話している内容に注目。

  板書内容は、キーワードを連想ゲーム的にあてるヒント、位に捉える。


 参考になるかどうかは分かりませんが、板書に頼らないで、聞いて理解するスキルはあると便利です。


 今回、結論はありません。

 思い出話、という事で。


 余談。

 件の先生の三年次に取れる選択授業を受けた感想。

「ちゃんと板書の取れる授業をしてる!?」


読んで下さってありがとうございます。

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