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魔法使いと呼ばれた者

作者: 物部がたり

 うろこに覆われた皮膚は剣をも弾き、口からは毒霧や炎を吐き、陸海空いかなる環境においても、すべての生物の頂点に君臨する捕食者『ドラゴン』。

 毎日多くの生物がドラゴンに捕食され、生物にとってドラゴンは恐怖の対象であり、同時に神であった。

 だが、そんな世界にある日突然、不思議な力を有する人々が現れた。

 その者たちは最強生物であるドラゴンをいとも容易く葬り去る力を持っていた。

 人々はその者らを『魔法使い』と呼んだ。


 魔法使いの出現により、ドラゴンは恐怖の象徴としての役割を追われ、世界の均衡は瞬く間に覆された。

 神として崇められてきたドラゴンを失うことを良く思わない人々は「あなた達は、なんということをするのです! ドラゴンはこの世界の均衡を司るものなのです。なのに、こんなことを……」と抗議の声を挙げるが、多くの人々はドラゴン討伐に賛成であった。

 そして魔法使いたちは宣言する。

「ドラゴンは我々の暮らしを脅かす悪の権化である。未来の子供たちのためにドラゴンは生かしておいてはならない。一匹残らず根絶やしにすべきである!」


 人々は魔法使いたちに賛同した。

 人々にとって、ドラゴンは大切な者を奪い去る悪の化身であった。

 人々は魔法使いたちにドラゴンの巣のありかを教え、駆除が開始された。

 ドラゴンは過酷な環境下に巣を作り、他の生物が立ち入ることは困難を極める。

 だが、魔法使いたちは不思議な力により、陸海空いかなる環境下にも適用し、ドラゴンの巣を駆除することが可能だった。


 駆除が進む中、ドラゴンを神の化身と崇める教団との抗争に発展することになる。

 ドラゴンの中には人間と友好的な関係を結ぶ個体も存在し、教団はドラゴンと協力して魔法使いたちに立ち向かった。

 後の世に語り継がれる大戦争に発展し、勝負は魔法使いたちの圧勝で幕を閉じた。

 教団は解体され、ドラゴンの生き残りは一匹残らず駆除され、神は死んだ。


 人々は大歓声をあげ、魔法使いたちを賛美した。

 ドラゴンの駆逐に反対する者も存在したものの、長い歴史の中で人々がドラゴンに味わわされた恐怖と悲しみには敵わなかった。

 邪魔者となるドラゴンが消えた今、魔法使いたちが新たな神と崇められ、多くの支持を集めることになる。

 そして、新時代の神々は衝撃の宣言をした。

「我々は太陽系第三惑星地球よりの使者である! この星は我々の占領下に置くこととなった!」


 魔法使いたちの目的は、この惑星の征服であった。

 ドラゴンの駆逐はこの惑星の征服に当たって、最大の脅威となる教団の解体を目的としたものに過ぎなかった。

「大人しく我々に従えば平和と、今以上の幸福を保証する!」 

 人々は魔法使いの御言葉を拍手喝采で受け入れた。

 ある作家はこんなことを言っている。

「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない」と――。

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