最終話 新たなる戦いへ!
陛下の提言にタウナが大声で反発した。
「タウナ殿、何かね?」
「不躾で申し訳ございません。陛下のお言葉はその通りでございます。スタンリーはあくまで【アイテムボックス】持ちです。しかし此度のヴァルゴ踏破は彼の力なくては、不可能でした」
なんということか、タウナが俺を擁護した。これには陛下も戸惑うばかりだ。
周りの側近達もそわそわしだした。
「陛下は……スタンリーの力を誤解しております。私達は今回の戦いで初めて実感しました。彼は……スタンリーはまさに偉大な【アイテムボックス】持ちだと!」
それからタウナは俺の進化した能力の数々を紹介してくれた。【アイテムボックス】内に入って自由に移動できること、【アイテムボックス】内にアイテムを入れればグレードアップすること、さらに【アイテムボックス】にモンスターを吸収できること。
陛下は説明を受けてもしばらく沈黙した。
「……それはまた、大変素晴らしい能力であるな」
「陛下、どうかお願いであります。スタンリーを我々と同行させていただけないでしょうか?」
「俺からもお願いであります。スタンリーは最高の【アイテムボックス】持ちです、彼の代わりはいません」
「私もお願いします。彼は付与魔法の使い手です。魔道士の私より遥かに凄い付与魔法が使えます」
フィガロとジュディまでお願いした。みんな俺のことを必要としているのか。
「ふふ、スタンリーとやら、素晴らしい仲間を持ったな」
「陛下。その……俺は……」
「スタンリー、今の言葉を聞いて余も考えが変わった。確かにそなたの目にはこれまで見たこともない輝きがある。そなたなら、不可能を可能にしてくれるかもしれぬ」
国王陛下が俺を褒め称えてくれた。ここまで言われたら、もう断るのも無理だろうな。
「ありがたきお言葉です。このスタンリー、非戦闘職ではありますが、立派にパーティーの支えとなるよう尽くしてまいります」
「うむ。そなた達のさらなる活躍を期待する」
謁見の間にいた側近達も大拍手を送る。そしてその後王宮に使える聖歌隊が、俺達の勝利を祈る聖歌を歌ってくれた。
*
聖歌隊の素晴らしい歌を聞き終え、俺達は町の宿に戻っていた。ここにきて初めて気づいた。
昨日国王陛下から送られた素晴らしい武器防具の数々、あれはこれから帝国周辺のダンジョンを攻略するために用意したものだ。
決して俺達に褒美を与えるとか、そんなやさしいものではない。
もっと言うなら国王陛下は試していたのだ。誰を帝国へ派遣すべきか。
『地下迷宮ヴァルゴ』踏破は、ある意味試験のようなものだった。ミゾリアの町は帝国の属領に過ぎないから、アーウィン国王陛下もただ帝国側の要請に従っただけだ。
「本当によかったの? スタンリー」
宿の部屋に戻った俺にフェリーナが声をかける。
「フェリーナ、心配してくれてありがとう。でもみんながいてくれるから平気さ。それに陛下からあれだけ褒められた後じゃ、断れないよ」
「そうね。でも……あなたの本意じゃ」
やっぱりフェリーナも俺の本心に気づいていた。
「俺は……まだ冒険者を続けようと思う。みんなが俺を必要としてくれるなら、俺はみんなの助けになりたい」
「……わかったわ。私も全力であなたをサポートするから」
「フェリーナ……」
フェリーナは改めて俺について行くと誓ってくれた。嬉しい限りだ。
「邪魔しちゃったかな、お二人さん?」
タウナが突然部屋に入って声を掛けた。ノックくらいしてくれよ。
「タウナ、急にどうした?」
「ごほん、えぇとね……アーミスダル帝国までの船、東にある港に行けばあるから」
「そうか。わざわざ報告ありがとう」
「さっきは……ごめんなさい」
タウナが突然謝った。
「どうしたんだよ、謝ったりして?」
「国王陛下の前であなたのことを勝手に褒めちぎっちゃって。迷惑だった?」
「そんな……とんでもない。俺は嬉しかったよ」
「そう……よかった」
タウナもホッとしたようだ。やっぱり本人も気にしていたんだな。
「それじゃ改めて、よろしくね。あなたの【アイテムボックス】で、また奇跡を起こしましょう!」
「タウナ、船の出航まで残り二時間だ」
後ろからフィガロの声が聞こえた。ジュディもすでに出発の準備を済ませていた。
「それじゃ出発よ、準備はいい?」
「いつでも大丈夫さ!」
その後、タウナ、フィガロ、ジュディ、フェリーナとともに東の港まで向かった。
港には王宮の関係者と騎士団が大勢いた。みんな俺達を見送ってくれる。
ラーサーもいた。ともに戦った仲間だけに分かれるのは寂しいが、悔いはないとのことだ。ラーサー曰く、王宮で素敵な女性と駆け落ちしたらしい。
そばには確かに綺麗な女性がいた。よく見たら、美しい踊りを披露していた踊り子だった。抜け目ないな。
「じゃあな、みんな! 英雄になって帰ってくれよ!」
「ラーサーもいい父親になれよ!」
「おいおい、いくらなんでも気が早いって!」
ラーサーと軽く談笑し、俺達は船に乗った。ラーサー、そして王宮関係者、騎士団のみんなも最後まで手を振って見送ってくれた。
「いよいよね……」
「あぁ、遂に俺達も旅立ちだな」
「また……戻って来れるわよね?」
「あぁ、戻ってくるさ。絶対」
「ラーサーにいいお土産を持って帰ってあげましょうね!」
俺達の乗った船は汽笛を上げる。遥か東にある帝国へ向けて出港した。
俺達の新しい旅の幕開けだ。【アイテムボックス】、これからお前はどんな奇跡を見せてくれるんだろうか。
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