第30話 最深部の奥に待ち構えるのは!?
二時間後、俺達はついに地下五階の終着点までたどり着いた。それまでにも宝箱がいくつもあり、全部回収はしてきた。
そして嬉しいことに、虹色桃の種も追加で三つほど手に入った。この果実はその種自体にも相当価値がある。一つだけは【アイテムボックス】内に入れず、ポケットの中にしまっておこう。
地下五階の終着点、これまで以上にないほどの激戦だった。ミノタウロスやミスリルゴーレムはもちろん、キングスコーピオン、カイザーアント、ワイルドベア、ガーゴイル、マグマビーストなどAランクのモンスターの大群だった。
だけど俺の【アイテムボックス】内に吸収できる。最初は一度に三体だけしか収納できなかったが、いつの間にか一度に五体も吸収できるようになった。
【アイテムボックス】の収容力も上がっているようだ。そしてみんなのステータスも、迷宮を攻略するごとに上がっていったから苦労はしなかった。
迷宮に潜って半日くらいしか経っていないのに、全員の成長ぶりに驚くしかない。
「はは、これで地下五階も制覇だな」
「本当、なんか信じられないわ。最初の内はまさかここまで来れるだなんて思わなかった」
「そうね。でも、最深部はまだみたい……」
フェリーナの言う通りだ。地下五階はまだ最深部ではない、その証拠に転移装置がある。
「あと……何階まであるんだ?」
「何階でも潜ってやるわ。今ならどんな強敵が出ても、負ける気がしないわよ」
タウナは強気な姿勢を崩さない。俺も心なしか、今なら迷宮攻略は本当にできそうなそんな感じがする。
「タウナ、盾はいいの?」
「盾?」
「ほら、鋼鉄の盾よ。【アイテムボックス】内に入れてたじゃない」
「あぁ、そういえば!?」
思い出した。確かにタウナの持っていた鋼鉄の盾を入れていたんだっけ。
そろそろ鋼鉄の盾がグレードアップする時間かな。アイテム一覧を見てみた。
「……これは!?」
「スタンリー、どう? 盾は進化してる?」
「バッチリさ。でも……」
俺は【アイテムボックス】から盾を取り出した。見た目は明らかに鋼鉄の盾じゃない。タウナも一瞬驚愕した。
「それって……ミスリルの盾!?」
「グレードアップはしたか。でも、クリスタルじゃないのか」
「ごめん、タウナ。クリスタルの盾に進化するには、もう少し時間がかかるかな」
「……いいわ、これで」
タウナは断らず、その盾をそのまま左腕に装備した。
「いいのか、ミスリル製のままで?」
「大丈夫よ、これ以上時間をかけるわけにはいかないし。それにわがまま言ったのは私の方なんだから」
「そうか。わかった、それじゃ次の階層へ行こう」
転移装置に触れ、次の階に辿り着いた。例のごとく、ジュディが〈フロア・スキャニング〉でこの階層の地図を作成した。すると意外なほど早く完成した。
「あれ、もうできたの?」
「うん、この階は短いみたい。どれどれ……」
地図を見て間もなくジュディは目を丸くした。
「まさか? いやそんな……」
「どうしたの、何か地図に異変でもあった?」
「……ここを真っすぐ行けば大きな広間に出るはずよ」
「そうなの。で、その次は?」
「そこで終わりよ」
ジュディの言葉を聞いて俺達は困惑した。
「……終わりって、どういうことだ?」
「行き止まりって、こと?」
「これを見て。本当にその通りになってるから」
ジュディが魔道板で作成した地図を見せた。確かにジュディの言う通り、この先を真っすぐ行けば大きな円形の広間に出る。
「大きな広間から次に続く道が見当たらないわ」
「分かれ道もない。多分、この階が……」
「最深部!?」
タウナが大声を発した。全員の顔が若干明るくなった。
「やったぜ! 遂に最深部までたどり着いたんだな!」
「意外と短かったな、一時はどうなるかと思ったが……」
「喜ぶのは早いわよ、みんな」
フェリーナが全員に注意した。
「まだ終わりじゃない。最深部ということは、この先に待ち構えているのは……」
「ボスモンスターね」
「そうだったな。忘れてたぜ、しかも多分相当強い奴だろうな」
「今までAランクのモンスターしか出なかった。恐らくボスはSランクのはずよ」
全員が固唾を飲んだ。フェリーナの言う通り、この先に待ち構えているボスモンスターは相当な強敵だろう。
まずSランクはくだらない。でもそいつを倒さない限り踏破の証は手に入らない。果たして今の俺達に勝てるだろうか。
「ビビっていてもしょうがないわ。今更引き下がるわけにはいかない!」
タウナは胸を張って、そのまま歩き出した。俺達もやはり彼女に従うことにした。
満を持して俺達は広間の前の巨大な扉の前に立った。禍々しい雰囲気のする金属製の扉だ、そしてご丁寧に巨大なドラゴンの絵が彫られている。
「このドラゴン……まさか?」
「どうやら、この奥にいる奴のようだぜ」
ラーサーが呟いた。彼も【気配探知】が使える、嫌でも凶悪な気配を感じているんだろう。
「ティアマットね」
今度はフェリーナが呟いた。しかも耳を疑う名前だ。
「ティアマットだって!?」
「まさか……このドラゴンが?」
「マジかよ、どうりで見たことあると思ったら」
「それが……この奥に?」
「Sランク冒険者がパーティーを組んでも勝てるかどうかわからないドラゴン。はは、新ダンジョン最深部のボスとしては最適だな」
ティアマット、巨大な竜王として知られるSランクモンスター、いやSランク以上の強さを誇ると言われている。
今まで誰も討伐した記録がない、果たして俺達で勝てるのか。俺も一瞬絶望してしまった。
(魔法爆弾を使え!)
このタイミングで例の声だ。魔法爆弾を使えとはどういうことだ。確かに【アイテムボックス】内でグレードアップしているだろうが、魔法爆弾ごときで倒せる相手とは思えない。
(魔法爆弾を全て使え! そして……)
なんとこの後で聞いたのは予想外の言葉だ。俺にこの先に出てくるティアマット攻略の内容を事細かに伝えてくれた。
「これはもしかしたら……いけるかも?」
「どうしたのスタンリー?」
「なぁ、ちょっと作戦があるから聞いてほしいんだけど」
「作戦ですって!?」
「ボスモンスターの攻略さ。俺の【アイテムボックス】内には特大級の魔法爆弾がいくつかあるんだけど……」




