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第3話 頼みの綱は占い屋

 俺はどうすべきが途方に暮れた。タウナのパーティーにスカウトされたのはまたとないチャンスだ。


 だけど、追放された最大の原因である【アイテムボックス】の欠陥、〈次元穴ディメンションホール〉をどうにかしないといけない。


「というか、本当に穴なんて開いているのか?」


 俺はふと疑問に思った。確かに昨日、ガッシュの【鑑定】で俺の【アイテムボックス】に穴が開いているということは発覚した。


 でもよく考えたら、その穴を俺はこの目で見ていない。もしかしたら、本当にデタラメかも。


「こうなったら、実際に見てやる!」


 俺はギルドのトイレに向かった。誰もいない個室の中で、俺はある言葉を唱えた。


「〈ゴー・イン・アイテムボックス〉!」


 直後、俺の体は軽くなった。そして目の前には見渡す限り真っ白な空間が広がっていた。そう、今いるこの空間こそ、俺の【アイテムボックス】の中だ。


 見慣れた光景だ。よく元メンバーもこの中に入れて、強敵との戦いを避けるために使っていたっけな。と、思い出にふけるのはやめだ。


「穴は……一体どこに?」


 俺は【アイテムボックス】内を歩き回った。


 目ぼしいアイテムは全部『白銀の彗星』のメンバーに取られ、残っていたのは、俺が子供の頃にかき集めたガラクタ類、あと低級の装備品とか魔法道具とかいろいろある。だけど穴らしきものは見当たらない。


「やっぱり嘘なのか……」


 そう思っていた矢先だ。視界のはるか先に、黒い点のようなものが見えた。


 俺が歩くと、その黒い点がどんどん大きくなってきた。そして次第に俺の身長より大きな丸い円になった。


「これは……穴?」


 漆黒の丸い穴、俺は思わず凍り付いた。さらに近づくと、俺を軽く飲み込まんとする大きさまで巨大化した。


 禍々しい雰囲気が嫌でも漂う。このままここにいるのはまずいと、俺は直感した。


「〈ゴー・アウト・オブ・アイテムボックス〉!」


 俺は【アイテムボックス】から抜け出した。未だに信じられない、まさか本当に〈次元穴ディメンションホール〉があったなんて。しかもなんて巨大さだ。


 あれだけ大きかったら、収納したアイテムも消失してしまうのは当たり前だ。俺は今まで何も知らずに使っていた。


 こんなことが発覚したら、次のパーティーでも同じことの繰り返しだ。


 よし、決めた。ギルドに来て金銭を稼ぐ依頼を見つけようかと思ったが、予定を変えよう。


「まずは俺の【アイテムボックス】を修復しないと、となれば行くべきところは……」


 俺は意を決した。ギルドを出て、ミゾリア町の北西部の噴水広場に向かった。


 最近耳にした噂だが、その噴水広場に怪しげな占い師が現れたとのことだ。かなり怪しげな風貌をしていて、あまり見向きもされていないらしい。しかも法外なお金を要求するとのことだ。


 俺の手持ちは銀貨十七枚、さっきギルドで金貨一枚を換金してもらった。もしかしたら金貨一枚消費するかもしれないが、今の俺にほかに頼るあてはない。


 一か八か、その占い師に賭けてみよう。十分後、俺は噴水広場に到着した。


「占い屋は……あれか?」


 噴水広場の一角に、かなり小さいがみすぼらしい小屋ができていた。入口には黒色の暖簾が掛けられている。その上には『不滅の夢鎖』と表記されたプレートが掛けられていた。


 きっとあそこだ。俺は占い屋の前まで来た。まがまがしい雰囲気が漂う。


 悪魔でも出てきそうな雰囲気だ。だけど今の俺は悪魔にもすがりたい気持ちだ。なんでもいい、俺の【アイテムボックス】を修復してくれたら。


 俺は意を決して中に入った。


「ごめんください」


 挨拶をするも、返事がない。というか、誰もいない。中はかなり薄暗く、かろうじて数本の蠟燭の炎の明かりだけで照らされている。


 部屋の中央に円卓があり、その真ん中にオーブが置いてある。間違いない、ここが占い屋だ。となれば、占い師もいるはずなんだが。


「今は留守かな。となれば、時間を改めるか……」

「ここにいるよ。ようこそ『不滅の夢鎖』へ」


 突然老いた女性の声が聞こえ、俺は振り向いた。目の前に黒いローブに身を包んだ老婆が立っていた。


「うわぁ!? あ、あんたは?」


 俺は思わず叫んでしまった。


「ひひひ、まるで悪魔でも見たかのような反応だね。まぁこの風貌なら仕方ないが……」


 老婆は笑いながら、円卓の向かい側にある椅子へ座りこんだ。


「あなたが、占い師ですか?」

「もし私が占い師じゃなければ、ここにはいないよ」

「そうですか。あ、俺の名前は……」

「スタンリー・フォーゲルだね、Aランクパーティー『白銀の彗星』の元一員」


 老婆は俺の名前と所属していたパーティーの名前まで言い当てた。


「す、すごい! その通りです! やっぱり本当に占い師なんですね!」

「ひひひ、何をそんなに驚くのかい? お前さんはこの界隈では有名だよ、Aランクパーティーなんてほかにはいないからね」

「え? あぁ、そうか……」


 うっかりしてた。タウナが言い当てたんだから、占い師も知っているか。そうだよな。


「ひひひ、そうがっかりしなさんな。私の占いは百発百中さ、それを今から証明してやろう」

「ほ、本当にあなたを……信用していいんですか?」

「だてにこの世界で生き延びていないさ。【天啓】スキル持ちをなめちゃ困るよ」

「て、【天啓】ですって!?」

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