第29話 虹色桃の種をゲット!
俺もたった一口しか食べていないが、確かに満腹だ。量まで増えているなんて凄いな。
「これなら非常食もなくなることがない。怖いものなしだぜ!」
「スタンリー、これをあげるわ」
「これは……君の【アイテムボックス】内にあるのか」
フェリーナが自前の非常食を全部取り出して、俺に渡した。
「あなたに全部預けた方がいいと思って」
「そうさせてもらうよ」
俺はフェリーナからもらった非常食を全部保管することにした。これで食糧問題は解決だな。
「よぉーし、腹ごしらえも完璧ね。あとは最深部まで行くだけよ!」
タウナ達の顔に元気が戻った。そして小休憩を挟んで、再度迷宮効力を開始した。
地下一階の攻略もそれほど時間はかからなかった。広さ的には一階よりあったのだが、結局俺の【アイテムボックス】でほぼ移動した。
途中の分かれ道で宝の山を見つけた。〈アブソーブ・オールトレジャーボックス〉で宝箱を全部吸収し、例によってラーサーの【鑑定】でまず調べる。
しかし一個だけ奇妙な宝箱がある。ほかに比べかなり小さい、ラーサーも困惑した。
「どうした、もしかしてデビルボックスか?」
「いや、違うな。ただの種か……」
「種だって?」
「とにかく開けてみましょう!」
タウナに促され、おそるおそる宝箱を開ける。中に入っていたのは奇妙な形をした植物の種だった。
「本当に種? なんなの一体?」
「あぁ! もしかしてこれは……」
ラーサーが種を掴んでじっくり見まわす。
「間違いねぇ、虹色桃の種だ」
「に、虹色桃ですって!?」
「世界最高珍味の果実じゃないか、すげぇぞ! 売ったら金貨何百枚もいくんじゃないか!?」
思い出した。そういえばマギーレウスが言っていた、虹色桃の種を探してほしいって。
まさかこんなに早く迷宮で見つかるとは思ってもいなかった。だけどこればかりは売るわけにはいかない。
「ねぇ、スタンリー……」
フェリーナがそっと話しかける。俺にも何が言いたいか想像がついた。
「わかってる。なぁ、みんな。この種をしばらくこの【アイテムボックス】内に保管しておきたいんだけど……」
全員が俺の顔を見た。さっきまで金の事ばかり考えていたフィガロやラーサーも、笑いを消した。
「ごめん、さすがに味わったほうがいいよな」
「育つまでどのくらい時間がかかる?」
「そればかりは俺にもわからない。そもそも本当に育つかどうか……」
(水と光が不足。成長不可能)
「え、そんな……」
衝撃的な声が聞こえた。まさか【アイテムボックス】がきっぱり不可能と言い切るなんて。
「どうしたの?」
「ごめん、多分果実は無理かな」
「え、それどういうこと?」
俺は簡単に成長ができない理由を説明した。
「……なるほど。確かに植物が成長するには、水と光って言われてるけど」
「でも、そればかりはどうにもならない。なぜなら俺の【アイテムボックス】内に水も光もない」
「それじゃその種の育成は地上に出てからだな、今はとにかく迷宮の攻略が先決だ。楽しみは後にとっておこうぜ」
「フィガロの言う通りね。スタンリー、その種は大事にとっておいて」
食べてみたい気持ちはあったが、ないものはしょうがない。気持ちを切り替えていこう。
(魔法の泉で成長可能!)
「魔法の泉だって? そうなのか、でもそんな泉がこの迷宮にあるわけがないよな」
そんな好都合にはいかないだろう。そう思っていた。
だけど地下一階の終着点でボスモンスターを倒し、再び転移装置で下へ降りたその時だ。
「なんの音?」
暗かったが、水が流れる音が聞こえた。ジュディが光魔法で明るくした。
確かに壁の穴から水が流れ出していた。こんな迷宮でも水が湧きだしているのが信じられない。
「水……もしかして?」
まさかとは思ったが、念のためラーサーに【鑑定】を頼んでみた。
「こ、この水は!?」
「どうしたの、そんなに凄い水?」
「凄いも何も……魔法の泉だぜ!」
「魔法の泉!? 嘘でしょ、なんでこんな場所に?」
なんという偶然か。心の中で魔法の泉があったらいいのに、そう願ったらまさに出てきた感じだ。
この迷宮、もしかして俺の能力がわかっているのか。いや、考えすぎかそれは。
「とにかく、水筒に入れてみよう!」
俺は水筒にありったけの魔法の泉を入れた。そしてさっき保管した虹色桃の種に、汲んだ魔法の泉を注いだ。
「ちょっと、何してるの?」
「これで種が育つはずだ」
「なんですって? そんなことができるわけが……」
「いや、多分大丈夫よ。魔法の泉には植物の育成効果もあるって聞いたことあるわ」
「そうなのか、ジュディ?」
「昔読んだ『魔法と植物の関係書』にそう書かれていたわ。だから大丈夫よ」
なるほど。【アイテムボックス】は適当に促したわけじゃなかったのか、それなら安心だ。
「よし、これでいいかな。あとは実が育つまで待つだけさ」
「待ちきれないわ、正直今すぐにでも食べたいくらいよ」
「タウナ、落ち着けよ。さっきも言ったが、今は迷宮攻略が先決だぜ」
「わ、わかってるわよ。みんなも絶対抜け駆けは駄目よ!」
「はいはい、わかったよ」
言ってるタウナ本人が一番抜け駆けしそうだ。
今はフィガロの言う通り、迷宮の攻略が先決だ。俺達は先に進むことにした。




