第28話 アイテムグレードアップで非常食もご馳走に!?
タウナが転移装置がある場所へ向かった。よく見ると、球体から淡い光が発せられている。
「見て! 装置が起動している」
「これで降りれるな、よし行こうか!」
俺達は全員転移装置を囲んで立った。タウナがそっと装置に触れると、急に体が軽くなり一瞬で別の場所にワープした。
「うわ! 本当に……ワープしたのかよ」
「ここが地下一階か。さっきより暗いな」
「ちょっと待って、〈ライトスフィア〉!」
ジュディの魔法で光が照らされる。ご丁寧に目の前の壁に、『地下迷宮ヴァルゴ地下一階へようこそ』と書かれていた。
「地下一階で間違いないな。それにしても、一階よりも強力なモンスターの気配をバンバン感じるぜ」
「ジュディ、地図作成も忘れずにね」
ジュディが〈フロア・スキャニング〉を唱えようとした。でもその瞬間、しゃがみこんだ。
「大丈夫か、ジュディ?」
「ごめんなさい、魔力を使い果たしちゃったようで」
「なんですって? そういえば、さっきも攻撃魔法を使ったばかりね」
「ここは頃合いね。一旦ここで休憩した方がいいわ」
フェリーナが提案した。確かに全員の顔にうっすらと疲労の顔が見える。
地下一階も広いはずだ。強力なモンスターも潜んでいるはずだし、休憩するタイミングとしてはベストだ。
「よし。じゃあ俺の【アイテムボックス】に入ろう。〈ゴー・イン・アイテムボックス〉!」
全員再び【アイテムボックス】内に入った。この中なら安全だ。
「はは、本当にスタンリーが味方でよかった」
「ジュディ、マナポーションを飲んでくれ。これで全回復できるはずだ」
「ありがとう、いただくわ」
ジュディが保管していたマナポーションを飲み干した。彼女の顔から疲労の気配が消えた。
「す、すごい! 魔力が……漲ってくる! 生き返るわ」
「どうだい、俺の特製マナポーションさ」
「特製マナポーション? どういうこと、普通のマナポーションと違うわけ?」
「そういえば説明してなかったね。俺の【アイテムボックス】は……」
ここで全員に俺の【アイテムボックス】の能力、アイテムグレードアップについて説明した。全員が驚愕した。
「信じられない。アイテムが進化するですって? じゃあ装備品も?」
「そう、武器や防具、アクセサリもね。実際川の水を入れたらグレードアップして、浄化されたりもしたんだ」
「一体どうなってんだよ、お前の【アイテムボックス】は!?」
「正直、自分でもよくわからない部分が多いんだ。だからこれからもっと検証しないといけない」
「それじゃ、この盾なんかどう?」
タウナが左手に装着していた盾を外して、俺に見せた。
「それは……鋼鉄の盾かな?」
「あなたの理論だと、この鋼鉄の盾も進化するはずよね?」
「多分、そうかな。でも、過度に期待しないでくれ。それにそれを外しちゃうと……」
「いいのよ、剣士にとって盾はおまけみたいなものよ。剣さえあれば問題ないわ」
そう言いながら、タウナは鋼鉄の盾を置いた。確かに鋼鉄の盾もグレードアップするかもしれない。でも確証はない。
「……何も変わらないぞ?」
「いや、しばらく時間がかかるんだ。多分、数時間はかかると思う」
「どんだけ時間かかってもいいわ。諦めてないんだから」
「もしかしてクリスタルの盾のこと?」
「そうよ。絶対に素晴らしい盾に仕立てて見せるわ」
「おい、そこまでの期待はしないでくれよ!」
タウナがとんでもないプレッシャーを与える。さすがに鋼鉄の盾がクリスタルの盾に進化するのは無理があるぞ。
「いいではないか、スタンリー。お前の【アイテムボックス】は底が知れない、不可能が可能になっても不思議じゃない」
「フェリーナ、何もそこまで言わなくても」
フェリーナまで期待しているのか、これはまいったな。
「それよりさ。いい加減何か食べないと」
「あぁ、そうだったわね」
思わず腹の虫が鳴った。朝から何も食べてない、迷宮に入ってまだ地下一階に来たばかりだが、さすがに腹が減ってきた。
「確か、非常食はあったわよね」
「あぁ、今用意するよ」
俺は全員に非常食を用意した。でもここで重大なことに気付いた。
「……数が足りない」
「なんですって? 一体何個あるの?」
「ひぃ、ふぅ、みぃ……全部で五つ」
念のため【アイテムボックス】の状態を調べた。〈次元穴〉は開いていない、最初から一個少なかったのか。
俺としたことがなんてミスだ。所持品の個数の管理ができていないなんて。
「スタンリー、安心して。私のはいいわ」
なんとフェリーナが俺に譲ってくれた。
「駄目だ、フェリーナ。君は貴重な弓使いじゃないか、こういう場合は一番非力な俺が」
「私の分はちゃんとあるわ」
そう言うと、フェリーナがどこからともなく非常食を取り出した。
「あ、そういえば君も……」
「私の【アイテムボックス】内に、あと五つ非常食がある。困ったらそれを分けるわ」
「ありがとう。でもそれでも少ないな、まだ最深部までは時間がかかるから、これだと量が……」
「う、うまい! なんだこれ!?」
突然ラーサーの叫び声が聞こえた。フィガロとタウナ、そしてジュディまでも、俺の用意した非常食を食べて感動している。
これも恐らくグレードアップの影響だろう。俺も試しに食べてみた。確かにうまい。宿で用意された食事と遜色ないほどだ。
「……ごくっ!」
フェリーナが見つめている。しまった、彼女は自前のだ。俺達だけうまい思いをするわけにはいかない。
「フェリーナ、残りは君が食べてくれ」
「い、いいのか?」
「気にするな。さすがにこの味は君にも味わってもらいたくて」
「……すまない」
さすがのフェリーナも我慢できなかったのか受け取った。そして俺の非常食を屠ると、やはり感動の声を上げる。
「すごい、非常食がこんなにうまくなるなんて!」
「やっぱり凄いぜ、スタンリーの【アイテムボックス】はよ」
「味だけじゃないわ。一口しか食べてないのに、もうおなか一杯よ」
「そうなのか……そいつは凄いな!」




