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第27話 モンスターを吸収しちゃった!?

 全員が俺のおかげだと言ってくれている。今までこんなに賛美されることはなかった、俺はどう反応したらいいか迷った。


「……わかった。それじゃいただくよ、みんな本当にありがとう」


 俺はタウナから〈女神のペンダント〉をもらい、首にかけた。これで俺はどんな状態異常を受けても大丈夫だ。


 本来ならほかのみんなにもあげたいが、こればかりはどうしようもない。


「ここのアイテムは全部回収したみたいね。それじゃ、先に進みましょう」


 タウナの声に従い、俺は再び前へ歩き出した。


「この先で分かれ道が合流して、その先が下に降りる階段ね」

「みんな、気を引き締めてね。どんなモンスターが出ても驚かないように」

「おい、あれを見ろ!」


 しばらく歩くとフィガロが前を指差した。なんと〈ペリスコープ〉の映像には、冒険者の死体がいくつも映っていた。


「……ひどい」


 ジュディは思わず目を背けた。俺達もしばらく言葉を失った。


「昨日挑戦したパーティーのようね」

「恐らくこの先にかなりの強敵が出たんだな」

「多分、下へ降りる階段の前に立ちはだかるボスモンスターだ」

「つまり、そいつを倒さないと下へは進めない?」


 全員が俺の顔を見た。


「俺の【アイテムボックス】でも下へ降りることは無理だ。残念だけど、倒すしかないよ」

「そう……それならみんな。覚悟はいい?」


 タウナが俺達の顔を見た。全員無言で頷いた。


「じゃあ行こう。この先の広場の先に階段があるはずだ」


 恐怖が渦巻いた。さっきのパーティーの死体、俺達だって他人事じゃない。タウナもそれは理解しているはずだ。


 でもそんなこと考えたって仕方ないかもな。ビクビクしていたんじゃ、いつまでも前には進めない。


 俺はそのまま歩き続けた。そして大きな半球状に開けた場所に出た。


「ここが一階の終着点か」

「ちょっと待って! どこにも下へ降りる階段なんて見当たらないけど?」


 タウナの言う通り、確かに階段が見当たらない。


「多分、階段じゃなくてアレよ」


 ジュディが広間の端にある、不思議な突起物に指を差した。その突起物は地面から垂直に飛び出していて、先端に丸い球体がくっついている。


「あれは、もしや?」

「転移装置よ。この迷宮は階段じゃなくて転移装置で各階を移動するようになってるようね」

「随分手の込んだ迷宮だな」

「スタンリー、あの転移装置まで移動してくれないか? もしかしたら、ボスをスルー出来るかも」

「あぁ、やってみよう」


 ラーサーはもしかしたら素通りできることを期待している。俺もそうであってほしいと願った。

 

 だけどそうはならなかった。転移装置まで移動できて、転移装置に触れたが何の反応もない。


「……駄目だ。やっぱりボスを倒さないことには」

「来るぞ! みんな!」


 フィガロが叫んだ。広場の至る所に、モンスターが出現した。


 ゴブリンキング、リザードロード、ポイズンベア、ミスリルゴーレム、ミノタウロス、全部で五体。


「なんて数、しかも全員Aランクじゃない!?」

「さっきの奴らが全滅したのも無理はないな、どうする?」

「全部で五体、ならば一人につき一体相手すればいいわ!」

「おい無茶言うな! タウナやフィガロならともかく、シーフの俺はどうすんだ?」


 ラーサーが叫んだ。こっちのメンバーは六人、対して敵の数は五体。俺はともかく、ラーサーも確かに火力不足だ。


 そもそも敵は全てAランクだ。一体だけの相手でもかなり厳しい、せめて数が減ればいいんだが。


(〈アブソーブ・エネミーズ〉と叫べ!)


 声が聞こえた。さっきは似たような合言葉で、金貨を【アイテムボックス】に収納できた。


 まさかと俺は思った。そんなことができるわけが。でも、ダメもとでやるしかないか。


「〈アブソーブ・エネミーズ〉!」


 俺は叫んだ。すると目の前にいた敵の内、ゴブリンキング、リザードロード、ミノタウロスの三体が一瞬で消えた。


「き、消えた?」

「スタンリー、今のは!?」

「多分、さっきと同じだ。吸収しちゃったんだ」


 全員がポカンとした。残ったポイズンベアとミスリルゴーレムも狼狽しているようだ。


「マジで……【アイテムボックス】内に?」

「モンスターまでも、信じられない」

「なんでもいいわ! 数が減ったなら好都合よ、みんな行くわよ! ジュディは付与魔法で援護して」

「わかってる。スタンリーも念のため付与魔法を」

「煌めけ、〈ミリオンドリームズ〉!」


 俺とジュディで付与魔法を重ね掛けした。恐らくこれで全員の能力は飛躍的に向上した。


 そして予想以上の効果だった。ポイズンベア、ミスリルゴーレムはタウナとフィガロ、フェリーナの攻撃で呆気なくやられた。


「はは、凄いな。こりゃ……」

「やっぱりスタンリーさんの付与魔法凄いです! 私のより遥かに上昇値が上のはずです」

「そうなのか。実感が湧かないな」

「喜ぶのもまだ早いわ。残りの三体を」


 フェリーナの言葉を聞いて俺もハッとした。


「そうだった、ごめん。でも、モンスターを外に出すにはどうしたら?」


(〈リリース・エネミーズ〉と叫べ!)


 なるほど、今度は「リリース」か。よし、唱えてみるか。


「じゃあ、外に出すぞ。準備はいいか?」


 タウナ達はいつでも攻撃できる構えだ。


「いくぞ。〈リリース・エネミーズ〉!」


 俺の合言葉とともに、残りの三体が一瞬で外に出てきた。やっぱり三体とも困惑している。


 でも理解が追いつかないまま、モンスター達は次々に葬られた。タウナとフィガロ、フェリーナの連携は見事なものだ。いや、これも付与魔法のおかげかもな。


「はは、五体とも倒したぞ!」

「待って、まだよ!」


 フェリーナが叫んだ。よく見たら、まだミスリルゴーレムが動いていた。唯一五体の中で耐久力が高いから、かろうじて生き残っている。


「〈ライトニングランス〉!」


 最後はジュディの雷魔法がさく裂した。ミスリルゴーレムは雷が弱点だ、これで終わりだろう。


「ふぅ、今度こそ片付いたわね」

「全くスタンリーがいなかったら、一時はどうなるかと思ったぜ」

「本当だ。やっぱり〈女神のピアス〉、あなたに与えて正解だったわ」

「いやぁ、そんなに褒めないでくれ。俺は一切攻撃してないぞ」

「謙遜しないで。あなたのおかげで、数を減らすことができた」

「そうさ。正直五体全て相手となると、厳しかったな」

「それに付与魔法もね。あなたのと重ね掛けで、多分今まで以上に強くなった」

「そ、そうか……」


 全員からまた褒められた。やっぱり俺はこのパーティーに必要とされている、そんな気がしてきた。


「おい、転移装置はいいのか?」

「あぁ、そうだったわ。これで下に降りれるはずよ」

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