第20話 新メンバー加入!?
翌朝目を覚ました俺は、タウナの部屋に入った。タウナは『白竜の翼』のリーダー、彼女の部屋で『地下迷宮ヴァルゴ』の攻略の作戦会議を練っていた。
「どうしたの、スタンリー? ちゃんと眠れた?」
「大丈夫だ。それより話を続けてくれ」
「わかったわ。えぇと、まず『地下迷宮ヴァルゴ』の場所なんだけど……」
どうやら俺の顔色がやはり優れていないようだ。無理もない、昨日はとんでもない夢を見てしまった。皆には言えないが。
いや、あれは夢だっというよりやっぱり実体験に近いな。今度マギーレウスに会ったら、二度と召喚しないでくれと厳しく言っておこう。
「装備品に関しては、ミスリル製の武器が揃ったから問題なしね」
「前衛は俺とタウナだ。ラーサーはいつも通り敵の攪乱と気配探知。ジュディは基本後方から支援、余裕があったら攻撃に回れ」
「わかったわ」
「あとはアイテム管理ね。それは新メンバーのスタンリーにお任せするわ」
「任せてくれ」
俺にできることと言ったら、アイテム類の管理だ。【アイテムボックス】持ち最大の仕事、と言っても過言ではない。
アイテムの無限収納で、道中で手に入るお宝やモンスターのドロップアイテムなどは、全て【アイテムボックス】内に入れられる。
でもそれよりも、回復アイテムの大量備蓄の方が重要だ。強敵の戦いや長期戦には欠かせない。
体力を回復するポーションはもちろん、魔力を回復するマナポーション、毒や麻痺を治療する状態異常治療薬、さらに一時的に能力を底上げする能力強化薬、キャンプをする際に必要になる非常食、それと俺が昨日も使った魔法爆弾、いざという時に武器にも使える。
アイテムは無限収納可能だ。だけど所持金の関係でそこまではいかない、多くても一種類につきせいぜい数十個だ。
「とりあえずポーションは三十個。マナポーションは二十個、毒治療薬と麻痺治療薬はそれぞれ十個ずつ、あとは強化薬と魔法爆弾と結界石と……」
「なぁ、みんなちょっと話があるんだが」
タウナ達がアイテム類を数えている最中に俺は質問した。
「実は……新メンバーを紹介しようと思ってね」
「新メンバーですって!?」
「フェリーナ、入ってくれ」
俺が呼びかけると、フェリーナもタウナの部屋に入ってきた。
「紹介するよ。フェリーナ・ベルッチだ、弓使いをしている」
「……よろしく」
「こちらこそよろしく。あなた、弓使いなの?」
「一応ね」
「みんなが大丈夫なら、フェリーナも加入させたいと思うんだ。彼女も今ソロの身でね、どうだろう?」
タウナ達が顔を見合わせた。そしてしばらくして全員笑顔で頷いた。
「もちろんよ。私達のパーティーには遠距離攻撃が足りなかったから、これほど適任な人材はいないわ。スタンリー、あなた最高よ」
「いや、それほどでも……」
「はは、これなら本当に地下迷宮踏破も夢じゃないかもしれないな」
全員の顔が生き生きしだした。
「よぉし、新メンバーも加わってアイテムの準備も万全ね。それじゃ地下迷宮へ出発!」
タウナの号令の後、全員も後に続いて部屋を出た。
「本当にいいのか? 君が【アイテムボックス】持ちであることを伏せて」
「何言ってるの? 私は元々本職が弓、【アイテムボックス】はおまけみたいなものよ」
「そ、そうなのか……」
「それに私が【アイテムボックス】持ちだとわかったら、あなたの立場がなくなるでしょ」
確かにその通りだ。同じパーティーに【アイテムボックス】持ちは二人もいらない。
彼女はあくまで弓使いということで通すことにした。俺に配慮してくれて本当に嬉しい。
「それに……あなたの方が【アイテムボックス】持ちとして優れている。私の〈次元穴〉も直してくれたみたいだし」
「はは、俺も昨日は同じ目に遭ったからね。また何かあったらいつでも頼りにしてくれよ」
「……一瞬でもあなたのこと、【アイテムボックス】以外に戦闘スキルがない無能な冒険者だと思ってしまった。許してほしい」
フェリーナから意外な言葉が出た。
「あぁ、そのことか。気にしないでくれよ。戦闘スキルがないのは事実さ」
「あなたの【アイテムボックス】はそこが知れないわ。もしかしたらあなたは……」
「フェリーナ、スタンリー! なにやってるんだ、おいてくぞ!」
フェリーナが何かを言いかけていたが、フィガロが呼びかけた。
「ごめん、すぐに行くよ!」
フェリーナも走り出した。彼女が何を言いたかったか気になるけど、今は急いだほうがいいな。
『地下迷宮ヴァルゴ』の攻略は俺達以外の冒険者たちも挑戦している。先を越されるわけにはいかない。
タウナ達はすでに馬を手配していた。ヴァルゴまで距離があるから、馬の移動が頼りとなる。俺達は全員馬に乗り、移動を始めた。
馬で移動している最中、俺は所持品の確認をした。
「〈ショー・オールアイテムズ〉! えぇと、ちゃんと全部ある……ん? この文字は?」
今になって気づいた。なんとそれぞれのアイテム名の最後に「S」とか「A」という表記がある。
「S、A……これってランクのことじゃ? そうか!」
やっぱり間違いない。モンスターや冒険者の等級と同じだ。俺のアイテムも、この中に入れたことでランクが上がっている。つまりグレードアップしている。
そしてさらに気づいたのは、古く入れたアイテムはSになっていた。冒険者ランクと同じで、Sが最高ランクだな。さっき入れたばかりのアイテムはAか。
ということは、さらに時間が経過すれば、AからSにグレードアップするんだ。これは凄いぞ!
「……どうしたのスタンリー? 大丈夫?」
「あぁ、なんでもない。気にするなよ」
「おい、見えてきたぞ!」