表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/35

第19話 マギーレウスからのお願い

「あれ、ここは……どこだ?」


 気が付けば、俺は見知らぬ場所にいた。見渡す限り海が広がっている。


 そして俺は、海のど真ん中に立っている。一体どうなっているんだ。


「はは、これは……夢だな」

「半分正解かな」

「だ、誰だ?」


 今度は子供の声が聞こえた。聞き覚えがある声だ、かなり最近聞いた気がする。


「僕だよ、もう忘れたのかい?」

「ま、マギーレウス?」


 次の瞬間、俺の目の前の水面が盛り上がった。巨大な波を起こし、水中から出てきたのはマギーレウスの巨大な顔だった。


「こんばんは、スタンリー。僕の家にようこそ!」

「い、家……だって?」

「そう、僕の家さ。今は入浴中だけど、暇だからスタンリーを召喚したんだよ」

「い、一体何がどうなって?」


 俺は頭が混乱した。確かに俺は宿の部屋で寝ていたはずだ。それが一瞬にして、マギーレウスの家まで召喚されたってことか。


「僕が【アイテムボックス】の管理者だってことは知っているだろ。だったら君を【アイテムボックス】の中に入れて、僕の家に召喚するなんてことも簡単なんだよ」

「そうなのか……でも、勝手なことしないでくれるか? せっかく寝てたのに」

「大丈夫。肉体は寝ているから疲労はしっかり取れてるよ。精神だけだよ、呼んだのは」


 駄目だ、マギーレウスの説明がさっぱりわからない。寝ていると言っても、全然そんな気になれないんだが。


「なんでもいいが、俺を召喚したってことは、何か用でもあるのか?」

「そうだよ。まぁとにかく、もっと近くまで来てよ」


 俺はマギーレウスに言われて、彼女の顔のすぐ近くまで歩いた。海の上を歩いているようでかなり不思議な気分だ。だけどマギーレウスの家だから、何が起きても不思議じゃないな。


「来たぞ……って、おい!?」

「どうしたの? 変な顔しちゃってさ」

「な、なんでもない……というか、わざわざこんな時に呼ばなくても」


 俺は思わず目を逸らした。さっきのマギーレウスの言葉を思い出した、入浴中だから当然何も着ていない。勘弁してくれ。


「はは。気にしない気にしない、というか君が寝ている時しか召喚できないからね」

「……わかったよ。で、話ってのは?」

「そうだね、まずこれを君に渡そうと思ってね」


 マギーレウスが渡したのは一枚の長方形の板だ。見ると、何やら文字がいくつか書かれている。


「……ゴー・イン・アイテムボックス? ショー・オールアイテムズ? おい、もしかしてこれって……」

「気づいたね。これは合言葉一覧表さ。困った時は、この一覧表を参考にしてみて。指で触れたら簡単な効果の説明も表示されるよ」


 マギーレウスの言う通り、合言葉の文字を触れると、確かに効果の説明文も合わせて表示された。これは便利だな。


「この『***』という項目はなんだ? けっこうな数あるけど」

「あぁ、それはまだ未習得の合言葉だね」

「未習得? 俺がまだ使っていないということか?」

「そうさ。最初から使えていたのは、〈ゴー・イン・アイテムボックス〉、そして〈ゴー・アウト・オブ・アイテムボックス〉だね。あとは僕と会ってから、習得し始めた合言葉もいくつかあるみたいだ。それでも、未習得分が多すぎるみたいだ」


 マギーレウスの言う通り、俺がまだ習得していない合言葉が一覧表の大半を占めている。


「これを全部習得するのか、大変だな」

「大丈夫。これまでも謎の声がアドバイスを送ってただろ、それに従えばいいんだよ」

「そういえば、あの謎の声って一体何なんだ?」

「さぁ、僕もさっぱりだね」

「……設計者の声とか?」


 マギーレウスは首をかしげる。なんとなく知っていそうな気もするけど、まぁ特に重要じゃないから詮索はやめておくか。


「わかった。じゃあこの一覧表はもらっておくよ、それじゃ」

「ちょっと待って。まだ用はあるよ」


 マギーレウスが呼び止めた。すると俺の目の前に、突然植物の種が出現した。


「なんだこれは……種?」

「それは幻影さ。本物は君が明日向かう新ダンジョンのどこかにある、それを取ってきてもらいたいんだ」


 新ダンジョン、『地下迷宮ヴァルゴ』か。でも一体何のために。


「別に構わないが、これは何の種だ?」

「ふふ、聞いて驚くなよ。虹色桃の種さ」

「虹色桃!? 世界最高珍味の果実じゃないか!?」

「もちろん果実が収穫されたら、君にも分けてあげるよ。報酬もかなり弾もうと思う」

「報酬か。一体いくらだ?」

「そうだね、相場の二倍くらい。金貨百枚でどう?」

「き、金貨百枚!?」


 十分すぎる量だ。俺は即頷いてしまった。


「よーし、それじゃ交渉成立だね。頑張ってきてくれ」

「用はこれだけかい?」

「うん、言いたいことは全部終わった。まぁ君なら大丈夫だと信じてる、さっき新しいガールフレンドも見つけたっぽいしね」

「いや……ガールフレンドってわけじゃないんだが」

「またまたぁ、君も隅に置けないんだからぁ。それとも僕の方が好み?」


 マギーレウスが色目を使って誘惑してきている。そしてなんと立ち上がろうとした。


「や、やめてくれ! それだけは!」

「なに遠慮してんのさ、僕はいつでもウェルカムだよ! ふふ」

「そういう問題じゃないだろー!!」


 大きな波が立ち、俺は全身びしょ濡れとなった。そして目の前には巨大な裸の少女が立っている。見上げてはならないと思いつつも、見上げてしまった。


「どうだい、僕のナイスバディーは? 絶景だろ?」

「あぁ、凄いな……」


 次の瞬間、俺は失神してしまった。それ以降は朝起きるまで何の記憶もなかった。

次回から『地下迷宮ヴァルゴ』攻略編に移ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ