第1話 アイテムボックス持ち、追放される
「スタンリー、お前は今日限りで追放だ」
「え? 突然何言って……」
パーティーリーダーのゲイルから突然すぎる告白だ。一体俺が何か悪いことをしたのだろうか。
「何度も言わせるな。お前はもう今日限りで、俺達のパーティーを抜けてもらう」
「今まで世話になったわね。本当、我慢の限界だったから」
同じくメンバーの魔道士メアリーからも、冷たい言葉をかけられた。一体何が何だかわからない。
「ちょっと待ってくれ。俺が何か悪いことをしたっていうのか? 意味がわからないんだが……」
「意味がわからないじゃねぇよ!!」
ゲイルはドンとテーブルを叩いた。部屋中に響き渡るほどの大きな音で俺も思わず怯んだ。明らかに俺に対しての怒りの気持ちがある。
「お前の【アイテムボックス】、どう考えても欠陥品だろ!」
「け、欠陥品だって!? 俺の【アイテムボックス】が!?」
ゲイルの言っていることがよくわからない。だけど俺の意に反して、ゲイルはさらに怒りをこみあげている。
「昨日もそうだ。収納したモンスターの素材、一体どこに消えた?」
「そ、それは……」
「素材だけじゃないわ。ポーションだってそう。回復アイテムまで消えるだなんて信じられない」
メアリーも追撃で俺を非難した。そして三人目はシーフのガッシュだ。
「お前の【アイテムボックス】を鑑定してもらった。そしたら驚愕の事実がわかった」
「おい、そんな勝手なことするなよ」
「お前は黙ってろ。ガッシュの鑑定でお前の【アイテムボックス】に致命的な欠陥があることがわかった」
「ま、まさか……一体どんな?」
するとガッシュが俺の前に長方形のプレートを見せつけた。そのプレートにはガッシュが鑑定した結果が表示される。そこには俺でも信じられない内容が表示されていた。
「あ、穴……だって!?」
「そうだ。お前の【アイテムボックス】の中に穴が開いている。それで全て納得したよ」
「正確には〈次元穴〉って言うのよ。信じられないわ、今まで穴開きの【アイテムボックス】を使っていたなんてね」
「こんな馬鹿な? 信じられない、何かの間違いだ」
「信じられないだと!? ガッシュの鑑定力がAランクシーフの中でも指折りだって知ってんだろ?」
ゲイルの言う通りだ。確かにガッシュの鑑定力はAランクの中でも随一、鑑定結果はほぼ間違いないだろう。俺は何も言い返せなくなった。
「……俺にどうしろって言うんだ?」
「おいおい、俺の話を聞いてなかったのか? 穴開きの【アイテムボックス】持ちなんかいらねぇ、お前は追放だ」
「待ってくれ。それじゃ今後はどうなる? いくら穴開きだからって【アイテムボックス】がいないと」
「その点は心配ないわ、フェリーナ」
メアリーが誰かの名前を呼んだ。すると部屋の外で待機していたのか、白髪の女性が入り込んだ。見たところ、俺達と同じ冒険者に見える。
「彼女がお前の代わりとなる。フェリーナ・ベルッチ、新しい【アイテムボックス】持ちだ」
「え? そんな……ってことは……」
「もうあなたは用済みよ、代役も見つかったしね」
「それに彼女はお前と違って戦闘スキルもある。つまり完全上位互換ってやつさ」
なんてことだ。ただの【アイテムボックス】スキルだけじゃなく、戦闘スキルまで持っているだなんて。フェリーナは心なしか俺を見下しているように見えた。
「今までご苦労様、これは退職金だ。受け取りな」
ガッシュがせめてもの労いなのか、俺に銀貨を数枚だけよこしてくれた。だけど何も嬉しくない。
【アイテムボックス】は無限にアイテムを収納できる超有用スキルだ。このスキルがあるおかげで、いろんなパーティーから頼られる。
でも、その【アイテムボックス】に欠陥が見つかった。非戦闘職である俺はこの【アイテムボックス】が使えないとなったら、もうパーティーに居場所はない。
「……わかったよ。俺は出ていく。さようなら」
俺は別れを告げ、そのまま部屋を出ようとした。
「おい、ちょっと待て!」
ゲイルが呼び止めた。
「なんだ? もう俺に用はないだろ?」
「お前は最後の仕事が残っている。【アイテムボックス】をオープンしろ!」
ゲイルが俺の【アイテムボックス】を開けるよう命じた。【アイテムボックス】のオープンは俺でしかできない。
「……開けたぞ」
言われるがまま、俺は【アイテムボックス】をオープンした。
「その中に今まで俺達が手に入れた戦利品やアイテムがある」
「あと所持金もね。それも全部私達のものだから、返してもらえる?」
「そんな……俺の取り分は?」
「ふざけんな! 穴開きの【アイテムボックス】持ちに分け前を与えてやるほど、俺達はお人好しじゃねぇ!」
「このままあなたの【アイテムボックス】に入れてたら、いつ消失するかわからないでしょ? だから今のうちに全部出しなさい!」
ゲイルだけじゃなくメアリーまで容赦しない構えだ。だけど俺にはどうしようもない。
非戦闘職である俺が、二人と戦って勝つ見込みはほぼない。俺は従わざるを得なかった。
「あぶねぇ、あぶねぇ。戦利品は一通りあるな、所持金は?」
「げ、最悪! 金貨5枚くらいなくなってるわ!」
「なんだと!? くそ、やっぱりもっと早めに出しておくべきだった! もう二度と俺達の前に姿を見せんな!」
ゲイルは俺を突き放した。そしてドアを閉めた。さらに鍵もかける音まで聞こえた。
「……正確な所持金とか知らないくせに」
俺の記憶だと、金貨は全部で二十枚ほどだった。メアリーは二十枚あるのを見て、わざと言った。と言っても、信じてもらえないだろうがな。
どうやら欠陥持ちという理由以外だけじゃない。俺は嫌われていたんだ。そうじゃなかったら、メアリーまであんなに態度が豹変することはない。
お先真っ暗の状態で、正直食欲も出なかった。俺は宿に行って寝ることにした。
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