いざ街へ
第2話です。
「朝よ。起きなさい」
「むにゃむにゃ…後1日だけ…」
「あなた今自分が家に泊めてもらっていることがお分かりで?」
その言葉で目が覚めた。そういえばここは家ではなかったんだった。なんだかいいにおいが扉の外からする。
「わ、すまん。おはよう」
「朝ご飯の用意ができてるわ。その服…一応泥が多少払えたと思ったけど、やっぱり汚いわね。この服でも着ておきなさい」
そういうと、きれいに折りたたまれた黒い服を渡してきた。
「これは?フタバが着てる服じゃないよな?」
「そんなわけないじゃない。その服はもう持ち主が着ないから。あげるわ」
少し持ち主が「着ない」という言い方が引っ掛かったが、ありがたく服を頂戴することにする。
着ようと思い、体を起こし改めてフタバと向き合うとフタバは、白い髪の毛に映える真っ赤なエプロンをつけていた。
なんだろうか。この、漂う幼妻感。断じて俺はそのような趣味は持っていないが。本当だ。
「わかった。…というか、その話の感じだと俺何日か暮らしていいってことか?」
「別にいいわよ。ただ代わりの条件があるけどね」
「その条件って?」
「私と一緒に私の探し物を探す旅に来てくれればいいわ」
うん?ちょっと聞き取れなかったな。旅だのなんだの聞こえたが。
「もう一回いっていただいても?」
「だーかーらー!探し物を探す旅に一緒に来てちょうだい!」
「旅ぃ!?それじゃそもそもここにこれから住まないのか?」
「忘れたの?ここは私が作った空間よ。圧縮して運ぶぐらい朝飯前」
「そういえばそうだったな…。それにしたって信じられない話だが。あと、探し物って?どんなやつなんだ?」
「…結構大きいもの、かな?でもあれがないとダメなのよ。いまは言えないけどね」
「俺、自分で言うことじゃないけど役に立たない自信あるぞ」
「戦力的には期待してないから大丈夫よ」
「それはそれで傷つくな!?こう見えても俺硝子のハートなんだからな!?」
色々とグダグダ理由を並べたがことごとく跳ね返された。
「まあ一人じゃないならいいけどよ…。野宿するよりましだしな」
「その話は街へ行ったときにするとして、とりあえずご飯を食べて用意しましょ」
そうフタバはいい、部屋を出てった。
「旅、ねぇ…」
俺がついてったとこで役に立つのだろうか。なぜなら、フタバが使う魔法は国の一流の魔法使いでも扱えないのではないかというレベルだからだ。一応俺は剣を使える。時々小さいころから村の端っこにある、村を守る結界が壊れているところから小さいボコブリンなどが入り込んできたからだ。大人に言っても子供の冗談だと相手にされなかったので、マトから剣を借りて時々駆除していたのだ。
ただフタバなら正直剣なんかなくともあの魔法で一発だと思うのだが。
まあ、それが条件で住まわせてもらえるなら従う他ないだろう。少し驚いたが、この家に住まわしてもらうなら楽すぎるぐらいだ。
その後、俺は渡された黒と紫のフード付きの服を纏い、朝ご飯のいいにおいをたどりながらフタバの待つ部屋へといった。
ちなみに余談だが、てっきり手作りだと思っていた朝食は缶詰をそのまま開けただけだそうだ。
なんでも、普段は朝食を食べずとも生きられるため一日に1回ほどしか食事をしないんだとか。本人曰く、「いつも用意していない朝食を用意してあげたんだから缶詰だろうが感謝しなさい」だそうだ。
図々しいが、少し手料理を期待していたのは内緒である。
◆◆
「うわぁ…ここが街か…!」
今、俺はどこにいるのかというと、人生初の街へ来ている。
「…あなたあの村出身だから来たことないのね」
「おうとも」
若干呆れられたが、気にしない。
「それで?何しに来たんだっけか」
「防具よ。お金を稼ぐためにも冒険者にならないと」
「ぼ、冒険者ですか…」
少しユートたちのことが頭をよぎった。そういえば今日の夜あの二人は出発か。それまでに村の近くで会えるといいな。
「とりあえず防具を買ったらパーティー登録するためにあの役所に行くわよ」
ここにきて基本的な疑問が浮かんだ。
「了解した。…ところで、防具を買うお金はどうすんだ?」
そう、お金の問題である。まあお察しだと思うが、胸を張って言うことではないのだが俺は一文無しである。戦力が期待できなくてお金がなくて特に知識もないとか、スリーアウトだな。笑えてくる。
「あなたに稼いでもらうわ。その体で」
「からっ‥!?」
「安心して、合法よ」
何をどう安心したらいいんだよ!!と心の叫びもむなしく、見かけによらず力が強いフタバに引きずられていった。




