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第4話 ~波が割れる日~

◇◇◇


「ハア……ハア……」


 俺の攻撃を思う存分に喰らい、すっかり体力を消耗しきってしまったのか、ラウラは息切れを起こしていた。


(これじゃあ俺が攻撃せずとも放っておけば衰弱死してしまいそうな勢いだな。……ん?)


 息切れを起こしつつも、静かにラウラは立ち上がり、そして話し始めた。




「このラウラは……いわゆる雑魚のレッテルを貼られている……勝負を挑んできた相手には必要以上にぶちのめされ、未だに治ってねえ傷もある。完敗させられた勝負の後にまた戦いたいよと言った奴らはもう二度と俺の所へ戦いに来ねえ。5才年下の才能ある若者にボコボコにされるなんてのはしょっちゅうよ。だがこんな俺にも、吐き気のする《悪》はわかる! 《悪》とはてめー自身のためだけに弱者を利用し踏みつける奴の事だ! ましてや女を! 貴様がやったのはそれだ! だから、俺が裁く!」

「悪? それは違うな。悪とは敗者の事。正義と言うのは勝者の事。生き残った者の事だ! 過程は、問題じゃあない!」


ビリュッシュッ―ン! ザパッ!


「何!?」


 もう既に体力はほとんど残っていないはずのラウラが、放たれた水の矢を避ける。


ビリュッシュッ―ン! ザパッ! ビリュッシュッ―ン! ザパッ!


(くそっ! こいつ火事場の馬鹿力みたいにどんどん躱わしてきやがる! まずい! こいつに何か策があるとしたらかなりまずい! こうなったら!)


「喰らいやがれ!」


シュリュリュンブルリンブリンザバーン!


こちらも最大限の力を出して、今まで以上の大波を起こす。


「…………」


それに対してラウラは何も言わず、そして抵抗せず、ただ静かに流されていった。


「……ハア、なんだ。結局はただの捨て台詞のようなものか。無駄に焦って損したが、まあいい。」


シュサーン、シュラッサーン。


「ん? 何だこの音? まるで、あっちの方から水が流れてきているような。待てよ? あいつの能力ではない事は確かだし、俺が襲った女の属性も水ではなかったはず。この近くにここまで音が聞こえてくるような大きな川なども特にあった覚えはない。それじゃあ、一体なんだ? ん? ……は? ……ん、んだありゃああああ!?」


シュリュリュンブルリンブリンザバーン!


「うおらああああああああ!」


 ラウラが触れた部分の水が、次々と消滅していく。


「な、何なんだあれは!? あいつの能力は瞬時に水を蒸発させる能力じゃあないはずだ! 例え巨大な炎を使ったとしても不可能な勢い! ……いや、違う。あいつは水を蒸発させてるんじゃあない!




<水を水素と酸素に分解>しているんだ!」

「敗者が悪だって?」

「しかもあいつ、俺の大波を逆に利用してこっちに流れてくるようにしてやがる!」

「それじゃあやっぱり!」

「まずい! これじゃあいくら大波を起こしても!」

「てめえの事じゃあねえかあ!」


ラウラの拳が眼前まで迫ってくる。


「オーラァ! / ぐはあ!」




「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ! / うわああああああああああああ!」

「裁くのは、俺の《超能力》だ! / ぐるっへええええええええ!」

「……なんて強い超能力なんだ、……グフッ」


◇◇◇


 男は最後にそう言い残し、静かに地面に倒れ伏した。


(これに関しては超能力とかはあんま関係ないようが気がするんだが、まあいいや)


「なあ。一つお前に聞くんだが、何で俺を襲ったんだ?」


 情報を集めるために、倒れている男にそう質問する。それに対して男は答える。


「それはてめえが一番気付いてんだろ。お前の能力が他と比べて、明らかに異常だからだよ」

「やっぱりか。だったら何でソルウと一緒に襲わなかったんだ?」

「は? 誰だ、そいつ?」

「成程、特に他の奴と協力関係があるわけじゃあないのか。しかしそうなってくるとますます意味が分からなくなってくる。何故こうもいきなり今になって別々の人間が一斉に俺を襲い始めたのかが謎だ。なあお前。なんでお前は俺の能力についてそんな知ってるんだ?」

「聞いたからだよ。初めは俺もそこまで興味がなかった。だが、倒せば多額の金が貰えるって聞いたんならやるしかねえじゃあねえか」

「え? お前今何て言った?」

「だからもらえるんだよ。金が。それもそこまで名の知れてねえ人一人にかけるにしてはそれなりに多い金が」

「どうやらただ単に偶然で終わる話ではなさそうだな」

「まあ誰がどうやって、そしてどうしてそんな依頼を出しているのかに関しては俺も知らねえ」

「そうか。……なあ、そういえば聞いてなかったが、お前の名前はなんて言うんだ?」

「……アーパだ」

「そうか。それじゃ、さよなら」

「ああ、さよなら。また戦いたいよ」

「…………」


 アーパは立ち上がり、そして俺に不意打ちを仕掛けることもなく、静かに去っていった。


「依頼、か。どうやら一人二人や、一日二日で終わるような事態ではなさそうだな」


 こうして俺は、立て続けに発生した戦闘による疲れを癒すため、そしていずれ来たる戦いの時に備えるため、家へと帰っていった。


~続く~

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