第2話 ~明かされる能力~
「ちょ、ちょっと待て!」
突然地面が爆発した。
確か目の前にいるソルウの属性は「地」
ということは、今の地面の爆発は確実にこいつの攻撃!
「待て! ソルウ! 何でだ!? 俺はお前に何かした覚えはないぞ!?」
「くそっ! 避けやがったか! だったらしゃあねえ!」
ソルウがそう言うと、突然地面が隆起し、それはやがて巨大な騎士埴輪となって俺の目の前に現れた。
「行け! 騎士埴輪!」
その言葉に反応するように、目の前の騎士埴輪は俺に目掛けて大きなこぶしを振り下ろしてきた。
とっさに俺も回避したが、それでも騎士埴輪は続けざまに攻撃してくる。
このままでは埒が明かないと思った俺は、急いでソルウとは真反対の方へ逃げることにした。
(まずい! 一旦逃げたはいいものの、恐らくすぐに追いつかれる! どうすればいい? どうすればあいつに勝てる? とりあえずまずはあの騎士埴輪から倒さねえと話にならねえ! だがだとしてもどうすればいいんだ? あんな巨大な騎士埴輪、どうやって倒せばいいんだ? ……仕方ねえ! こうなったらいっそのこと当たって砕けろだ!)
◇◇◇
ドシンッ、ドシンッ、ドシンッ
「どこだ? あいつはどこに行った?」
ザザッ!
「そこか!?」
ザザッ!
「ちっ! ちょこまかと動きやがる! 喰らえ!」
俺がそう叫ぶと、騎士埴輪は一本の木に目掛けて大きなこぶしを振り下ろした。
バギャーンッ!
「……ちっ、外れk」
「うおおおおおおおお!」
「なっ!? いつの間に!?」
(だが待てよ? あいつ、俺や騎士埴輪に突撃してきて一体何をするつもりなんだ? まさかとうとう自暴自棄になりやがったか?)
「うおおおおおおおお!」
「喰らわせろ! 騎士埴輪!」
その言葉に反応するよう騎士埴輪はこぶしを振り上げる。
しかしそれ以上にラウラの方が素早い。
(いや、むしろチャンスだ! あいつが騎士埴輪の体にぶつかってきた所を狙うんだ!)
「うおおおおおおおお!」
ドゴッ!
ラウラと騎士埴輪の胸部がぶつかり合う。
ドガロッガーン!
(……えっ?)
一瞬目を疑った。
確かにラウラは、かなりの強度を誇る騎士埴輪の胸部とぶつかったはずだった。
しかし、目の前にいる騎士埴輪の体は、胸部の中心から真っ二つに砕けた。
(なっ、何じゃこりゃああああああああ!? まずい! すぐに新しい騎士埴輪を作らないと!)
急いで後ろに下がり、再び地面から先程よりも体の大きい騎士埴輪を作り出す。
しかし、その騎士埴輪もまた、ラウラとぶつかった瞬間に体の中心から真っ二つに砕けた。
(違う! こいつはゴーレムの体に多大な衝撃を与えて砕いているんじゃあない! こいつの真の能力は、触れた物体を真っ二つにする能力なんだ! だから、俺がいくら巨大な騎士埴輪を作ったってこいつの前では無意味! ……あっ、……あっ)
ラウラが砕いた巨大な騎士埴輪の体の一部が、俺の方へと倒れてくる。
あまりの衝撃を受けた俺には、その体を避けようとする気力さえも、既に一瞬で奪われていた。
ドラガッシャーン!
◇◇◇
大きな音を立てて、砕けた騎士埴輪の体がソルウを押し潰した。
(……はっ! まずい! ソルウは? ソルウの息は?)
俺は、急いでソルウの元へと駆け寄った。
「……はあ、はあ、はあ、はあ」
(良かった……、きちんと息はある)
重たいゴーレムの体を真っ二つに砕いていき、ソルウを救出する。
「なあソルウ、何でだ? 何故突然俺を襲った?」
「……気づいたんだ、お前は無能力じゃあないって事に。それにお前の能力は他とは明らかに違った。どの属性にも当てはまらない特殊なやつだ。だから、お前がその事に気付く前に一刻も早く始末しようと思ったが……」
「それで今のような状況になったと……、流石に始末まではやりすぎだろ」
「それほどまでに危険なんだ、お前の能力は。俺もあの時まではお前の詳細な能力はわからなかったが、お前の一番危険な部分は、その能力を無自覚の内に発動させてしまっている点なんだ。」
「ああ、確かに。俺も割り箸以外でこの能力を発動したのは今回が初めてだ」
「無自覚の内でも発動してしまうような能力にもしお前が気付いて、その能力を悪用しようと考えてしまったら、最悪誰も止められなくなってしまう」
「ソルウ、それは考え過ぎだ。別に俺はそういう事をするような人間じゃあないのはお前もよく分かってるだろ」
「……一応だ、一応」
「そうか……」
「だが、気を付けておけ。もしかしたら俺のように、お前の能力に気付いて始末しに来る奴がまた現れるかもしれない」
「マジか……、しばらく休めそうにはないな」
「そうだな。……それじゃ、さよなラウラ」
「おお、さよなら。ソルウ」
砕けた挨拶を交わしながら、ソルウは去っていた。
しかしもちろんのこと、この数奇な運命は、ここで終わる事はなかった。
~続く~
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