第二話 ゲスい契約
前回のあらすじ
親友に彼女ができて真・ぼっちとなった千重里道貞。
屋上で黄昏ているところを同じクラスのギャル・下種牧舞に見つかり、その類稀なる陰キャ感を見出され、彼氏のフリを頼まれるのであった。
どうぞお楽しみください。
「そんじゃこのQR読み込んでー」
「あぁ……、っと」
うわぁ。アイコン自撮りだ。
陽キャ丸出しじゃんか。
「……うわー。名前まんまでアイコン未設定とかどういう神経ー? グループチャットだったらハブられるよー?」
知るか!
こちとら個人間でのやり取りしか使わないんだから、グループチャットでの作法なんて必要ないんだよ!
陽キャはこれだから!
無駄を削ぎ落とした美しさというものを知らない!
「ま、いっかー。恋人のフリだもんねー」
そうだ。
俺は裏切りの元親友・伴野をぎゃふんと言わせてやれればそれでいい。
じゃなきゃこんな根性悪い奴、金もらったって仲良くするもんか。
「じゃあカノジョ料だけどー、月に五千円でいーい?」
「は?」
カノジョリョウ?
オカネトルノー?
ギャルノコトバ、ムツカシムツカシヨー。
「こんな可愛い子をフリでもカノジョにできるんだよー? 五千円でも安くなーい?」
何言ってんだこいつ。
こんなゲスに払う金は一円もない!
「あ、一万にしてくれるならー、二人っきりの時でも恋人っぽい事してあげるよー?」
つ、月一万で恋人っぽい事……?
えっと今の貯金なら八ヶ月分……。
いや、アルバイトやお年玉を加味すれば……。
……はっ!
こ、こんなゲスに払う金など一円もない!
ここで主導権を握られたらまずい!
気持ちを立て直して俺は言い返す。
「……それはおかしいだろ。この話は君から頼んできた話だ。むしろこっちにメリットがあるべきじゃないかな?」
「え……」
「お金……、は可哀想だから、彼氏のフリしてる間、ちょっとしたスキンシップをさせてもらえばいいよ。……ちょっとした、ね?」
「……」
くくく、黙ったな。
俺を告白してくる男避けにしたいと言ったのはこいつだ。
こっちも伴野に目に物見せてやりたいという目的はあるが、それを知らないこいつからすれば立場の差は歴然。
金なんか要求しやがって。身の程を知れ!
「ひどい……」
「あ、え?」
「そういうの、嫌だから、カレシのフリ、お願いしたのに……」
な、泣いてる!?
やばい! やりすぎた!
「もういい……。キミには頼まない……。他の人にする……」
まずいまずいまずい!
折角の伴野へのマウントのチャンスが!
「ご、ごめん! お金がどうとか言われたからムッとして言い返しちゃっただけで、本気でそういう事するつもりはなくて……!」
「……」
「ちゃ、ちゃんと彼氏のフリするから……」
「……」
どうしよう! 俯いたまま動かない!
「……ほんと?」
「え?」
「本当にエッチな事とかしない?」
「本当! 絶対しない!」
「はい録音成功〜」
「……は?」
ぺろっと舌を出して見せる携帯の画面には『録音終了』の文字……。
こ、こいつー! 嘘泣きしやがった!
涙の跡もない! にやにやしやがって!
「ちぇー。陰キャだから大人しく払ってくれると思ったのになー」
そして悪びれた様子もない!
思った以上にゲスかった!
「まー、あっさり払っちゃうようなザコだったらー、オラついた奴に脅されただけで降参しちゃいそうだもんねー」
しかも値踏みまでしていたのかよ!
つくづくゲスいな!
「でも泣きまねにあたふたする感じー、正にドーテーって感じだよねー」
「うぐ……」
い、いいんだよ!
『良かった。泣いてる女の子はいなかったんだな』って安心する格好良いやつだからこれは!
「じゃあこれからよろしくー」
「……あぁ」
軽い感じで手を振り、屋上から立ち去る下種。
若干負けた感じもするがまぁ良い。
これからたっぷり利用させてもらうからなぁ……。
読了ありがとうございます。
拙作の男主人公はヒロインに抵抗もせずメロメロにさせられる事が多いので、道貞にはゲスく頑張ってもらおうと思っています。
次話もよろしくお願いします。