第十九話 ゲスいトラブル対応
カフェトークを終え、店を出る二人。
その二人の前に立ち塞がる影とは……。
どうぞお楽しみください。
コーヒーが底をついた。
下種の器も空だ。
そろそろ解散かな。
「ねー、この後どーする?」
どうするとは。
解散一択じゃないのか?
「写真も撮れたし、これで解散で良いかと思うのだが」
「えー? いーの? デートで撮ったって言ってあの写メ見せて、『その後どうした?』『帰った』なんて言ったらめっちゃ不自然じゃない?」
う、確かに。
「カラオケとかボーリングとかでもう何枚か写メ撮っとこうよ」
「……そうだな」
カラオケやボウリングならそれ程金もかからないし、まぁ良いだろう。
下種にしても男避けのためには必要なのだろうしな。
「じゃー行こっかー」
「わかった。その前に伝票は……っと」
あ、ここは先払いか。
「さっき払ってたじゃーん。ウケるー」
「ぐっ……」
慣れていないんだ仕方がないだろう。
人の些細なミスを愉快そうに笑いやがって。
やっぱりこいつは性格が悪い……!
「そーだ。改めて、ごちそーさまー」
「……あぁ」
こうやって判断をブレさせてくるところも苦手だ。
「どっちから行こっかー?」
「ん、任せる」
「じゃーカラオケにしよっかー。ボーリング開くの午後からだしー」
「一択じゃねーか。何で聞いた?」
そんな事を話しながらカフェを出た俺達の前に、
「お、可愛い子はっけーん」
熊太と下種を足して二で割ったような、武闘派ヤンキー三体が現れた!
たたかう? にげる? はなす? どうぐ?
逃げる一択だろこんなもん。
「……行こうマッキー」
「え、あ、うん」
「ちょいちょいちょーい。逃げるとかなくない?」
にげられない!
何なのこいつら? イベント戦闘なの? 中ボスか何かなの?
「五人で遊び行こうぜ? 楽しくな?」
とか言ってどこかで俺を撒くか排除するかして、下種とお楽しみにもつれ込むつもりなんだろう?
そうは行くか。
「あのー、僕達予定があって……」
「キャンセルだよキャンセル。空気読んでよ君ぃ」
何が空気を読め、だ。
それは『言わなくても俺らの言う事に唯々諾々と従え』って奴だろ?
そんなもん知るか。
読んで欲しければ空気中に文字書いて見せろってんだ。
「じゃ、じゃあ予定の方にキャンセルの連絡を入れまぁす……」
「おう、物分かりのいい奴だ」
馬鹿め。
怯えたフリをした俺は携帯で三桁の番号を押す。
『はい警視庁通信指令室です。事件ですか? 事故ですか?』
「あ、あの! 怖い男の人三人に絡まれてます! 黄百合ヶ丘駅南口の交差点です!」
「!?」
三人の顔に動揺が走る。
そりゃあそうだろう。
まさかノータイムで通報するとは思うまい。
「同行している女性を無理矢理連れて行こうとしています! 早く来てください! 黄百合ヶ丘駅南口です!」
『あの、なま』
すかさず切る。
これで警察は動かざるを得まい。
「てめぇ……!」
「ふざけやがって……!」
「何してくれてんだこらぁ……!」
おーおー殺気立ってまぁ。
ここで警察を恐れて逃げたら万事解決。
俺を殴れば傷害罪。
痛いのは嫌だが、その方がダメージは深刻になる。
さて、どう出るかな?
「この野郎!」
ぐっ! 胸ぐらを掴んできた……!
……でも、殴るのはためらっているみたいだな……。
そりゃあナンパで人生棒に振りたくないよねぇ。
「あ、あわわ……」
はーい、怯えた顔見せてやろう。
これで溜飲も下がるだろう?
「あたしのカレシに何すんの」
!?
視界からヤンキーが消えた!?
「へぐっ!?」
と思ったら足元に転がってる!
その腕を掴んでいるのは、下種!?
何!? 柔道か合気道の要領で投げたの!?
すげぇ! けど何してくれてんの!?
「お、おい、し、マッキー……。何をしてんだ……?」
「あー。あたしさー、護身術ってヤツでー、柔道と合気やってるんだよねー。それちょっとやってみたー」
「へ、へぇ……」
何が「好きなタイプは守ってくれる人」だよ!
お前単品で強いじゃないか!
ってこのままだと警察を呼んだ俺達の方が罪に問われる!
何せあちらが手を出す前に投げちゃってるからな!
「お、おいマッキー! 行くぞ!」
「え? ちょ、ちょっとミッチー、なになに急にー?」
俺は下種の手を引いて走り出した。
あぁくそ! 完璧な作戦を台無しにしやがって!
やっぱりこいつ嫌い!
読了ありがとうございます。
あっぶなかったー!
もう少しで「アップなかったー」になるところでした。
休みの日怖い怖いよー。
ちょっと一話増えるかも知れませんが、よろしくお願いいたします。




