第十四話 ゲスい休み時間
武石熊太の脅しを口八丁で丸め込んだ道貞。
その関係性はプラスになるのか、それとも……?
どうぞお楽しみください。
ようやく休み時間だ。
朝は熊太に絡まれていたから伴野に日曜の写真を見せる事はできなかったが、いよいよお楽しみの時間だ!
「おーい、道貞!」
げ。
何で来たんだ熊太の奴。
しかも朝の様子とは打って変わって、にこやかで爽やかな顔しやがって。
俺の言った事真に受けてんのか馬鹿め。
「なぁ道貞」
「何だ?」
「今日は良い天気だな」
「そうだな」
「……明日も天気は良いみたいだ」
「そうか」
「……」
「……」
下手か。
話題他にないのかよ。
この状態で突っ込んで来るとか、メンタルアダマンタイトか何か?
「……じゃあ、また」
「……あぁ」
見切り発車にも程があるな。
あの無謀とも言える行動力が陽キャだと言うならば、俺は陰キャのままでいたい。
「!」
メッセージ……、下種からだ。
『なになに〜? 新しい友だち〜?』
呑気な奴……。
お前を彼女にするためなら、脅迫も辞さない馬鹿だぞ?
一応警告しておくか。
恩も売れるしな。
『お前を好きな奴だ。俺が別れたらチャンスがあると思ったらしく、脅してきたから丸め込んだ』
これでよし。
多少なりとも危機感を持って、俺の存在のありがたさを感じるがいい。
! 返信早いな。
『え〜? どうやって〜? あ! もしかして「あいつより俺のことを見ろよ♡」的な〜?』
「……っく」
ふざけんな馬鹿吹き出しそうになったじゃないか。
『違う。本気で付き合いたいなら、脅したりしないで良いところ見せていった方が良いって言ったんだ』
問題は熊太があまりにもあっさりそれを信じたところだけどな。
まさかさっきの今で来るとは思わなかった。
……この調子で毎休み時間来るつもりじゃないだろうな。
どこかで「しつこいと嫌われるぞ」と鍵を刺しておくか。
……? 今度は下種の返事が遅いな。
てっきり『そうなんだ〜』程度で終わる話だと思ったんだが……。
お、ようやく来た。
『そうだよね。やっぱり本命には真っ正面から行かないとね』
ほほう。
俺は『そうだな』と返しながらほくそ笑む。
これは首の後ろに黒子のある、下種の好きな男に向けての気持ちと重ねているようだ。
相当入れ込んでるなこれは。
「!」
その時俺に電流走る……!
これで俺がその男を見つけ出し、間を取り持つと言えばどうなる……?
熊太程じゃないにしても、俺の要求に逆らえなくなるんじゃないか……?
くっくっく……。
そうとわかれば、一日も早く首筋黒子:男を見つけ出さないとな……!
そうなればゆくゆくは伴野の前で、
「あたしは道貞君の事が大好きでー、美人局とかじゃありませーん」
と言わせる事も可能!
……いや、それだとちょっと、いやかなり芝居臭いな……。
文言はもう少し精査しておこう。
読了ありがとうございます。
熊太はちょっと脅して、脅し返されて退場するキャラだったはずなのに、どうしてこうなった……。
だがおバカな熊太を、……それでも愛そう……!
次話もよろしくお願いいたします。




