第十一話 ゲスい服屋デート
恋人のフリのために映画デートに行くも、映画のチョイスを合わせられた事を知り、怒りに燃える道貞。
侮られたままではいられないと、下種牧舞の希望の服屋に行く事にしたのだった。
どうぞお楽しみください。
「あーこれかわいー。ねーミッチー、これ似合うと思うー?」
「あぁ、うん、似合うと思うよ……。ま、マッキー……」
「じゃあこれ試着お願いしまーす」
「かしこまりました」
俺は引きつった笑顔で、服を抱えて試着室に向かう下種を見送る。
地獄……!
圧倒的地獄っ……!
何だよこれっ……!
どうして……!
どうしてこんなことに……!
「じゃあ試着したら写真よろー」
「ふふっ、彼氏さん大変ですね」
「……えぇ、まぁ……」
……俺は後何回写真を撮れば良い?
後何回店員に薄ら笑いされながら下種を撮影すれば良いんだ?
下種は俺に何も言ってはくれない……。
「どうー? 似合うー?」
今度は濃い紺色のダメージジーンズと、水色のデニムジャケット。
中のTシャツが派手でカラフルなデザインだから、これで野球帽みたいなの被ったらストリートダンサーかラッパーって感じだな。
「あぁ、似合うよ」
「じゃあ写真よろー」
「……あぁ」
ポーズを取る下種に携帯を向けて写メを撮る。
っていうかこれだけ顔とスタイル良ければ、何でも似合うだろ。
何着ても(何か違う……)ってなる俺なんかに撮らせてないで、読モにでも何でもなれよ。
「ありがとー。じゃー待っててー」
「あぁ」
試着室のカーテンが閉まる。
途端に表情筋がへたばる。
これが本物の彼女だったら楽しいのかも知れないけど、下種に合わせるだけだと思うとひたすら面倒くさい。
つらい。
早く解放されたい。
でもこういうのって買うのが決まるまで終わらないんだろうな……。
! そうだ!
「なぁ、ま、マッキー。何か気に入ったのあったか?」
「んー、どれもいー感じだけどー、何か決め手に欠ける感じー」
「そ、そうか」
「ミッチーはどれが好きー?」
「あー、今のはなかなか良かったと思うぞ」
とにかく何か一つ買わせて終わりにしよう!
適当に褒めて、決めさせれば終わるはずだ!
「んー、でもちょっち予算オーバーなんだよねー」
お前ん家金持ちなんだから良いだろ!
「もうちょい安くてデザイン好きなの見つけたいんだよねー」
「だったらどれか一つ俺が買うよ」
「えっ、いいのー?」
くっ、仕方ない。
万が一にと思って持ってきた円盤購入貯金を使う事になろうとは……。
だがものは考えようだ。
『買ってもらった』事による引け目は、服を見るたびに思い出すはずだ。
くっくっく……。
これぞ正しく肉を切らせて骨を断つ!
「じゃーTシャツ買ってくれるー?」
「良いぞ。いくらだ?」
「はっせんえーん」
「はっ……!」
おいおいマジかマジかマジか。
たかがTシャツ一枚に八千円!?
俺のなんか五百九十八円(税抜)だぞ!?
さては一番高いのを要求してるな!?
「ほ、他のはいくらぐらいするんだ?」
「んーとねー。パンツが一万四千で、ジャケットが二万」
……は?
お値段の桁が一つ違うんですが?
俺基準のお値段測定器だったら爆発してるんですが?
「四万超えるのはちょっち厳しかったから、ありがとミッチー」
「……」
……だが一度出した言葉は引っ込められない……。
試着室から出てきた下種に、俺は必死に取り繕った笑みを浮かべる。
「じゃー、これよろー」
「……ぉぅ……」
「素敵な彼氏さんですね」
「あざまーす」
「……じゃあこれで……」
俺は満足そうな下種と店員の声を聞きながら、先程心の中で煽ったゆきっつぁんに別れを告げたのだった……。
読了ありがとうございます。
骨を断たせて肉を切る。
ダ◯大のメ◯ンテかな?
……今回は牧舞の服考えるのがしんどかった……。
『ギャルっぽい服』で調べれば調べるほどわからなくなる……。
ホント服装は地獄だぜ! フゥハハハーハァー
次話もよろしくお願いいたします。




