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企画参加作品・短編

婚約破棄阻止計画

お読みくださいまして、ありがとうございます!!

誤字報告、助かります。

本作は、家紋 武範様主催「知略企画」参加作品です。

恋愛要素、薄めです。

 シャザオス王立学園高等部の生徒会室では、四人のメンバーが顔を突き合わせ、緊急会議を行っていた。

 四人とは、王国の宰相の長子カンケラス、騎士団長の次男ナイポティア、魔術師団長三男ミデアル、そして侯爵家ロードリア家の嫡男、アラビーノである。

 いずれもシャザオス王国王太子、アトリアムの側近兼、お目付け役の面々である。そして生徒会の主要メンバーだ。


 緊急会議の議題は一つ。


『王太子アトリアムの婚約破棄を、いかに阻止するか!』


「はああ……」


 カンケラスが思いきりため息をつく。


「なんでこんな議題で、会議せにゃならんのよ」


「そりゃあ、アホ、じゃなかったアトリアム殿下のせいだろ? ぶっちゃけ」


 ナイポティアの、ぶっちゃけ発言。


魅了チャームでも、かけられたんとちゃう? あの男爵令嬢、何だっけ名前?」


 ミデアルも親の跡を継ぐ魔術師であるが、魔術以外の興味がない。


「ドロアナ」


 アラビーノが吐き捨てるように言う。

 元々、アホならぬ、いやアホなんだろうが、アトリアム王太子と正式に婚約しているのは、ロードリア侯爵令嬢ビエッタ、すなわちアラビーノの姉なのである。


「だいたいさあ、王族と貴族の婚約なんて、国王が定めたもんだろう? いくらアホでも、破棄しようとか思うのか?」


 カンケラスは宰相の息子なので、国の決まり事は無論、校則なども守って当たり前のタイプである。


「脳内お花畑の殿下には、そんな堅い話は通用しない! アホはコワイんだぞ!」


 さっくりと切るナイポティア。本人もいずれ騎士になる予定だ。


「あのさ、その泥縄嬢」


「ドロアナだ」


「どっちでも良いじゃん。ドロ嬢のどこが良いの? ビエッタ様よりも、どこが優れているっていうのさ」


 ミデアルの疑問は真っ当である。

 侯爵令嬢ビエッタは、高等学園一の美人で有名。成績は優秀。人格は高潔でボランティアにも熱心。当然、貴族令嬢としての所作や嗜みも、他の追随を許さない。


 そんな姉をほったらかして、男爵令嬢などという下位貴族に、鼻の下を極大まで伸ばしている王太子の姿に、最も憤懣やるかたない思いを持っているのは、アラビーノである。

 その彼が、決意を込めて言った。


「……胸、だ」


「「「!!!」」」


 残りの三人は驚いた。

「胸」という単語に、ではない。

 それを言ったアラビーノに対してである。


 だって、薄々そうではないかと、皆思っていたからだ。

 男爵令嬢が唯一、ビエッタに勝っているものがあるとすれば、その豊かすぎる胸だけだ。


「ったくよう、おつぱい星人だったのかよ、アホ殿下!」


 と言いながら小声で「気持ちが、分からんわけでもないが」とナイポティアは視線が泳ぐ。

 他の面々も、男爵令嬢ドロアナの、ゆっさゆっさと揺らす双丘を思い浮かべたようで、しばし室内にはチン黙の時間が流れた。


「いや、殿下がお、おっぱい星人かどうかはともかくだ。星人だろうけど。問題は、このままいけば、卒業パーティーで、ヤツは絶対婚約破棄を言いだす! アホなんだから」


 カンケラスは、とうとう王太子をヤツ扱いし「アホ」とまで言った。


「姉にとっては、ラッキー! だろうがな」


「アラビーノよ。ビエッタ様にとっては確かにそうであろう。問題の焦点はそこではないのだ」


 カンケラスの瞳が光る。

 そしておもむろに黒板に向かう。


 殿下、婚約破棄宣言

 ↓

 殿下王太子はく奪。場合によれば追放。

 ↓

 殿下のお目付け役、無能判断


「さあ、この続きはどうなる?」


 カンケラスが周囲を見渡す。


「ちょっ、ちょっ待てよ! 俺らまで無能と判断されるってか?」


 ナイポティアが焦る。


「俺、そうじゃなくても嫡男じゃないんだから、騎士になれなかったら、ばあさん家で牛追いだぞ」


 シャザオス王国は酪農大国でもある。


「いいじゃん、乳しぼり放題だぞ」


 ミデアルは笑う。


「俺、放逐されたら、隣国で黒魔術でも習うわ」


 隣国は呪術大国である。


「だからさ、そうならないように、今会議しているんだ。なんとか対策たてないと、な」


 アラビーノもカンケラスの発言に頷く。


「対策は、もう考えた」


「どうするのだ、アラビーノ。破棄される前に、侯爵家から婚約解消願いでも出すのか?」


「王命により、侯爵家からの申し入れは難しいよ。だから、俺が考えた対策は……」


 皆、固唾をのむ。


「姉、ビエッタを、巨乳にする!!」


 全世界から、音が消失したような静寂に包まれた。



「うおおおおおお!! アラちゃん超天才!」


 ナイポティアは右こぶしを突き上げる。


「それ良い! 賛成! 俺、ビエッタ様の巨乳姿なら許す!」


 意味不明なミデアル。


 カンケラスは、俯いて微笑んだ。


「ついては、諸君に協力を願う! まず、ナイポティア!」


「イエッサー!」


「ばあさんトコから、新鮮な生乳を運んでくれ。小食な姉が巨乳になるには、必要な栄養素だ!」


 ナイポティアは敬礼する。


「次にミデアル!」


「なんでもするぞ!」


「君は、反重力魔法を習得していたよな」


「おお」


「それを姉の胸にかけてくれ。巨乳になっても、垂れてしまっては魅力半減だ!」


「かしこまりましたあ!」


「最後にカンケラス!」


「何だ?」


「生徒会起案で、『全生徒の体力向上のために、トレーニングルームで毎日筋トレする』という発令を出してくれ」


「筋トレ? 何のためだ?」


「美しい胸を作るには、適度な脂肪に加えて、肩や背中の筋肉が必要だからだ」


「なるほど。確かに承った!」



 こうして、アトリアム殿下の婚約破棄阻止に向けてのプロジェクトが始まった。

 四人が雁首揃えて考えた、「ビエッタ嬢が巨乳になれば、殿下が婚約破棄をしないはず」という方法は、この時点でのエビデンスは全くない。


 真面目なビエッタは、毎日搾りたての牛乳を飲み、筋トレを行った。

 彼女は元々食が細く、よって身体も細かったのだ。

 日頃使わない筋肉を動かすようになると、血行が良くなり、深い睡眠が取れる。

 結果、ビエッタの肌の色ツヤが一層良くなり、ブロンドの髪もキラキラが増した。


 プロジェクトの進行チェックも兼ねて、毎日生徒会のメンバーが、ビエッタを取り巻いている。

 日々美しくなるビエッタ。

 取り囲む生徒会の連中。


 婚約者であるアトリアム殿下は、なんとなく面白くない。

 そこで彼は考えた。アホなりに考えた。


「まさか、ビエッタは、わたしを捨てようとしているのでは?」


 ビエッタを取り巻く生徒会メンバーは、ああ見えても、それなりの家柄で将来も期待されているのだ。


 そこで彼はビエッタが毎日足を運ぶ、トレーニングルームへと行ってみた。


 入口からこっそり中を伺うと、薄地のトレーニングウエアに身を包む、ビエッタがいた。

 汗を流しながら、手足を大きく広げ、バーベルを持ち上げるビエッタは、今まで見たことのないような生き生きとした表情だった。


 何よりも。

 トレーニングウエアの下で息づく胸部が、ふんわりと盛り上がっているではないか!!

 アトリアム殿下は、ビエッタのトレーニングが終了するまで、見守っていたという。



 その後。

 いつのまにか殿下は男爵令嬢と距離を置くようになり、婚約者であるビエッタと、寄り添う時間が増えた。

 そして卒業パーティーでは、殿下はビエッタをエスコートし、いつまでも踊り続けたと、シャザオス王立学園高等部生徒会誌には綴られている。


 了

栄養を摂ったり、筋トレしたりしても、その効果には個人差がありますことを、ご了承いただきたく、お願い申し上げます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 結論、アホの子しかいないヤサイセイカツですね。 健康的に魅惑ボディを手にいれるなんて、素晴らしいですな。
[良い点] この痴略がうまく運ぶとはΣ(゜д゜lll) 楽しませていただきました(∩´∀`)∩
[良い点] なんという智略! 壮大なスケール! おもしろかったです! やはり巨乳には夢がつまってますね!
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