草とのたたかい最前線 2006年10月 すずがも通信160号掲載
保護区はいつも現在進行 2006年10月 すずがも通信160号掲載
9月10日。2年半ぶりの竹内が原全面草刈・全面重機がけがいよいよ大詰めを迎えました。あと1週間お天気が大きく崩れなければ、かなりいい線まで持って行けそう。実習生さんたちとナガエノツルノゲイトウ(え、どうして?)のおかげです。
造成後10年を経過した竹内が原。当初から淡水湿地のシギ類の誘致を目的として、広くて開けた状態をめざしていました。ところがどっこい、あっという間にヨシやヒメガマが育って、背丈をこす湿地植物に覆われた湿原に。面積がこの1000倍あればタンチョウやチュウヒが繁殖できたでしょうに。せまい保護区内では植物が繁るに任せるわけには行かず、造成後2年目頃から毎年のように大々的な草刈やトラクターがけといった植物のコントロール作業を続けてきました。
当初のライバル(?)だったヨシは、思ったよりも楽に勢いをそぐことができるようになりました。ヨシは最初種子から発芽して育つのですが、最初の年にはもっぱら地下茎を伸ばすので、草丈は1mにも達しません。地下茎が育ってからは2~3mほどの堂々たる姿になり、踏み込むのも困難。ただし地下茎は地表から10~30cm程度で、トラクターでなんとか耕すことができます。またヨシが生長できるのは水深が50cmくらいまでで、それより深い水中にはふつうは生えません。水が浅ければ干上げたり機械を入れるのも楽。ヨシは密な地下茎群をトラクターで掘り上げてこまぎれにし、芽吹く直前の2~3月に再度トラクターをかければ、それから2、3年は立ち直れないようです。
ところがヨシの次にヒメガマがはるかにやっかいな相手となりました。ヒメガマはヨシより深い水中(水深1m弱まで)で育つことができます。地下茎もヨシより深く30~50cmくらいの位置。これだけ深いとトラクターでは歯が立ちません。ここ数年来、まず水を干上げ、ユンボー(パワーショベル)で土の天地返しをやり、踏み固め、トラクターを縦横斜めとていねいにかけて掘り上げた地下茎をこまぎれにしています。ヨシは10cmくらいにこまぎれにされた地下茎からも芽吹くことができますが、ヒメガマには無理。こうした徹底作業を行った場所ではヒメガマの地下茎からの生長は見られません。
ただし、ですね。ヨシと異なり、ヒメガマは細かい種子からの実生苗が1年で背丈まで伸びます。その年には開花できず草密度もはるかに低いのですが、ヨシのようにトラクターだけでコントロールすることは不可能。種子から発芽した年のうちに地下茎もけっこう伸びて、翌年には1株で地下茎は軽く数メートルに達し、どんどん密度を上げ、勢力を伸ばして行くというわけです。
ヒメガマはヨシのように海水に耐える種類ではなく、汽水域には生えません。機械にたよるコントロールではなく、海水導入といったやり方を今後工夫する必要があるかも知れません。
さて、長々と目下の草との戦い状況からわかってきたことを書きました。冒頭のナガエノツルノゲイトウは地面をはう形で水中にも陸上にも生える手ごわい相手。水田にとっては脅威で、特定外来生物にも指定されました。実はそのおかげで、ダイオキシン禍のため10年近くできずにいた草の焼却が「特定外来生物の処理」を名目に許されるようになりました。刈り取った草をどけて地面を空ける作業は、草刈そのものよりもきつい重労働、焼却ははるかに楽です。ナガエノツルノゲイトウはたっぷり水を含んでいてなかなか燃えませんが、キューキューと派手な「悲鳴」を上げて炙られて行きます。何日かかけて草焼却ほぼ終了。誰も熱中症で倒れずにすんでほんとうによかった。
1年近くも雨ざらしのまま待機していた友の会手持ちのユンボーくん、作業が始まるとやはり次々にトラブル箇所が出てしまったことはさておき、今日は折れたマフラーを交換してもらって、いよいよ本格的な掘り返し作業開始の予定。
もう少し楽に、手をかけずに、化石燃料も使わずに植物をコントロールする賢い手がないものか。その日が来るまで、やれやれ、毎日毎日現在進行です。