おしんとこしん 2006年4月 すずがも通信157号掲載
鳥の国から 2006年4月 すずがも通信157号掲載
おしんとこしん
満開の白梅が散りはじめました。梅の花びらって、ほとんど円形で、桜のような切れ込みがないんですね。5枚の花弁をつけたまま、1輪がそっくり落ちているのをいくつか拾いました。香りのよいこと!これも桜とは違います。
この冬の小鳥の少なさは尋常ではありません。つい数日前、「この冬初めて」アオジの姿をきちんと見ました。1月21日の大雪の後でツグミ類は一挙に増えて、特にツグミは1本の木に50羽くらい群れていたりするのを見かけます。アカハラ・シロハラ・ジョウビタキも、ようやく観察舎まわりで週に何度かは見かけるようになりました。でも、まだ少ない。日本全国どこでも、という傾向らしいので、個体数回復には何年かかかるのではないでしょうか。夏の繁殖時期、繁殖地で何があったのだろう。
コアホウドリ2羽をいちおう放鳥したあと、野鳥病院はまあまあ無事。琵琶湖の竹生島で昨年7月に標識されたカワウ若鳥が浦安で保護されて入院していたり、警察から違法飼育摘発のメジロ15羽とウグイス2羽が来たり。満16歳をこしていた最長老のツバメ「赤」や、愛嬌ある姿でこの数年来親しまれていたシメなど、訃報もいくつか。
シメが消えた仮設禽舎小鳥室は、ムクドリ・ヒヨドリ・シロハラと中型連中だけが残っています。そのなかで、人気急上昇中なのは、何度放しても人の手や肩に乗って戻ってきてしまうムクドリくん(たぶん間違いなく雄)。携帯電話を向けると、「ジ―ッ、カシャッ」ともののみごとにシャッター音を真似ます。携帯を開く「ヒューッ」という音や、太い男性の声で「ムクちゃん」とか、いろいろな真似の上手なこと。どんどんレパートリーが増えているようですが、人生についての感想らしい、と言われている、よく意味のわからないぶつぶつ声も。
1月末から同居にふみきっているハクビシンのおしん(下半身不随の成獣雌)とこしん(11月24日入所の幼獣雌)は、いつ見てもべったりくっついて仲のよいこと。こしんは2度ほど脱走して外泊しているのですが、うまく再捕獲してケージに戻すたびに、おしんが「さみしかったのよ。寒かったのよ」と言わんばかりに、こしんをおさえつけてなめまくっていました。こしんもそろそろ生後7ヶ月くらい。最初は860グラムしかなかったのに、このごろはちょっと見ではおしんと同じくらいの大きさ。いつ、どこで放すか、頭の痛いところ。
東京環境工科専門学校から1日だけ実習に来られた八幡百合子さんが、無事に福島県の鳥獣保護センターへの就職が決まられたとか、帝京科学大学(山梨県)の1年生、一柳亜梨紗さんがこの2週間ボランティアとして来られたとか、若い方たちの出入りで華やいでいる鳥の国でした。