すきま埋め あれこれ 2006年12月 すずがも通信161号掲載
保護区はいつも現在進行 2006年12月 すずがも通信161号掲載
すきま埋め あれこれ
9月の肌寒さがうそのように、10月からずっと暖かい日が続いています。それでも木々の実は色づき葉も少しずつ落ちて、それなりに晩秋。
目下の仕事は稲刈り中心。スズメよけのキラキラテープや網が功を奏して、待望の「ミルキープリンセス」も古代米の緑米・赤米もある程度の収穫が期待されそう。そのかわり、稲架にはずっしり重みがかかります。強風のたびに竹が折れるか、倒れるか、とはらはら。
観察舎3階の手すりにはずらっと稲束が掛け渡されて、ワラの香りがしています。111月には福栄小5年の生徒さんたちが学校で収穫した稲を運び込んで観察舎で脱穀作業体験。すり鉢にもみを入れて野球のボールでもみすりをやるという工夫に感心しました。
カワウのコロニーでも、千葉県が新たに営巣やぐら3基を増設。9月から11月初めころにかけては繁殖を終えたカワウたちが分散したり、夏の餌場である三番瀬から川へと餌とりの場が移る時期。日中はコロニーにあまり鳥が残りません。今年は針金で留められていたBタイプのやぐらの棚の部分がぜんぶはずれてしまったので、手がある日にクランプを用いた補修と、恒例の補助枝つけを続けています。
営巣やぐらのなかでもテントの骨組のような形をしたBタイプはカワウたちに好評で、2006年も45の巣(つがい数は53.求愛行動を続けたり短期間抱卵しただけで、本格的な抱卵に至らなかったつがいも少なからずいる)で、29羽の若鳥が巣立って行きました。一方、ひな壇のような形のCタイプは年々巣が減って、21の巣(つがい数は24)で10羽の若鳥が巣立ち。
前の年、2005年は例外的なほど繁殖成績がよくて、Bタイプでは43巣(51つがい))65羽が巣立ち、Cタイプでは27巣(32つがい)36羽が巣立ち。同じ巣で2回若鳥が巣立った例も11もありました。
やぐらでの繁殖成績は樹木に作られた巣よりもいつも低くなります。上をおおう枝などがない分、よく目立ってカラスやノスリなどの捕食者にねらわれやすいのでしょう。最初の年に多かった、巣が丸ごと落ちてしまう事故は、補助枝を多くつけるようになってからずいぶん減ったようです。さて、間もなくはじまる予定の2007年の繁殖状況はどうなるでしょうか。
草刈り・草刈り・草刈りに明け暮れる夏が過ぎて、11月は例年小学校の施設見学が多い月。今年は例年続けてきたカモやカモメの餌付けを見直そうということもあって、観察舎から見える位置には鳥があまりいません。狩猟解禁(11月15日)になると、銃猟で追われたカモが若干入ってくるかな。団体見学の時には川上正敬さんに都合が合うかぎり助っ人をお願いして、鳥が少ない分、解説や案内に力を入れるようにしています。
小学生の見学でガゼン張り切るのがうちのタヌキ。私がついて口元をしっかり確保しているのですが、ともかく「わあ、かわいい」とか「初めてさわった」と喜ばれるのがよくわかっているらしく、とり囲まれてなでまわされるのがほんとうに好き。なでられるのがうれしいなら、噛みつかなければ、誰からもいつでもなでてもらえるのにねえ。1クラス40名弱になでられた後も、「お次は?」というポーズで、いつもの「お立ち台」から下りません。タヌキと望遠鏡のほか、余力がある時は芝生のまわりでの自然観察にも時間を作って、また来たいと思ってもらえるように努力。
ツグミの初認は11月2日。ジョウビタキは10月28日。達夫さんが竹内が原で開いている網1枚での標識調査でカモやシギが着実にとれています。すき間埋めの作業を続けて、少しは新機軸を。晩秋、現在進行でした。
まさに現在進行、まっただ中。そのまんま、という状況で「現在進行 鳥の国 3」を終了いたします。ちょうどここまで書けばきりがよい、という感じにはできませんでした。2006年12月号に掲載した分までで区切り、続きは間もなくスタート予定の「現在進行 鳥の国 4」にまわします。
いろいろなことが、この1冊の中で変化してきました。やっていることも、当面めざしていることも、そしてあれやこれやの失敗も(時たまには成功例も)。次作で、行徳鳥獣保護区と行徳野鳥観察舎で私が続けてきた仕事の連載は終了いたします。筆者にとっては、何度読み返しても懐かしかったり、胸がわくわくするような思い出の数々ですが、読んでくださる方にそうした気持をお伝えすることができるでしょうか。