新釈「龍の形見」12
塚原卜然は、牛丼屋で仕事に向かう瑛太社長と別れると、新宿へ向かった。そして、地下街を通って都庁前にやってきた。
しかし、そこには、誰もいなかった。
幽霊の月陰熊五郎は、塚原卜然の枕元に立ち、堀米泰成が闘いの場をセットしてくれることになっていると、言っていた。
しかし、堀米泰成の姿はなかった。堀米泰成は、やってくるのが遅れているのだろうか。
塚原卜然は、堀米泰成が、すでに到着しているのではないかと思い、心当たりのある場所をあちこち見て回った。
結局、塚原卜然は、堀米泰成に結局あうことはできなかった。
塚原卜然は、幽霊の月陰熊五郎の言葉をあてにしたのは、我ながら間抜けなことだったと思った。
それでも塚原卜然が、堀米泰成を探し回ってみる。
すると塚原卜然の行く手に月陰熊五郎が姿を現した。
塚原卜然の思いも寄らぬことであった。
塚原卜然は、幽霊の月陰熊五郎に言った。
「月陰熊五郎よ、俺たちの闘いのために、『龍の形見』を手配すると、堀米泰成が約束してくれた。そうあなたは言っていた」
「しかし、堀米泰成は、約束の時間になっても姿を現さない。こうなれば、俺たちは『龍の形見』なしに闘いを始めるしか道はない」
すると、月陰熊五郎は、塚原卜然に見るようにとある方向に腕を広げ何かを指差した。
塚原卜然は、月陰熊五郎が指さす方向に、屈強な男たちに守られるように、『龍の形見』がセットされていた。
『龍の形見』を見た塚原卜然の心に、二十年前の闘いの日々がよみがえってきた。
塚原卜然が、『龍の形見』のほうにあるいていくと急に景色が変わった。
塚原卜然と、月陰熊五郎は巨大な闘技場の中にいた。
塚原卜然と月陰熊五郎の前には扉がある。
塚原卜然は、扉を開くと中に入っていった。月陰熊五郎がそれに続いた。
扉の向こうにあったのは、懐かしい闘技場のリングだった。
しかし、塚原卜然のうしろの月陰熊五郎は、塚原卜然に声をかけた。
「俺は、もうじきあの世に帰らんといけん。五億円ポッキリの金じゃ、薬の効きにも限界があるみたいや。あの世に行く前に、言いたいことがあるんよ」
「ひとつは、お前に預けとったと勘違いしとった五億円ことや。会社まで出向いていっておまえの息子の塚原瑛太さんその金を返すよう言った。塚原瑛太さんは、えらい心配したやろうな」
「ワシはその金、何に使うたかやっと思い出したわ」
「リンダのために、キャバクラ『スマイル』を開いてやったんや。それでも、あの店、えらい赤字を出しよったんや。あれで、そうとう、カネ持って行かれたわ」
「残りは、わけのわからんの廃品回収業者の車の電飾に出してしもうたわ。その廃品業者の乗っとる車の電飾も見事なもんになったよ。ワシは気にいったんよ。そして、残りのカネはそいつに、きまえよう、全部、持って行ってくれるよう言ったんよ」
「もうひとつ、言いたいことは、堀米泰成のことや」
「俺は、今堀米泰成のことが心配でならないんよ」
「というのも、俺は生き返ることが出来たとき、まず、堀米泰成のところに出かけていったよ」
「その時、堀米泰成は、俺に、『龍の形見』が売りに出されていると教えてくれた」
「あの日堀米泰成は、新聞の三行広告の切り抜きを示してくれたんや。俺は、堀米泰成の話に乗ったんや」
「そして、リンダにその『龍の形見』の資金五億円を工面してもらうようにいったんよ」
「『龍の形見』の入手の旅に出た堀米泰成はすぐに行方不明になった」
「俺は、堀米泰成の身に何かが起こったことを確信したんよ」
「そこで、俺は、お前、つまり『平安クリーンスタッフ』の先代社長、塚原卜然に相談したんよ」
「お前は、バンドマン ツヨシという男に命じて堀米泰成の様子を調べに行かせたんよ。しかし、その後バンドマン ツヨシという男からは、何も情報が入ってこないのか? 俺は、心配でたまらない」
塚原卜然は、堀米泰成のことを調べるように派遣したバンドマン ツヨシのことをすっかり忘れていた。
最後に、月陰熊五郎は、先代社長、塚原卜然に、闘えなかったことをわびたのだが、それだけ言い終えると、月陰熊五郎は、影が薄くなり、ついには消えてしまった。
月影熊五郎が用意したスノードーム、『龍の形見』は、直ぐにダメになるまがい物
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