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新釈「龍の形見」10

「こんにちは」


岡寺のぶよは、ノエル君に挨拶した。


「こんにちは……」


岡寺のぶよにノエル君が、聞き慣れぬイントネーションの日本語の挨拶を返したとき、異変が起こった。


タツノオトシゴに似たノエル君は、さらに何かを話しそうに見えたのだが、何かを感じて黙り込んでしまった。


そして、次の瞬間 ノエル君は、神隠しに遭ったように、姿を消した。


ノエル君と同時に、岡寺のぶよとリンダも、殺風景な、見覚えのない部屋に、気づかぬうちに移っていた。


「ひょっとして、ここは『龍の形見』の中ってこと?」


勘の良い岡寺のぶよは、つぶやいた。


美容室にたくさんいた美容師、美容室の客、占いに来ていた客、そして、ノエル君の占いを客に伝えていた幼女までがそこから消えてしまっていた。


たくさんにひとが消えて、そして、ひとりのエイリアンが現れた。


「あなたは、わたしたちの、囚われものに、なった。囚われものだ。これからは、わたしたちの命令に、したがっていただく」


そのエイリアンの手元を見て、リンダが声を上げた。


「ノエル君!」


現れたエイリアンの手には、虫かごのようなものがあり、先ほどのタツノオトシゴに似たノエル君がいた。


ノエル君は、薬でももられたかのようにぐったりとして横になっていた。


エイリアンは、岡寺のぶよに名刺を渡した。名刺には、『(株)宇宙商社第一営業部部長、ドクターノバ』と書かれていた。


「皆さん、ここは私の『龍の形見』の中です。ようこそ」


リンダは、ドクターノバを指差して言った。


「この人が私の子供をもらいに来たエイリアンよ」


リンダは、このあと岡寺のぶよから振り返るようにドクターノバに向くと小声ではあるが、キッパリと言った。


「五億円はどうなったの。この子と引き替えに、用意すると約束した五億円」


ドクターノバは、リンダに答えた。役人のように冷淡に。


「あなたたちが、子供を引き渡さないことを決心したことを知っている」


「だから、いまから、私たちは、実力行使をして、私たちの権利を守らねばならない。というわけで、あなたと私との約束も反故ほごになった。私は、子供をもらっていくが、お金は渡せない」


岡寺のぶよは、憤慨した。


守銭奴しゅせんど!」


ドクターノバと名乗るは、岡寺のぶよのことばにも、冷静だ。


「契約をあなたたちは、破棄しました。だから、残りの五億月、私たちも約束を果たすことはできません。契約も約束もなかったことになります」


「私たちエイリアン側は、私たちが、あなたたちに支払った契約のお金の全額つまり、十億円を今、返還するようにあなたがたに求めます」


岡寺のぶよとリンダは、最悪の事態にギョッとした。


「まあ、返せないのは、分かっていますがね」


ドクターノバのせせら笑い。


ドクターノバは、岡寺のぶよや、リンダにに対して見下した態度だ。


「リンダ、あなたは、あなたに渡した十億円から五億円を堀米泰成ヤスに渡しましたね」


「私が、守銭奴というなら、あなたは、マヌケです」


堀米泰成ヤスは、本物の泥棒です。堀米泰成ヤスは、『龍の形見』を手に入れるという口実で、リンダさんから五億円の金を引き出し、挙げ句居所が分からなくなっています」


堀米泰成ヤスは、『龍の形見』を持ってると約束しましたが、堀米泰成ヤスは、ここに現れることないでしょう」


「私たちの調べでは、堀米泰成ヤスは、彼が預かった五億円の全額を、すでに、遊興飲食に使い果たしてしまったようすです。堀米泰成ヤスは、泥棒の上に極道なのです」


堀米泰成ヤスこそ、全く信用の置けない人物です。このように昔の友を平気で裏切ってしまう人物です」


「あなたたちは、本当に人を見る目がありません。」


「最初は、自分の命を買い戻すために、月陰熊五郎が、リンダから五億円せびりとったのです」


「それは、かけがえのない自分の子どもと引き換えにリンダが手に入れたと分かっているのに」


「月陰熊五郎のやり方は、容赦ないものでした」


岡寺のぶよが、エイリアン、ドクターノバの説教にむかついた。そして、キレた。


「そんな話、どうだっていいのよ! もう取り返しの付かない事よ!」


「それより、これからわたしたちをどうするつもり」


リンダも、エイリアンに少しもひるまなかった。


しかし、エイリアン、ドクターノバは、ドクターノバで説教を止めることはなかった」


「『平安クリーンスタッフ』とあなたがたは、私たちとの提携契約に違反した」


「また、もろもろの事情から、私たちは、ある決断を行うことにした。わたしたちの企業の利益を損なうような行為は、決してゆるされません。そのような行為にたいしては、その企業が属する国に対しても罰が与えられるのです」


岡寺のぶよとリンダとエイリアン、ドクターノバの緊張がピークに達した。


「あんたたち、戦争でもしかける気?」


ドクターノバは、答えた。


「最低、東京都には消えてもらいましょう!」


エイリアン、ドクターノバの説教は、結論に到達した。


「わたしはおまえたちの質問に答えた。こんどは、おまえたちが、私たちの質問に答える番だ。おまえたちから、聞いておきたいこと。それは、堀米泰成ヤスというやつのこと」


「知らないわね。私、『平安クリーンスタッフ』のことについてそこまでディープな知識を持っていないのよ」


エイリアン、ドクターノバの質問に、岡寺のぶよが答えた。


岡寺のぶよは、こうして、自分たちが堀米泰成ヤス仲間と言うことを自白した。


ドクターノバは、岡寺のぶよの話を逆手に取った。


「おまえたちが、知らないと言うことは、堀米泰成ヤスというヤツを弁護するヤツがいないと言うこと。ということは、堀米泰成ヤスが死刑になると言うこと」


堀米泰成ヤスさんを処刑して、その責任を私に押しつける気?」


リンダは、指摘した。


「……」


リンダは、反撃した、


「あなたをこの世界へ導いたのはだれ」


「……」


ドクターノバは答えなかった。




交渉決裂。リンダは、岡寺のぶよに目配せ、合図してその場を離れようとした。


ドクターノバの話に、かごの中のリンダの子ども、ノエル君は明らかに動揺しているように見えた。


「お母さん、俺を見捨てるのですか? 堀米泰成ヤスは、あなたが僕を売ったお金で『龍の形見』を買おうとしている。あなたは、また昔の仲間の月陰熊五郎のためにお金を使った。でも、僕のことは 見捨てていく」


ノエル君の言葉に、リンダは動揺した。


それが、岡寺のぶよにも見て取れた。


岡寺のぶよは、リンダをかばった。


「大人になれよ。もう、二十歳なんだろう。お母さんを理解してあげなよ」


岡寺のぶよは、タツノオトシゴに似たノエル君のことをたしなめた。


タツノオトシゴのの心にあるリンダへの怒りを静めるために岡寺のぶよが言った言葉は逆効果を生んでしまった。


ノエル君は、食い下がってきたのだ。


「お母さんは、残りのお金の五億円が今でも欲しいのか」


「欲しくはないけど、約束は守るべきでしょう」


リンダはきっぱりと答えた。


「しかし、それは残念だね。その五億円は、このドクターノバが持ち逃げしてしまおうと考えているよ」


「……」ドクターノバはたじろいだ。


「僕も、お母さんの五億円を持って行った堀米泰成ヤスゆるさない」


堀米泰成ヤスは、極道という心の迷路から永遠に抜け出ることはできない。僕には堀米泰成ヤスの未来が見えるんだ」


ドクターノバは、ノエル君の話を聞いてうなずいた。


「たしかに、ノエル君の占いはよく当たるようだね」


「ノエル君、これからは俺たちは仲間だ。これからもよろしく頼むよ」


堀米泰成ヤスは危険な男。狡賢ずるがしこい」


堀米泰成ヤスは、二十年前から『龍の形見』に異常なほどの関心を示した。やつは、手を尽くして『龍の形見』の設計図を手に入れようとした。そして、数日前に、ついに闇の技師に接触して、設計図を示し『龍の形見』の制作を依頼した。これ以上、堀米泰成ヤスを放って置くわけにはいかない。私は、やつを見つけしだい殺すよう命じるだろう」


両者のにらみ合いがあった。


そのあと、ドクターノバは、虫かごのノエル君を連れて、別室へ退いた。


ドクターノバは、退しりぞくときに、岡寺のぶよとリンダに言った。


「まあ、いい、ここでゆっくり、あたまをひやして、かんがえてみなさい」


      #       #


龍王の子、ノエル君が泣き止まないので、夜になると、ドクターノバの使いがリンダを呼びに来た。



それから、『龍の形見』の中、岡寺のぶよが、一人っきりになった。




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