表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/36

新釈「龍の形見」6

岡寺のぶよは、翌朝というか昼近くにはなっていたが、リンダと落ち合うために、タクシーに乗り、新宿に向かった。


段取りは、リンダがエイリアンと連絡を

取ってすでに決めてある。


岡寺のぶよは、新宿に行く。


新宿では、もリンダとリンダの息子が岡寺のぶよを待っている。


リンダの息子の、エイリアンとリンダとの間に生まれたハーフの息子で、名前は、ノエルと言うらしい。


また、新宿には、リンダの息子ノエルが、モグリの占い師をやっている会場があるらしい。


この新宿のリンダの息子のノエルの占いの会場に、約束の金の残り分五億円を持って、エイリアンも現れることになっている。


岡寺のぶよは、リンダに付き添い、エイリアンと会い、ちゃんとリンダが五億円受けとるのを見守るのが役目だ。


そして、リンダの息子のノエルが、エイリアンの国に帰るのを見送った後、リンダは、岡寺のぶよに五億円の中から充分な報酬を支払ってくれるだろう。


岡寺のぶよは、リンダから手渡される札束のことを思うとうっとりとした気持ちになって行った。



      #       #


岡寺のぶよは、新宿にいるリンダのところに向かうタクシーの中で、『龍の形見』について考えていた。   



そういえば、岡寺のぶよは、『龍の形見』について、昔、コーヒーパーラー『ライフ』のマスターにいつも話を聞いていた。


岡寺のぶよは、『龍の形見』の話が気に入っていたので、マスターに頼んで何回も、何回も『龍の形見』の話をしてもらっていた。


『龍の形見』というもの、それは、みかけはちょうど、子供のおもちゃのスノードームと少しも変わらないものである。


大きさも、手のひらにのりそうなスノードームと同じような大きさ。


しかし、『龍の形見』は不思議なことに、そのちっぽけな、ガラスの容器の中には広大な世界空間が存在しているのだ。


この『龍の形見』の中には、何千人という人間を収容できる空間が存在ししているということだそうだ。


そして、二十年前には『龍の形見』の中の広大な世界で、毎夜、格闘技の大会が開かれていたそうだ。


『龍の形見』の中には、闘技大会の開催のたびに、選手や観客として、何千人もの人間が集まったものだそうだ。


『龍の形見』に出入りするためには、この町のとある廃ビルの、とある扉が用いられたという。


そして、廃ビルの扉から入る『龍の形見』の中の闘技大会の会場では、毎日、生死をかけた闘いが行われていた。


この『龍の形見』には、廃ビルの扉という入り口はあったのだが、『龍の形見』には出口というものはなかった。


選手も、観衆も、試合が終わるまで熱狂し、そして、ふと気づくと、翌朝には自分の家で目が覚めるということであった。


さらに、試合に敗れて深く傷ついた選手でも、不運にも死んでしまった選手でも、翌朝には、何もなかったかのように無事に、傷一つ残らぬ体で自分の家で目覚めるということになっていたのだ。


そもそも、『龍の形見』などど言うものは初めから存在しないし、『龍の形見』の中で開かれた闘技大会などというものも、誰かが考え出した絵空事の夢物語だったという人間も世の中にはいるものだ。


しかし、何万人、いや何十万人もの人間が、同じ『龍の形見』という闘技場の夢を見るのであろうか。


実際、そういうたくさんの人が二十年前には『龍の形見』を体験していたのである。


      #       #


コーヒーパーラー「ライフ」のマスターから、岡寺のぶよが聞いた話は、だいたい次のようならものであった。


「この闘技大会には、みんな熱狂した物さ。『平安クリーンスタッフ』の前身『関東興行塚原組』の連中も若かったし、みんな血の気が多かった。塚原卜然、月陰熊五郎、堀米泰成というのが、『関東興行塚原組』代紋を背負って闘技大会に参加したものさ」


「闘技大会での塚原卜然、月陰熊五郎、堀米泰成ヤスの活躍は素晴らしかった。『龍の形見』の話はすぐに全国にまで知れ渡ることとなった。うわさを聞いて、全国からすごい選手がやってきた」


「なかには、エイリアンも、闘技大会に参加していたといううわさを聞いたな」


「エイリアンは、試合で闘うときなは、はひぐまのようにたくましかったのだが、普段は、小柄の生き物だったという話だ」


「ところで、ある日、不思議な男が店にやってきた」


「男は、わたしが頼みもしないのに、懐から『龍の形見』を取り出して見せてくれたのさ。『龍の形見』は、一見して普通のスノードームだった。しかし、その小さなスノードームの中には、何千人という観衆がいて、リングがあって、リングの中では、戦いが行われていたのさ」


「私は、その『龍の形見』のなかで行われている試合に見とれてしまった。ところで、男が『龍の形見』をしまおうとしたとき、男はあやまって、『龍の形見』を床に落としてしまった」


「男は、相当に体を害している様子だったので、とつぜん腕かきかなくなってしまったりしたのだろう」


「床で、砕け散った『龍の形見』は、こわれたおもちゃのガラスのスノードーム以上の物には見えなかった。『闘技大会もコレで終わりだ』と男はつぶやいた。実際に、それからは、この町から『龍の形見』も闘技大会もなくなってしまったというわけだ」




こんな風に、人生のまばゆい時代を振り返るように、マスターは岡寺のぶよに『龍の形見』のことをいつも話してくれたのだった。


岡寺のぶよは、『龍の形見』をコーヒーパーラー「ライフ」のマスターの前で壊してしまった謎の人物というのは、リンダの彼のエイリアンを連れ戻しに地球にやってきた、エイリアンの王様ではなかったのかと思っている。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ