新釈「龍の形見」
お猿のゴンくんの事件が、きっかけとなったのは間違いない!
占い師、岡寺のぶよのコーヒーパーラー「ライフ」通いが始まった。
岡寺のぶよは、コーヒーパーラー「ライフ」を訪れるたびごとに、コーヒーとナポリタンスパゲティを注文した。
岡寺のぶよは、ナポリタンスパゲティを食べる際には、粉チーズを十分かけ、タバスコをかけて食べた。
岡寺のぶよは、カウンターの席を取った。
岡寺のぶよは、マスターに塚原瑛太のことをいろいろ聞いた。
岡寺のぶよは、「平安クリーンスタッフ」についてもマスターにいろいろ聞いた。
岡寺のぶよが熱心にマスターに聞いたのは、今の「平安クリーンスタッフ」についてではない。「平安クリーンスタッフ」という会社になる以前のヤクザ一家の頃の話を聞きたがった。
岡寺のぶよは、「平安クリーンスタッフ」の前身のヤクザ一家の頃にあったいろんな物騒なエピソードについて聞きたがった。
岡寺のぶよは、このヤクザ一家の構成員であった塚原卜然や堀米泰成や月陰熊五郎などの人物を好んで話題に取り上げた。
塚原卜然や堀米泰成や月陰熊五郎という連中は、すでに引退していたり、一線から退いていたり、すでに死んでしまった連中である。
岡寺のぶよは、「平安クリーンスタッフ」の前身のヤクザ一家時代のことや、ヤクザ一家時代の頃のエピソードについても詳しかった。
岡寺のぶよは、このような知識を「平安クリーンスタッフ」の社員でもある若松春子から手に入れていたようだ。
とにかく、岡寺のぶよはこの頃、若松春子と頻繁に連絡を取り合って、しばしば買い物など一緒に行動しているようだ。
岡寺のぶよのこのような一連の行動は、岡寺のぶよが「平安クリーンスタッフ」や塚原瑛太、バンドマン ツヨシに抱いている強い復讐心が元になっているのだろうと、コーヒーパーラー「ライフ」のマスターなどは感じていた。
そんな訳で、岡寺のぶよの友情であり、一方、「平安クリーンスタッフ」の社員でもある若松春子は、岡寺のぶよが本当に、お猿ゴンくんの事件で恥をかかされた「平安クリーンスタッフ」の連中のことが憎いのか聞いてみた。
岡寺のぶよが、若松春子に返した答えは、あらかじめ若松春子が予想していたものとは、少し違っていた。
「それは、あの連中のことは、本当にむかつくわよ。でも、なにか復讐しようとか計画するほど私は、馬鹿じゃないわよ」
岡寺のぶよは、若松春子に笑って見せたのだが、すぐに真面目な顔になってこう付け加えた。
「私が、コーヒーパーラー『ライフ』のお店に来るとき深い霧が、道の向こうに建っている『平安クリーンスタッフ』にかかって見えるのよ。『平安クリーンスタッフ』は、いつも深い霧に覆われてみえるのよ。これってとても恐いことよ」




