初登場、岡寺のぶよ!2
ところで、、この事件について語る前に、どうしても、数日前に岡寺のぶよが体験した不思議な出来事について語っておく必要がある。
といっても、これについては、できるだけ手短に、話しておくにとどめるつもりであるが……。
それは、ある嵐の深夜、出来事であった。
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ずぶ濡れになって進むその生き物は、この世のものとは思えなかった。
あるとき、肉体があり、肉体のある生き物として、嵐の雨を浴びながら進んでいたかと思われる。
また、ふとすると、影のような存在にもなって、一挙にその生き物の存在感は希薄になったのである。
それは、岡寺のぶよには、この動物園のヌシが、自分の縄張りが他所ものに犯されたりはしてはいないか調べるために、ゆっくりとした巡回のようにも思えた。
この不思議な生き物を通って、始めある気配として、岡寺のぶよは捉えた。
東京マリーン公園を抜けようと歩いていた岡寺のぶよという占い師に察知された。
東京マリーン動物園は、東京マリーン公園の中核施設である。
東京マリーン公園の中には、大小いくつもの道が貫いて通っている。
その中で、東京マリーン動物園に接する道が公園を抜ける道として一番利用されていた。
確かに、この道は、広く、深夜でも明るく照明が照らされていた。
普通の日であれば、この道を通るのが一番安全で、妥当なのだ。
岡寺のぶよは、この安全で、妥当な道を通っていた。
岡寺のぶよは、仕事を終えて、帰る途中であった。
しかし、岡寺のぶよは、その夜は、不意に間違った道を選んだと感じた。
「この道は、広場や動物園に接している。そのせいか、雨風がきつすぎるわ」
時刻は、すでに深夜になっていた。
その晩は、嵐の夜だった。
強い雨や、風が岡寺のぶよに容赦なく直撃した。
しかし、なぜ岡寺のぶよは、その晩、その道を選んでしまったのか?
「今日もいつもの道を通りなさい!」
岡寺のぶよは、違う道を通ろうとも考えたのだ。
だか、そのときその道を通るように何者かに呼びかけられたからだ。
大事なことを、話しておかなければならない。
それは、岡寺のぶよという人物が、非常に神秘的な能力を持っていると言うことである。
岡寺のぶよは、何かこの世ならぬものの力と交信することが出来た。
岡寺のぶよは、自身の不思議な交信能力があるから、自分の占い師でいられる。そう、信じている。
岡寺のぶよは、もともと、不思議な力を持っていたので、自然とこの人物に、占い師という職業への道が開けたのだ。そう時々思い、密かに誇りに思うこともあった。
岡寺のぶよは、感情の起伏が非常に激しかった。
また、感情の起伏の激しさとつながることと思われるが、岡寺のぶよという占い師は、繊細すぎた。
そして、自分の占いに、本気で心が高ぶったり、落胆したりした。
それで、岡寺のぶよは、何かのデーモン(鬼神、魔神)によって、心が支配されてることもあった。
しばしば、岡寺のぶよは、人前でヒステリックな状態になった。
そう、周りの人間が思ってしまう時がしばしばあったのだ。
そのような感情の高ぶりが、岡寺のぶよの中にあった。
さらに、読者諸氏には頭に置いてもらっても良い事実として、普段は、この人物が、女性の心を持つ人物、岡寺のぶよとして通っていた事実である。
しかし、実は岡寺信宏として生まれていて、戸籍は男性と記載されている。
岡寺のぶよは、男でありながら、女性的な共鳴するする心を持っていた。
岡寺のぶよのこのような共鳴する心の特性は、これから取り上げるお猿のゴンの事件と少なからぬ関係があるように作者には思われるのだ。
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話を嵐の深夜に戻そう。
その時岡寺のぶよは、自分が遭遇した不思議な存在に対して、話しかけた。
「ねぇ、そこに誰かいらっしゃるの?」
このとき、岡寺のぶよは、不思議な存在が、岡寺のぶよが最近別れた彼氏かとも思ったのだ。
岡寺のぶよの彼氏は、ちょうどこのあたりまで、岡寺のぶよのことを迎えに来てくれたりすることもあったのだ。
「……」
岡寺のぶよの呼びかけに、その影は何も応答することはなかった。
そして、不思議な存在の気配は闇の中に消えていった。
そして、深夜の嵐の喧騒がふたたび岡寺のぶよを包んだ。




