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25日目 メスガキちゃんは見られたい

 給食の時間。

 理沙はフォークでトマトソースのペンネをつつきながら、千代花のハイテンショントークに付き合っていた。


「———保護者面談が終わった途端、急に新しい家庭教師をつけるってお母さまが。もうこれで5人目です」


 千代花の首がガクリとうな垂れた。

 それを聞いた理沙は不思議そうに首を傾げる。


「あれ、千代花って最近成績上がってなかった? これ以上、何の家庭教師をつけるのよ」

「それが児童倫理教育の専門家をつけるんですって。一体保護者面談で何の話を聞かされたんでしょうか」

「へえ……。その家庭教師の話、よく聞いておきなさいよ」


 なるほど。さすが代々の政治家一族だ。娘のことを良く分かっている。

 理沙は感心しながらスープを飲む。


「理沙ちゃんの保護者面談も終わってましたよね。ご両親のどちらがいらしたんですか?」

「ママだよ。パパ、昼間は割と役立たずだから」

「あら、お父様だったら是非お目にかかりたかったですわ」


 意味ありげな千代花の一言に、スープを掬う手が止まる。


「……パパに? なんで?」

「だって理沙ちゃんのお父様って若くて素敵じゃないですか」

「そお? 確かにうちのパパカッコいいけど。もう45だよ」

「あら、とてもそんな年には見えませんでしたわ。30半ばくらいにしか」

「若作りだよ。あの年になってもモテたいんだよ」


 口ではそんなことを言いつつも、思わず口元が緩む。

 自分の父親を褒められて悪い気はしない。それが例え千代花でも———


「……あれ。千代花、うちのパパと会ったことあったっけ」


 千代花も理沙を真似るようにスプーンを手に取った。


「……昨日、私もお母様と映画を見に行ってたんです」

「え? 声かけてくれれば良かったのに」


 千代花はヒラリヒラリとスープを口に運びながら、上目遣いに理沙を見る。


「理沙ちゃん、お父様とラブラブだったじゃないですか。お邪魔しちゃ悪いなって思って」

「……そんなにラブラブだった?」

「ええ、まるで恋人同士みたいでした」

「えー、そうかなー♡ 恋人同士のように見えちゃった?」


 理沙は嬉しそうに身体をぐねらせる。


「あの哀愁漂う、少しくたびれた感じ……捨てられた子犬のようで。私の周りにはいないタイプで惹かれます」

「そ、そうかな? あのね、あの人実は———」


 恐る恐る何かを言い出そうとした理沙の言葉に被せるように、千代花は興奮気味に身体を乗り出す。


「———ねえ、理沙ちゃん。お父様とお母様は仲良くしてらっしゃるのかしら?」

「……へ? まあ、普通には仲いいけど」


 質問の意図を測りかねたのだろう。キョトンとする理沙に千代花は意味ありげな視線を向ける。


「お母様って、夫が他の女性と仲良くしてても気になさらないタイプ?」

「……その怖い質問、答える必要ある?」

「ちなみに私はそのタイプです」

「その情報もいらなかったわ」


 千代花がこのモードに入ると手に負えない。専門家の効果が出るまでは、いかに話を逸らして受け流すかが肝要だ。


「それはそうと、理沙ちゃんさっき何か言いかけてませんでした? あの人……って?」

「……何でもないし」


 理沙はツイッと目を逸らす。

 千代花がまだも口を開こうとした瞬間、見慣れたちっこい人影が。


「まーた二人で悪巧み。クラス委員として見逃せ———」

「立夏、いいから座ったら。他に席、空いてなかったんでしょ?」

「……うん」


 立夏は素直にうなずくと、千代花の隣にちょこんと座る。


「最初からここに来ればよかったのに。一緒にご飯くらい、いつでも構わないよ」

「ホント? ……って。べ、別に友達いないわけじゃないんだからね! たまにはあんた達と一緒に食べるのもいいかなって」


 照れ隠しに膨らました立夏のホッペを、千代花がつつく。


「あら、立夏ちゃんと私達、お友達じゃないですか。ね、理沙ちゃん?」

「ま、友達で構わないけど」

「ですよね。はい、あーん♡」

「ちょ、ちょっと、ご飯くらい自分で食べられ———むぐっ!」


 千代花の母性本能に似た何かをくすぐったのだろう。

 立夏はすっかり千代花のおもちゃだ。


 皿の中身をあらかた空にしたころ、ようやく千代花の気が済んだのか。

 解放された立夏はハンカチで口を拭く。


「……ねえ。いつもあんた達、ホントに何の話してるのよ。聞こえてくる単語が一々怖いんだけど」

「別に普通の会話だよ。昨日例の映画行ったから、その話とか」

「え、行ったんだ。面白かった?」


 思わず腰を浮かせる立夏。


「あれ、立夏も好きなんだ」

「……別に。ただ流行ってるから一応、話合わせてあげたの」

「でもあんたのハンカチ、緑と黒の市松模様じゃない」

「え? 気付かなかったわ。こんなのどこの家にでもあるでしょう?」

「……ないわよそんなの」


 理沙のツッコミを無視すると決めたのか。立夏はコホンと咳払い。


「そんな話でごまかされないわ。どうせ二人して、非倫理的な話をしていたのでしょう? クラス委員としてちゃんと監視させて———」

「あら、当てられてしまいましたわ」


 千代花はクスクスと笑う。


「……へ? 本当にそんな話を」

「ええ。配偶者のいる殿方と、どのようにお近づきになるかという話を。ねえ、理沙ちゃん?」

「その話、してたの千代花だけよ?」


 理沙と千代花。二人の顔を見比べながら小さく震えていた立夏の髪を、千代花が指先で掬う。 


「立夏ちゃんも将来きっと役に立つお話ですわ。一緒にお話を———」


 立夏はパンと手を合わせると、慌てた様子で立ち上がった。


「わ、私、ごちそうさまです! じゃ、じゃあまたね!」

「あら残念。またご一緒しましょうね」


 無言でこくこく頷きながら、小走りで立ち去る立夏。

 理沙は長い溜息をつく。


「ねえ、理沙ちゃん」

「なに?」

「私のこと……ママって呼んでみる?」


 理沙は無言で給食を食べ終わると、手を合わせてごちそうさまをする。



「……千代花。お願いだからあなたと友達続けさせて?」




やあ (´・ω・`)


ようこそ、メスガキハウスへ。

今日のサービスは白タイツだ。


日焼け褐色娘が履いてたんだけど、好きな人の前で汗の匂いが気になって、脱いだら日焼け跡がくっきり残っていてやっぱり恥ずかしい……

そんな複雑な乙女心が詰まっているんだ。


うん、そしてまたアラサーさんは出てこないんだ。

どうやらお友達に見られたらしいけど、メスガキちゃんは危険を察して胡麻化してくれたらしい。首の皮一枚繋がったようだね。


でも、初めて千代花ちゃんの倒錯した嗜好を見たとき、君はきっと自らの身体に、力強いわからせの波動が充填されていくのを感じてくれたと思う。

殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい、そう思って彼女達は君の前に姿を現したのだ。


じゃあ、バナー下からの応援・評価で、メスガキちゃんもお友達もまとめてわからせてもらおうか。

★~ ⊂( ´・ω・`) 



恒例のメスガキちゃんの学園生活をお届けしました。

立夏ちゃんは二人とお友達になりたかったようです。お友達と言われて嬉しい反面、二人の大人の会話にちょっとドキドキしちゃってます。可愛いですね。


明日の更新では、アラサーさんがいつも通りにメスガキちゃんを分からせます。

ブクマ、バナー下からの応援・評価で、メスガキちゃん’Sに愛の手をお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] 白タイツもぐもぐ
[良い点] 田中さんには、少し変わった相手がいいと思います。 [一言] 純粋ないい子を連れて行くと、浄化されて天に召されそうですから。
[良い点] 三者三様…良きかな…よき…よき? …千代花さんは…残念ですが(黙って首を横に振る) [一言] 千代花さんは確かにちょっと分からせたいかもしれない…。 立夏さんはそのままの貴女でいて下さい…
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