3日目 体操服と防犯ブザー
「どうした、今日は体育祭でもあったのか?」
言って粒ガムをまとめて二つ、口に放り込む。
俺の視線を感じたか、小娘はクルリとその場で回って見せる。
「あれ、イヤらしい視線を感じたんだけど。この格好に目が離せないとか?」
「大丈夫、気のせいだ。Googleのバナー絵が変わってたら一応見るだろ?」
そう、今日の小娘の格好はちょっと違う。何故か体操服姿なのだ。
「おじさんロリコンだから、こういうの好きでしょ♡ 校外清掃終わってから、わざわざ着替えずに来てあげたの」
「ロリコンじゃないし。女子更衣室使っていいから着替えろって。それと俺、ロリコンじゃないからな」
大事なことなので二回言った。
そんな俺の社会的不安を知ってか知らずか、小娘はメスガキムーブで俺を見上げてくる。
「だって、おじさんの頃ってブルマだったんでしょ? スパッツとか新鮮で興奮してるくせに」
「俺をいくつだと思ってんだ。ブルマなんて生で見たこと無いぞ」
「そう? 校外清掃の時、めっちゃ色んなおじさんに話しかけられたんだけど。みんなブルマトークを仕掛けてきたよ」
「……お前の校区、大丈夫か? つーか俺、そいつらと同じ扱い?」
「心配してくれてるんだ。それとも嫉妬? キモ♡」
何故か上機嫌でフラフラ揺れている小娘。
……しかしなんなんだこいつの格好。
体操服とランドセルという組み合わせは、地味に見てはいけないものを見てる感が強い。
俺はロリコンではないが、その辺のタブー感は社会人として持ち合わせているのだ。
あくまでも社会人として。
「普通の大人はガキの体操服見てもなんとも思わねえって。だから話しかけてくるおっさんとか、危ないから近付くなよ?」
「へーえ、あたしの格好に変なこと考える人もいるんだ」
メスガキは生意気そうな目で俺を見上げる。
「じゃあ、あんたも若いころ思い出してちょっと変な気分になっちゃったりとか? きゃー、汗の匂いとかかがれちゃう~♡」
「汗臭いというより、むしろちょっとゴミ臭いかな」
「え」
「そんだけ一生懸命、頑張ったってことだろ? 偉いじゃん」
「……うん。頑張ったし」
急にテンションが下がる小娘。あ、なんか地雷だったのか。
「うんうん、偉いぞ。お前、結構真面目だもんな」
「……男子、ふざけてばかりだから注意したら、ごみ投げられた」
「そうか。ゴミ臭いとか言って悪かったな」
思わず頭を撫でてやる。
反発されるかと思いきや、撫でられるがままの小娘。
「大丈夫、その辺のおじさんが男子を叱ってくれたから」
「え? おう、そうか」
……なんか話が違ってきた。
この界隈、そんな危険地帯なのか。
「ちなみにお前、防犯ブザーとか持ってる?」
何気ない俺の質問に、メスガキの目がキラリと光る。
「あれ、持ってなかったらどうするつもりなの? 頭撫でただけじゃ我慢できなくなっちゃった~?」
こいつ、早くも回復しやがった。
もうちょっと凹んでれば良かったのに。
「あのな。見知らぬ女子に話しかけるおじさんには気をつけろってことだ。100人の内、1人変質者が混じってたら、それだけで危険なんだぞ?」
「ふう~ん。あたしを心配してるんだ」
小娘は何故かやたら嬉しそうにニヤニヤ顔だ。
ランドセルのベルトをグイと前に突き出す。
「ほら、いつもランドセルに付けてるよ」
「へえ、最近のは目立たないんだな。それ、どうやって鳴らすんだ?」
「それを知ってどうするつもり? あたし、なにされちゃうのかな~♡」
「いや、そこまで知りたいわけじゃないし。会話のキャッチボールって知ってるか?」
相変わらずめんどくさいな、こいつ。
とっとと話を切り上げようとしていると、
ビーッ、ビーッ、ビーッ、ビーッ!
「あ」
突如鳴り響くブザー音。
慌てるメスガキ。
廊下から足音が近付いてくる。
「お前、それどうやって止めるんだ?」
「……分かんない」
———この後、二人そろってビルの警備員に事情聴取をされるのだが、それはまた別の話である。
本日の分からせ:分からせられ……50:50
アラサーさん、不覚にもメスガキさんにちょっとほだされたかもしれません。保護者的な意味で。
皆さんも私のように同僚の娘さんに挨拶をしただけで防犯ブザーを握られないよう気をつけて下さい。
次回、メスガキさんの可愛いトコが出たのをアラサーさんがスルーします。
そしてこの新連載、成功は皆様のご支援にかかっています。マジかかっています。お願いします。
メスガキさんをわからせたい方は、バナー下から★~★★★★★をクリックして頂き、是非、わからせてやって下さい。
わからせられたい人も、メスガキさんに★マークをお捧げ頂ければ幸いです。きっと同じ部屋で着替えてるくせに、チラ見したら半裸で散々なじってくれます。
ちなみに私は下着よりも肩だけ見えるのが好き派です。