18日目 百合の花は手折らせない
穏やかな昼下がり。
風もなく、学校の中庭には暖かな陽の光が降り注ぐ。
ベンチに腰掛けた二人の女生徒。
理沙と千代花は日向ぼっこをしながら、行きかう生徒達を眺めている。
会話が途切れた瞬間、理沙はあたりの様子を伺うと千代花に小声で話しかける。
「ねえ、千代花。前に言ってた雑誌だけど……今日は持ってる?」
「雑誌? プチ♡ティーンなら、家にありますけど。どうかしましたか?」
理沙は照れたように目を逸らす。
「大和撫子の色気で彼を……ってやつ。す、少しくらい読んでみようかなーって」
「あらあら。嬉しいです、理沙ちゃんも興味を持ってくれたんですね♡」
「ま、まあ、何事も勉強よね。そして千代花、ちょっと近い」
千代花は自分を押しのけようとする理沙の手を掴むと、更にグイグイと身を寄せる。
「じゃあ放課後、裏門に車を付けさせますわ。横浜の方に素敵なホテルがありますから、一緒に読みましょう。早速最上階を手配しますね」
「いや、学校に持ってきてくれればいいから。あんた、そうやってすぐ部屋に連れ込もうとするのやめなさいよね」
イチャイチャもみ合っている二人に小さな影が差し掛かる。
「二人とも相変わらずね。今日はどんな悪だくみ?」
腕組みをして二人の前の仁王立ちをしているのは、森立夏。見た目はちっこいが、クラス委員だ。
千代花はようやく理沙から身体を離すと、乱れた髪を撫でつける。
「私達は楽しくお話ししていただけですよ。立夏さんも一緒にどうです?」
「あんた達、いつも変な話ばかりしてるじゃない。いいこと? 高千穂女学院は次世代を担う女性を育成する名門校なのよ。私達はこの男社会における目に見えぬ差別と———」
まだも話し続ける立夏に向かって、理沙がチョイチョイと手招きする。
「それはそうと立夏。座らないの?」
「……座るけど」
理沙の勧めに、素直にベンチに座る立夏。
「……で、なんで私達の間に座るのよ」
「二人の不埒な企てを聞き漏らさないようによ。クラス委員として見逃せないもの」
立夏は小さな足を偉そうに組んで見せる。
邪魔そうに眉をしかめる理沙と裏腹、千代花は優しく微笑む。
「立夏さん、私達は不埒な話なんてしてませんわ。恋バナをしてただけですもの」
「こ、恋バナっ?!」
思わず腰を浮かせようとした立夏の肩を、千代花は素早く押さえつける。
「ええ、意中の殿方をどうやって落とそうか———ってお話しです」
「わ、私達はまだ小学生よ!? そんなの駄目に決まってるじゃない!」
「あら。でも先日の校外清掃。立夏さん、男子校の生徒と楽しそうにお話ししてませんでしたか……?」
「そ、それはクラス委員として、向こうの委員と話す必要があったから!」
立夏は小さな拳をグッと握り締める。
「それに、男子なんてあれよ! 下品で乱暴だし! 女子は女子同士で仲良くするのが一番なの」
立夏の不用意な発言に、理沙は思わず天を仰ぐ。
千代花の瞳がきらりと光る。
「あーあ、立夏。あんた余計なこと言って」
「え? 理沙、それってどういう———」
「あら……立夏さん、女の子の方がお好きなんですね」
「……はい?」
立夏の握り締めた拳を、千代花の華奢な掌が包み込む。
「え? あの」
「ですよね。女の子って、柔らかくていい匂いがしますもの」
「は? 千代花、匂いとか気持ち悪いこと———」
「ちっとも気持ち悪くなんてありませんわ。ほら、立夏ちゃんの腕もとっても柔らかくていい気持ち」
「ちょっ、ちょっとそんなとこ触らないでよ!」
手を引こうとした動きに合わせて、千代花は立夏の小さな身体をベンチに押し付ける。
「ちょちょちょ! 千代花!」
「立夏さんも触っていいんですよ。私の一番柔らかいところ……探してみますか?」
「いや……いい」
涙目の立夏はフルフルと首を振る。
溜息一つ。理沙がパンパンと手を叩く。
「はいはい、そこまで。千代花もあんまりふざけない」
「あら、私ふざけてなんて———」
「お・ふ・ざ・け、よね!」
「はい、そうですわ。理沙ちゃんの怒った顔大好き♡」
友人の『オイタ』には慣れている。
理沙は立夏の体を起こしてやると、指で目元を拭ってやる。
「ほら、あんたもしっかりなさい。冗談にあんまり本気になってると身が持たないわよ」
「じょ、冗談ですって? だ、だってこの子、私のスカートに!」
「冗談……じゃない方が良かった?」
立夏はまたも涙目になると、フルフルと首を振る。
……まったく、千代花にも困ったものだ。
理沙が咎めるような視線を向けると、千代花は身を震わせながら瞳を潤ませる。
「理沙ちゃんのその目……大好物です♡」
やあ (´・ω・`)
ようこそ、メスガキハウスへ。
このニーソックスはサービス……おや、今履いてるのは自前かい?
うん、またアラサーさんは蚊帳の外なんだ。済まない。
美しい百合の園に男は立ち入ることは許されないんだ。
でも、初めて生意気クラス委員長を見たとき、君はきっと言葉では言い表せない
だ「わからせ欲」みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい、そう思って彼女達は君の前に姿を現したのだ。
じゃあ、バナー下からの応援・評価で、メスガキちゃんもクラス委員長もまとめてわからせてもらおうか。
★~ ⊂( ´・ω・`)
またまたメスガキちゃんの学園生活をお届けしました。
クラス委員の立夏ちゃんは相当チョロ雑魚いです。千代花ちゃんの敵ではないので、やり過ぎないように理沙ちゃんがいつも見張っています。
明日の更新では、アラサーさんがいつも通りにメスガキちゃんを分からせます。
ブクマ、バナー下からの応援・評価で、メスガキちゃん’Sに愛の手をお願いします!




