表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/63

11日目 給食残酷物語

今晩も感謝の気持ちで11.5日目、投稿いたします!

 非常階段も夕方になるとすっかり冷える。

 俺は冷め始めた缶コーヒーをあおると、メスガキに小袋を差し出す。


「これ貰ったんだけど、お前いるか?」

「ん、なにこれ」


 小袋を受け取ったメスガキは難しそうな顔でそれを見る。


「ミルメーク……?」

「ああ、なんか箱買いした奴が周りに配っててさ。俺、家では牛乳とか飲まないし」

「これ溶かすと牛乳になるの? 脱脂粉乳てやつ?」

「違うって。牛乳に溶かすと、ココア味とかになるんだよ。給食に出ないのか?」

「うちの給食、契約のレストランが作ってるからこういうのは無いかな。基本、手作りだし」


 契約のレストラン……?

 給食の話をしたはずが、なぜそんな単語が返ってくるのか。


「給食って市の給食センターで作ってるんじゃないのか?」

「おじさんの地元の事情は知らんし。あれでしょ。給食のおばちゃんがいるんでしょ? テレビで見た」

「お前の所にもいるだろ……いるよな……?」

「割烹着とか着てないし。レストランの人、カフェの店員さんみたいな格好してるよ」


 給食というより、それもうカフェじゃん。金持ちの小学生、そんな昼飯食ってるのか。


「待てよ。じゃあソフト麺とか出てこないのか? 一度くらい食っとけよ」

「ソフト麺? 麺ってそもそも柔らかいでしょ。なに、脱アルデンテってこと?」

「それとは違くて。伸びてやわやわのスパゲッティとうどんの合いの子みたいな奴で……トマト味の良く分からないスープとかでほぐしながら食べる……そんな感じの食い物だ」

「話聞いた限りでは全然美味しそうに思えないんだけど。おじさんたちの時代には美味しかったの?」

「いや、当時からそんなに美味しくなかった。あれが好きって奴、聞いたこと無いし」

「……なんでそんなもの、あたしに食べさせたがるのよ」


 だってあの不思議な食べ物、次の世代にも伝えたいじゃん。 


「じゃあ揚げパンなんて出てこないよな」

「あ、それなら漫画で読んだことある! あれって何、カレーパンみたいなの?」

「んー、ちょっと違うかな。コッペパンを揚げて、甘いココアパウダーとかをまぶしてあるんだ」


 そういや、コッペパンって揚げパン以外で食ったこと無いな。

 スーパーにあるのもバターロールだし。


「なんかココア率高くない? おじさんの時代、甘いのってそれしかなかったの?」

「馬鹿言え。ココアの他にもきな粉とか黒糖味とか、洒落た味は沢山あるんだぞ」

「……ごめん、素でジェネレーションギャップ感じてるんだけど。キャラメルとかメイプルとかなかったの?」

「キャラメルって歯の詰め物とか取れるし。学校ではお菓子出ないだろ?」


 何気ない俺の言葉に、メスガキは憐れむような視線を向けてくる。


「……最近はキャラメルはお菓子よりも味付けの一つよ。おじさんの頃はあれでしょ。玩具とか無い時代だから、おまけ付きのキャラメルが流行ってたんでしょ」

「それ、どちらかと言うと昭和だって。俺はこう見えて平成生まれだぜ」

「20世紀人は全部一緒よ」


 俺のドヤリを一蹴するメスガキ。

 ……これは旗色が悪い。俺は話題を微妙にずらす。


「そもそもお前んとこの給食、今日は何が出て来たんだ」

「なんだっけ。スズキのポアレに秋野菜添えた奴と、そら豆のポタージュスープ。パプリカと鶏肉のトマトソース煮と、全粒粉パンにデザートだったかな。あと牛乳」


 そんなんでも牛乳は付くんだな。

 しかし金持ちの給食ってそんなんなのか。


「俺の昼飯、カップ麺とおにぎりだったんだけど」

「知らないわよ。開放日にうちの学校、食べにくる?」


 ……開放日。ちょっと気になるな。

 小中高と公立だった俺にとっては異世界も同然だ。


「でも何の立場で行くんだよ。父親の会社の従業員?」

「んー、お兄さんは無理あるし親戚のおじさんかな。ちょっと練習しよっか?」

「しないし行かないぞ? 俺、実際にはフリーのおっさんだからな。おっさん違うけど」

「えー、来てくれないなんて、あたし寂しいなー……お・じ・さ・ま♡」


 メスガキはからかうように俺の腕を指先でなぞってくる。

 どこでそんなの覚えた。


「やめなさい。子供がそんなことしちゃいけません」

「だって、パパにあんたのことよろしく頼むって言われたし♡」

「逆だろ。こら、腕にしがみ付くなって」

「無邪気な子供のじゃれつきよ。あれ~、ひょっとして意識しちゃってる? パパにあたしを下さいとか言っちゃったりして♡ どーしよっかなー♡」

「だからからかうなって。ほら、今度揚げパン買ってきてやるから放せって」

「ホント? じゃあ、あたしココア味!」


 なんかやたら喰いつきがいいぞ。

 金持ち学校の小娘も、漫画で見たB級グルメが気になるということか。


「任せとけ。ソフト麺もいるか?」


 俺のサービス発言に、メスガキはすまし顔で首を横に振る。



「それはいらない」

 本日の分からせ:分からせられ……50:50


 アラサーさん、年代差以上に貧富の差を思い知らされました。

 次回、アラサーさん、メスガキちゃんの恥ずかしいとこ見ちゃいます。


 そして、ブクマやバナー下からの★~★★★★★で、メスガキちゃんを程よく分からせてくれる“メスガキわからせ屋”の皆様を募集しております。

 我こそはと思う方は、メスガキちゃんを熱い眼差しでわからせてやってください。


 わからせられたい人も、メスガキちゃんに★マークをお捧げ頂ければ幸いです。きっと、メスガキちゃんが「人参キラーイ♡ はい、あーん♡」と言って、食べかけの野菜をあなたに食べさせてくれます。

 ちなみに私も、ご飯を食べるだけで「残さず食べられたね、えらいえらい♡」とメスガキちゃんに褒められる世界に転生したいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ミルメークめちゃくちゃ懐かしいなぁ そこそこ好きだったけど祭典くらいでしか売ってる場所見なくてレア物だった 神奈川ではソフト麺ありましたよ!(10台後半感) あと印象的なのはアルファベットス…
[一言] 90年代半ばの神奈川の小学校では、すでにソフト麺もミルメークもなかったんだよ…… 揚げパンは年1くらいで半冷凍のワインゼリーがごちそうだった。 あとたまにサンマーメンが味噌汁椀くらいの大きさ…
[一言] すみません、ソフト麺てなんですか?(24歳)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ