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9日目 恋占い

「それでさ。佐久良って子が、授業中にスマホやってるの見付かって、先生切れちゃってさ」

「ふうん」


 夕方の非常階段。

 並んでスマホをいじりながら、例のメスガキの相手である。


「そりゃ大変だな」


 話半分、俺はスマホでAmazonのセールを確認する。

 こないだ駅のホームに落としたワイヤレスイヤホンの代わりを探しているのだ。


「佐久良も止めときゃいいのに、しらばっくれようとするから———」

「うんうん、大変だ大変だ」


 メスガキを適当にあしらいながら、俺は画面を送っていく。

 えーと、ベストセラー1位のイヤホンは……


『令和2年進化型、有線のイヤホンで動きが制限されるあなたの問題を解決、人間工学のデザインで耳から外しちゃったりしません。故障が発生した場合弊社アフターサービスまでのメールで大丈夫———』


 ……何だか知らんメーカーだが、ランキング1位でタイムセールで80%オフだし。これにしようかな……。


「ちょっと、話聞いてる!?」


 どしん、と肩をぶつけて来るメスガキ。

 思わず親指が注文確定ボタンを押す。


「あ! なんか注文しちまったぞ」

「あんた、あたしの話聞いてないでしょ」


 メスガキは膨れっ面。口を尖らせて俺を睨んでくる。


「聞いてるって。学校があれで、同級生がそれなんだろ?」

「あれとかそれとかばっか。やっぱ聞いて無かったんじゃん」

「おいおい、大人になると二つ以上の単語を一度に把握できなくなるんだって。言葉だってすぐに出てこないし」

「それ老化だし。いい施設紹介してあげようか?」


 畜生、微妙に反論できない。

 あ。ヘッドホン、納品まで1週間もかかるじゃないか。しかも中国からの発送だし。


「そういや、そもそもお前の小学校ってスマホOKなのか?」

「授業中さえ電源切ってれば大丈夫よ。今どき、スマホ持ってない小学生なんていないって」


 こいつの周りはそうかも知らんが、普通は中学か高校にあがってからじゃないだろうか。

 ……しかし、こいつとは約20年の差があるのだ。今どきはそうかもしらん。


「俺の学校はガラケーオンリーで、しかも日中は職員室に預けるルールだったな」

「そんな平成ルール知らないし」

「お前も平成生まれだろ」


 しばらくは100均のイヤホンでも使うとするか。

 スマホをポケットに滑り込ませると、横目でメスガキの手元をチラ見。


「お前さっきからなにやってんだ?」

「ふ~ん。おじさん、あたしのことそんな気になるんだ?」


 メスガキはスマホの画面を隠しつつ、煽るように俺を見る。

 そうでもないが、ここは話を合わせてやろう。


「気になる気になる。で、なんか面白い物でもあったか」

「やっぱおじさん、あたしのこと好き過ぎだね♡ あのね、いま学校で占いアプリが流行ってるの」


 占いか。女子供ってそう言うの好きだよな。

 

「俺の子供の頃も流行ったな。動物占いとか」

「そんな古いの知らんし。大人になったらどんな仕事に就くとか、推定年収とか、自分の将来を占ってくれるアプリなの」

「……最近の子供、渋いの好きなんだな。」


 てっきり恋占いとか、その辺の奴かと思った。


「だから……おじさんの生年月日を教えなさいよ」

「なんで?」

「だ、だから、おじさんの向いてる仕事や将来の展望をアプリで占ってあげるってば!」

「……俺、仕事就いてるし、割ともうリアルな将来中だぜ?」


 自分で言ってて少し切なくなる。

 小娘と同い年の頃の俺に、お前は将来ブラック企業で毎日、小5のメスガキに付きまとわれて過ごすんだ———と告げたらグレるんじゃなかろうか。


「なんで生年月日が必要なんだよ。適した公共の転職サービスとか教えてくれるのか?」

「な、なんでもいいから教えなさいよ。けち臭いわね」


 下手に隠して総務に聞きに行かれても困る。素直に教えると、メスガキはポチポチとスマホの画面を叩く。


「ふうん、もう少しで誕生日なのね。それとあんたのお父さんとお母さんの名前は?」

「達郎と美代子———って、その情報いるか?」

「当たり前でしょ。あたし、その辺しっかりしてるし」

「……何の話だ?」


 ホントに占いか? 明日辺り、ハロワから電話かかってきたりしないだろうな。

 流石に怖くなって画面を見ようとするが、微妙にガードされている。


 しばらくスマホをいじっていたメスガキは、突然小さく歓声を上げる。


「……93か。中々じゃん」

「93? 何がだよ」


 しかもなんでそんなにニヤけてんだ。


「知らんし。小学生のスマホ覗こうとかキモーい」


 ……こいつ、上司公認になったからって少しばかり調子に乗ってんじゃなかろうな。

 その内、すげえ酸っぱいガムとか食わせてやる。


「で、俺の将来はどうなった」

「将来? あんたもう将来でしょ。するなら老後の心配しなさいよ」


 なにこの突然のディス。


「だから将来を占うアプリなんだろ? なんて出たか言えって」

「ん? えーと、婿養子になって馬車馬のように働けって出てるわ。結構いいこと言うわね、このアプリ」


 なにその具体的で、ふんわりした地獄は。


「俺の将来、いいことなしじゃん」

「婿養子だって悪いことばっかじゃないって。なにしろ相性93%だし♡」

「……相性? なにそれ」


 メスガキが突然びくりと震える。

 そしてなぜか顔ばかりかうなじまで赤くして、足をモジモジし始める。


「えーと、その……」

「良く分からんけど、将来にも相性ってあるのか?」

「そ、そうよ! 相性悪かったら死ぬし!」


 相性怖い。


「お前、本当に将来占いしてるのか? まさか、俺の個人情報を悪用してんじゃないだろな」


 スマホの画面が見えそうだ。

 思わず首を伸ばすと、メスガキが小さい掌で俺の目を隠そうとしてくる。


「覗き見とかキモっ! キモいんですけどー!」

「こら、目に指入るって」

「知らんし! あたし忙しいからもう行くし!」

「ああ、気を付けて帰れよ」


 最初の上機嫌はどこへやら。

 顔色をころころ変えながら、建物に戻るメスガキ。


 ……これだから子供は訳分からん。

 スマホを取り出した俺は、新着メールを見て思わずため息をつく。



「うっわ……発送、2週間後に伸びてるじゃん……」

 本日のわからせ:わからせられ……70:30


 アラサーさん、恋は遠い日の花火ではないのです。(古い)

 次回、アラサーさん、メスガキちゃんに狙われます。


 そしてこの連載を見つけてくださった紳士淑女の皆様にお願いです。

 この新連載の行く末は皆様のご支援とわからせ力に掛かっています。

 メスガキさんを存分にわからせたい方は、バナー下から★~★★★★★にて、わからせ星を光らせてください! お願いします!


 そして、わからせられたい人も、メスガキさんに★マークをお捧げ頂ければ幸いです。きっと、相性100%が出るまで『100%じゃないなんてありえないんですけどー』と愚痴られながら、恋占いに付き合わされます。

 ちなみに私は自分自身と占ったら相性40%でした。微妙な数字です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 相性バッチリじゃないですか! 大丈夫、あと7年待てばいいからね! [気になる点] 7年待てば…アラサーさんじゃなくなるだと?
[一言] すぐキャンセルしろw
[良い点] 恋占いの相性に、年の差は関係ないですからね。 [一言] 田中さん、婿養子がいいですよ。
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