憧れの高校生活①
初書き。
ゆるゆると更新します。
一期一会。
この四字熟語はよく出来たものだと改めて思う。
一生に一度あるかないかの運命的な出会い、奇跡的な巡り合わせ、体良く言えばなんと綺麗な言葉か。
この世に生まれ落ち、家族間やご近所付き合い、学校で出会ったりや仕事上での付き合いもあるだろう。
人によってはその出会い全てが良いものではないかもしれないし、人付き合いにはそこまで乗り気ではなかったこの俺、睦月一夜もこの言葉に感銘を受けたほどだ。
出会った人と時には笑い、時には泣き、時には喧嘩だってしたがこのどれもが人生においてとても大切なことであり、一つ一つの行動で人間の感情の変化が楽しめる。
人間関係とはなんとめんどくさく、なんと素晴らしきことか。
中学を卒業し、慣れ親んだ友人達とも離れ、新たな生活に何が待っているのか。
その時まではこの春から通う星園高校で。
そう、一ヶ月前のその時までは…
「おい、一夜よ。何を呆けている。貴様も話し合いに参加せんか」
声を掛けられる。
今声を掛けてきたのは弥生三空という女子で、ぼーっとしてて会話を聞いていない俺を見て少々機嫌を悪くしているようだ。
「はいはい、ごめんなさいごめんなさい」
「はい、は一回だと親から教わらなかったか」
「今そこ気にする?それよかいまなんの話してたっけ?」
適当にあしらい、話を進める。
あしらわれたことに不満げな三空だが、話を戻すことにしてくれた。
「いますぐにその腐り切った性根を叩き直してやりたいところだが、まあいい。いま我々は今後の活動について話し合ってるところでな。ある程度の意見が出たから決を取ろうと思うのだ」
どうやら話し合いは結構進んでいたらしい。
「それじゃ決を取る前にどんな意見が出たか聞かせてよ」
「仕方ないな。それでは心して聞くがいい」
なんで上から目線なんだろうか。
話し合いに参加していなかった俺も俺だが、どんな内容だったかは聞いてもいいじゃんね。
「まず一つ目がリア充撲滅運動の募金ボランティア活動だ」
「今なんて言った?」
あれ、耳が遠くなったかな。
「だから、リア充撲滅運動の募金ボランティア活動だと言っておろうに」
聞き間違いじゃなかったよ!?
「誰だそんな意見出したの!」
「俺俺!その案は俺が出したやつ!」
高らかに手を上げ、大きな声で応えたのは霜月十一郎。
どこにでもいる、ただのバカである。
「お前か霜月!またとんちんかんな案出しやがって!」
こいつ、霜月はいつもそうだ。
怖いものがないのか、俺達がやらないことを平然とやってのける。
だがそこには痺れもしないし憧れもしない。
「別にいいじゃねえか!少なくとも話し合いに参加しないお前よりはマシだ!」
ぐううう!バカのくせに痛いところ突きやがる!
「まあ、霜月の言うことも尤もだが、私もその意見には賛成しかねる」
「なんでだよ!?ボランティア活動いいじゃんかよ!」
三空の言葉に霜月も反論する。
でもどう考えてもおかしいのは俺だけではないはずだ。
「霜月ちょっとうるさい。少し静かにして」
「え!?俺だけ!?睦月もうるさいじゃんか!」
今霜月を注意したのは如月二美。
とても物静かな女の子で、普段喋っているところをあまり見たことがない。
ましてやこの話し合いに参加するのも非常に珍しいと俺は思っている。
「睦月はいいの。言いたいことはわかるし、私もその意見には反対だから」
あの如月が俺を庇ってくれている!
こんな身近に味方がいてくれたとは…
「なんだよ、俺だけ悪者かよ。いいよーだ。」
霜月が不貞腐れる。
「話をもとに戻そうか。ひとまず霜月の案は却下して、次の案は…」
不貞腐れる霜月を無視して話を進める弥生。
せめてもうちょっと構ってあげて。
「みんなでカフェ巡りか。これは悪くないんじゃないか」
カフェ巡りか。
至って普通の学生らしい活動じゃないか。
「さっきの案が案だけにちょっと警戒してたんだが、意外とまともだな」
「誰の案がまともじゃないって?」
「話の流れからしてお前しかいないだろバカ」
「せめて名前で呼んで!」
突っかかってくるバカを適当にあしらう。
「ちなみにその案を出したのは誰だ?」
「それは僕の案だね。ちなみにこの意見にはみんな賛成だよ」
そう言って手を上げたのは卯月四音。
名前と顔で騙されやすいが、れっきとした男だ。
「まあ、卯月の意見なら俺も賛成かな」
「はいはーい!カフェはカフェでもメイドカフェ希望!」
そういって霜月は手をあげる。
「またお前は余計なことを…」
「懲りない」
「地獄に堕ちろ」
俺、如月、三空から苦情がいく。
三空のは苦情と言うより暴言だけど。
「メイドカフェなど、私の目が黒いうちは行くことは許しません!弁えなさい!」
さらに苦情を言ったのは神無月十香。
眼鏡をかけた真面目な女の子である。
「だいたいメイドカフェはあなたが個人的に楽しみたいだけでしょう。みんなのことを考えてものを言いなさい!」
「ご、ごめんなさい…」
思わぬガチ説教に謝ってしまう霜月。
とは言え、神無月もヒートアップしてしまったようで…
「メイドカフェはダメです!行くならせめてホストクラブになさい!」
余計なことまで口走っていた。
前言撤回、こいつは真面目じゃなくて自分の欲望に忠実なバカだった。
「神無月!それはダウト!お前も欲望が混じってる!」
「はっ!?私としたことがつい…」
自分が何を言ったのか理解したのか、顔を真っ赤にしていた。
「神無月さん、ホストクラブに行きたかったんですね…」
卯月がドン引きしてる。
「卯月さん!?これは、そのぅ…」
今までのイメージが崩れた瞬間であった。
表面上取り繕っているだけで、本音は欲望がましましであった。
長くなりそうなので一旦区切りました。
次回に続きます。