鳥と赤い実
四十雀がとまっている枝は、直線的だった。その枝には丸くて赤い小さな実が生っていて、鳥はその実を食べに来たのだろう。ここから見ると鳥は小さく見えるが、僕はそれが小さいのか(それとも大きいのか)よく分からなかった。考えようによっては大きいのかもしれない。たとえば鳥がまさに食べようとしている赤い実と比べるなら、鳥のほうが遥かに大きい。もちろん鳥は、僕と比べるとずっと小さいのだが、僕は僕を基準とすべきなのか赤い実を基準とすべきなのかがよく分からなかった。
僕は自分のことがあまり好きではない。それに対して赤い実は、持てるエネルギーの全てを一点に凝縮するかのように、力強く輝いていた。自分を卑下するわけではないが、努めて公平に判断したとしても、枝の先の赤い実は僕よりも優れて世界を代表しているように思えた。
幾何学的な直線と凝縮された点。枝と実は数学的な均質性へと接近していた。公平であることが誠実なのだとすれば、誠実の名に値するのは僕ではなく幾何学的な点のほうだろう。
鳥はどちらに属するのだろうか。鳥は僕の視界の中にいるのだろうか。それとも鳥は、幾何学的直線の上にとまっているのだろうか。