ゴブリンジェネラルと防衛クエスト
ワールドアナウンスが鳴り響き、西のフィールドに続々とプレイヤーが集まる。その中にはミツキの知っている、純白の鎧や狼獣人がいた。初のワールドクエストに多くのプレイヤーが浮き足立っていた。
そして、西の森にはゴブリンの大群が集結している。だが、ゴブリンは「ギャギャギャッ」と落ち着かない様子で鳴いていた。時間になってもゴブリンキングが現れないことに、騒ぎ出したのだ。そこに、西のダンジョンのボスだった、ゴブリンジェネラルが現れる。騒ぐゴブリンを落ち着かせ、ゴブリンキングの代わりに指揮を執り始めた。
しかし、ゴブリンジェネラルは焦っていた。表には出さないが、何故、ゴブリンキングが現れないのか、もしや討ち取られたのでは、その考えがゴブリンジェネラルの頭から離れなかった。ゴブリンジェネラルは一体のゴブリンにゴブリンキングのいる場所へ向かわせた。本当は自身がゴブリンキングの元に向かいたかった。だが、指揮官代理となったゴブリンジェネラルがこの場から離れる、そのような事は不可能だった。
ゴブリンジェネラルの指揮の下、統率を得るゴブリンの集団。ゴブリン達はプレイヤーと同じようにパーティーの上限数、六体で集まる。西の森に出現する、棍棒を持った普通のゴブリンが四体、それに、弓と杖を持ったゴブリンアーチャー、ゴブリンメイジが一体ずつ加わった構成だ。そのパーティーが五千。合計三万ものゴブリンが森から出陣していく。
ゴブリン達は軍隊のように、足並みを揃え闊歩して。
森から出て来たゴブリンを、一体でも多く倒そうと意気込んだプレイヤーが駆け出す。
そこに、一斉に放たれる、ゴブリンの矢と魔法。駆け出したプレイヤーの多くが被害にあった。それでも、生き残ったプレイヤーはいた。しかし、HPが減った彼らをゴブリンの棍棒が襲う。先陣をきったプレイヤーは、ゴブリンの連携にことごとく敗れていった。
ゴブリンは数が多くなるほど手強くなる、そのことを知っているプレイヤー達は彼らの様子を静観していた。そして、これ程の数になると非常に厄介な存在だと、再認識する事になった。
森にいるゴブリンジェネラルの元に、一体のゴブリンが「ギャギャ」と慌てた様子で言う。何かを報告しているようだ。ゴブリンキングの部屋に行ったが、扉は締まり、開かなかったと。
ゴブリンジェネラルは不安と安堵、その二つの気持ちが渦巻く。扉が開かない、つまりゴブリンキングはまだ生きている、しかし、部屋には敵がいて今まさに対峙していることを示していた。ゴブリンジェネラルは拳を震わせ、怒りを面に出すと、周囲のゴブリンは緊張した面持ちをする。
いや、今は冷静になるべきだ、ゴブリンジェネラルそうは思い、頭を振って思考を切り替える。ゴブリンキングは敵を屠り、必ずここに来ると信じて。その時には、戦況は我々が有利と報告できるように、いや、勝利の二文字をゴブリンキングに捧げるために、今はこの戦いに集中する、と。
そこに、再びゴブリンの報告が入る。ゴブリンアーチャー、ゴブリンメイジが次々に倒されているらしい。
一部のプレイヤーは通常のゴブリンを無視し、遠距離攻撃をするゴブリンだけを倒した。遠距離攻撃に苦戦するプレイヤーが多くいた、しかし、通常のゴブリンだけなら彼らでも活躍出来ると考え、そして、一部のプレイヤーはボスが現れるまでMP等を節約したいため、彼らを利用する、そんな思惑もあった。
ゴブリンジェネラルはゴブリンナイト、三千をゴブリンアーチャー達を倒すプレイヤーに向かわせ、傷付いたもの、パーティーに欠員が出たものを戦場から引かせる。
戻ってきたゴブリンでまだ戦えるものはパーティーを再編成させ、戦場に戻らせる。
ゴブリンアーチャー達の被害は減ったが、通常のゴブリンが倒され数が増える。まだ、数の上ではゴブリンの方が多い、だが、逆転されるのも時間の問題だった。
今、残っている予備戦力は、ゴブリンナイト・二千、ゴブリンモンク・百、ゴブリンアサシン・六、ゴブリン近衛騎士・四十、これだけだ。しかし、モンクは傷付いて戻ってくるゴブリンを癒す役割が、ゴブリン近衛騎士とゴブリンアサシンはゴブリンキングの直属の配下のためゴブリンジェネラルが指示を出せない。二千のゴブリンナイトでこの状況を好転させなければいけなかった。
苦悶の表情を浮かべるゴブリンジェネラルにゴブリンモンクのリーダーが片言で言う。
「俺達、戦う。仲間、助ける」
その言葉にゴブリンジェネラルは、ハッと、ゴブリンモンク達の顔を見渡す、全員が同じ考えだと示すように頷いた。元来、ゴブリンモンクは温厚で、戦う事を嫌う。にも関わらず、自ら戦うと言うならば、ゴブリンジェネラルはその心意気を叶えてやりたいと思った。
「そうか、ゴブリンモンクよ。ならば、戦場へと赴き同胞を救え。ゴブリンナイトはゴブリンモンクを何があっても死守せよ!」
「ギャッ!」
ゴブリンナイトが敬礼を示す鳴き声をあげる。ゴブリンモンクはゴブリンナイトに守られるように森を出た。しかし、ゴブリンモンクの決意は、この惨状に折れそうになっていた。鋭い刃物で首を切断されたゴブリン、頭に矢が刺さったゴブリン、真っ黒の煤となったゴブリン。多くの仲間が地に伏せ、森まで逃げ延びれたゴブリンは幸運だったと思い知らされた。
戦場がここまで悲痛な光景とはゴブリンモンクは考えていなかった。それでも、ゴブリンモンクは己が出来る事をした。そのおかげか、ゴブリンが倒される速度は急速に減速した。
だが、それでも戦況を有利に出来なかった。ゴブリンジェネラルは自身でこの状況を変えるしかないと思い歩き出す。その時、ゴブリンジェネラルの耳に声が届く。
「待たせたな、ゴブリンジェネラル」




