大学生とは何ぞや
徹夜明けに外に出てみた。僕は、なんとなく毎日の通学路を駅とは反対方向に進んでいた。なぜかしら。淡々と同じ日常を繰り返すのが嫌だったからか。それとも、大学そのものが嫌いだからか。どちらでもいいや、同じことだもの。どっちだっていいじゃない、人間だもの。そういえば、誰かが似たこと言ってたな。誰だっけ。
早朝の空気は美味しかった。つい深呼吸したくなって、大きく息を吸ってしまった。この肺に広がる清々しさは澄み切った空気の恩恵だ、ありがたく享受しようではないか。でも、僕なんかはこう考えてしまう。朝の空気を美味しいと感じてしまうくらい、普段の空気は不味いんだ、と。それほどまでに僕たちの住む世界は汚れつちまつているんだ、と。悲しいね。そういえば、これも誰かが言ってたな。誰だっけ。
通学路と反対の道は新鮮さに満ち溢れていた。なんてことは当然ない。ただただ自分の住み慣れた町のいつも通りの風景、そこから人が消えただけだ。なんの新しい発見も未来もない。自分の知らない土地へ行きたくなった。自分探しの旅なんて馬鹿にしていたのに意外としてしまうかもしれない。既知の世界で自己の思索はできない、自己理解の模索は未知の世界において初めて可能となるのである。なんて論文、誰かが書いてたな。誰だっけ。
歩き続けると、国道に出た。普段は車両が行き来する騒がしい道なのに、今はめったにそれは通らないから嫌いじゃない。通りに並ぶ店は全て扉を閉ざし、全てを寂寞に染める。ふと大型トラックがガタゴトと音を鳴らしながら通り過ぎていった。なぜだろう、それは僕に爽快感を運んでくれた。トラックが視界の奥へと消えていく。この道の先に彼を待つ何かがあるのだろうか。僕の道には果たして何が待っているんだろうか。今の生活に意味を求めていたけど、もしかしたら僕は何かを拾いながら捨てながら、目的地へと運んでいるだけなのかもしれない。迷わず行けよ、行けばわかるさ。なんて誰かが叫んでたな。誰だっけ。
日が昇るにつれて、町に活気がでてきた。僕と逆行し、駅へ急ぐヒューマンたち。逆行しているのは僕かな。彼らかな。堅く扉を閉ざしていた店店は、その表情を和らげ、人々を誘う準備をしているようだ。トラックしか通らなかった国道には、もうすでに多くの車両が唸りをあげている。ふと気づいた。日が昇ったからか、街に人が増えたからか。この世界は思ったより少なくとも早朝よりは、僕にとって暖かい。そうだ、大学へ行こう。なんてキャンペーン誰かがやろうとしてたな。誰だっけ。僕だっけ。
全速力で駅へと走り、大学を目指した。昨日の自分とは違う。何かが変わった。大学生活が無駄な存在であったかどうかはちゃんと終えてみないとわからないのかもしれない。そして、大学へ着いた。なにやらおかしい。やっぱり世界は冷たい。今日って日曜だっけ。




