黄竜
宿屋で朝食をとった後、精算した。
アオに言わせれば、村唯一の貴重な宿屋の割には相当な割安価格だったとの事。
昨日の巨漢達が去った後しきりにお礼言われてたから、おまけしてくれたのかも。
僕達は特に何もしてないんだけどなあ。
まあ次の街に着くまで収入は見込めないし、まだ出費しそうだし、節約できるに越した事はない。気持ちは有難く受け取っておこう。
旅に必要な品を最小限購入した後、宿屋で聞いた次の街までの乗合馬車に乗り込む。
この馬車で次の街まで半日程かかるらしい。
6人乗り位のこじんまりとした馬車に自分たちの他老夫婦が二人乗り込む。
老夫婦とこの世界の事を話しながら、馬車に揺られること数時間。
ドカアアア!!!「ヒヒイイイン!!」
地鳴りと馬の鳴き声と共に、馬車が急停車した。
危うく仕切りに鼻ぶつける所だったけどアオが抱き抱えてくれたおかげで免れた。有難う、イケメン。
しかし、急停車するって何が起きた。
「どっ、ドラゴンです!!直ちに降りて下さい!!」
わお、ドラゴン出現か。さすが異世界だね。
馬車を降りると、前方が焼き野原になってた。
凄い熱気である。
「…黄竜ですね。」
アオが空を見上げながら呟く。
東の空をすっぽり覆うほど、大きい。
「凄い、本物の竜だ。」
黄金に輝く黄竜。やばい、カッコいいかも。
見惚れていたら、また一段と大きくなった。
…ん?こっちに飛んできてる?
「こちらに来ます!皆さんは逃げて下さい!!」
老夫婦達が慌てて西の森に逃げていく。
やばい、あんなでかい竜が突っ込んできたらどうしようも…いや、でかいという事は。
「GYAAAAAAAaaa!!!a?kyaaaaa??」
アオがスキル縮小化を発動した。
みるみる小さくなる黄竜。最終的には手の平サイズになった。
…ちょっとかわいいかも。
「kyaaakya…,kyaaaa!!!」
縮小化を発動させたアオに向かって、黄竜怒りのドラゴンブレス。
ボオオオ!アオが炎に包まれる。
「アオ!!」
小さくなってもドラゴンのブレスである、無事で済むはずが…
「…もっと小さくなりたいですか?」
無事だった。水属性を持つアオは小さくなり威力が落ちたドラゴンブレスを相殺したようだ。
それでも熱かったようだし、髪の先がちょっと焦げている。
アオおかんむりである。
「…ごめん、悪かった!!だから元に戻してくれ!!」
アオの怒りを察したドラゴンが、ポンっと人化し、しゃべった。
おお、人化出来るんだ。さすがドラゴン。
金髪に赤目、通った鼻筋。長身でガタイも相当いい。
アオとは違う方向で、イケメンだな。
後から人化したせいか小人というサイズでもなく通常の人サイズだ。
「急に人を襲うような危険な奴を元に戻す訳ないでしょう。何ならもっと縮小化してもいいんですよ」
「それは勘弁してくれ!もう襲わねえから!だから頼む!!」
「どうだか。却下します」
「頼むからーー!!」
ドラゴンが必死に頼み込むも、アオは完全に無視である。
ちょっと哀れだが、しでかした事を考えるとまあ、自業自得だな。
「…この道はしばらく使えそうにありませんね。ご夫婦方と合流して、目的地を目指しましょう」
という事はまた徒歩の旅になるのか。
歩きだと順調にいっても明日到着となるようだ。
馬車で楽々移動のはずだったのに…やはりドラゴン許すまじだな。
追いかけてくる人に化けた黄竜を無視して、西の森に入った。