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名付け

「ところで…その美形という呼び方は止めてもらえないでしょうか。貴方にそう呼ばれるのには違和感が…」


美形を美形と呼んで何が悪い。


けど呼ぶ名前がないのはお互い不便かな。


思い出すまで仮の名前でもつけるか。


「そうだね、名前つけようか。んー、何がいいかな」


日本の名前だと通じにくいかもだし、こちらの世界っぽい名前つけられたらいいけど。


「…ナルセ」


美形がそっと口ずさむ。


「ナルセ?美形の名前?」


日本で使われそうな名前だな。


「違います。貴方の名前はナルセ…お嫌ですか?」


あ、お互いに名前つけ合う方式とか?


「別にいいけど。ナルセね…違和感無いしそれでいいよ」


「はい。…ナルセ様」


「様は止めて。お互い今は記憶無いんだし対等って事で!」


思ったんだけどなんでこの美形、いちいち下手なんだろ。


記憶無くす前は主従関係だったのかな?


いや僕は異世界から来てるし、美形はこっちの人間っぽいし関係無いよね。


今は世話になりっぱなしだし、ただでさえ肩身狭いんだから様付けとか勘弁だ。


「はあ…わかりました。」


敬語も…まあそれはいいか慣れてきたし。


単にそういう口癖なのかもだしな。


さてと。


「美形の名前は…うーん…」


次は僕が美形の名前決める番だな。どうしよう。


濃紺の長髪にサファイア色の瞳か…


「…碧。アオで。どう?」


「アオ…ですね。はい、それでお願いします」


僕はナルセ。


美形はアオという事で仮の名前が決定した。


それから肝心の火だけど、結局二人共炎の属性は持ってなかったので、地道に原始的な火起こしした。


二人で頑張ったけどやたら時間かかったし疲れた…。


アオも魔物倒すより大変だとぼやいてたよ。


アオ位チートなら火起こし位何とでもなるのではと思ったけど、繊細な仕事には向いてないらしい。残念。


この世界にはライターやらはないけど、簡単に火を起こせる火打石というものがあるらしい。


村に着いたら探そう。あるといいな。ぶっちゃけ火起こしはもう勘弁だ。


しかし、ふと気づく。


村に無事たどり着いたとして…


まともな食事をしたり、宿に泊まったり、火打石を初め旅に必要な物を調達したいけど、その代価はどうすればいいのか。


生憎こちら二人共、気付いた時から手ぶらである。


途中捥いできた果物がいくらか収納に入っているけど、これだけでは大した代価になるとは思えない。


大変な貧乏っぷりである。


「お金どうしよう。日雇いとかあるかな」


「お金ですか?それでしたら倒した魔物を売ってみたらどうでしょう」


あっ成る程。魔物の皮とか素材になりそうなもの売るわけね。


道中アオが出てくる魔物片っ端から危なげなく倒してた。


収納スキルの事は知らなかったし、今までは倒してそのまま放置してたんだけど。


「そうだね。これからは売れそうな魔物は収納しようか」


「はい。ただ、冒険者ギルドでしか魔物は取り扱っていません。冒険者ギルドは大きな街にしか無い事が多いので、この先の村では難しいかもしれませんね。」


あらら。


「ギルドがありそうな所って遠いの?」


「この先の村からさらに北へ、馬車で半日程でしょうか」


ふむ。それ位なら何とかなるかな。


その後、アオが倒したシンロウや猿と狒々がまざったような魔物等を収納しつつ、森を進む。


大分日が傾いてきたけど、そろそろ森を抜けられそうだ。


途中止むを得ず森の中で一泊したけど、固い木の根を枕に、魔物が跋扈する物騒な森で安眠などできるはずが無い。


一晩中見張ってたアオなんて言わずもがな。


交代するって言ったのに「徹夜には慣れてますので」って聞かないんだよな。


見るとせっかくの美形なのにうっすら目の下にクマをつくっている。


アオの為にも僕の安眠の為にも、早く村に着いてほしい。


そろそろ森の出口だ、っていうところで大物が出た。


ジャイアントグリズリー。


でかい熊だ。日本産の通常の熊の10倍はありそうな巨体。


その迫力に思わず腰が抜けそうになる、が。


アオがスキルを使い、小熊サイズにまで縮小化。


その後にアイスエッジ一発であっさり倒してしまった。


「省エネです」


ってアオ言ってたけど、寝不足でまともに闘うのが怠かっただけじゃないだろうか。


「縮小化って生物にまでつかえるの?」


「そのようですね。試しにやってみたら出来ました」


はいはい、チートチート。


ジャイアントグリズリーの毛皮やら牙やらは高値で売れるという事で、嬉々と収納。


金銭化できるのはもう少し先だろうけど。


そうして日が暮れる寸前に森を抜け、こじんまりとした村の入り口にようやくたどり着いた。

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