私と君は誰?
「攻撃魔法などお持ちですか?」
途方に暮れてたら、周りの状況を把握したらしい美形が話しかけてきた。
ていうか今なんて言った?魔法??
やばいよこの人起き抜けで混乱してない?
これ夢の続きとかじゃないよ多分。いやそうであって欲しいけどね?
それにしては迫り来る狼もどきの荒い息づかいやら獣臭やらがやたらリアルなんだけどね?
「お持ちじゃないよ!!」
そんな便利そうなもの持ってたらとっくにぶっ放してるってばよ!
そうこう言ってるうちに狼もどきの群れの内の何匹かがこちらに飛びかかってきた。
あああもうおわりだあ…短い人生だったな…
こんな事ならもっと好きな事しとけば良かったよ…
「では私の後ろに控えていて下さい」
美形が僕を庇うように前に出る。
気持ちは有難いけど、順番が変わるだけだと思うなあ。
それとも何?この美形さんは攻撃魔法とやらを
「氷刀」
持ってた。
美形が一言唱えた次の瞬間には、突如出現した鋭い大きな氷の塊が飛びかかってきていた狼もどきを貫いていた。
それだけではなく、後方で控えていた狼もどきの群れも次々と。
とんでもない質量とスピード。
後に残ったのはことごとく氷の塊に貫かれ息絶えた狼もどきの群れの残骸と、しんと凍える冷気のみ。
魔法とやらを一言発しただけでこれか。凄いなこの美形、何者だよ。
「お怪我はありませんか?」
「お陰様で、かすり傷一つないよ。有難う助かった」
「それは良かった」
穏やかに微笑む美形。笑顔も美しいね。
「で…貴方は何者なの?」
そしてここは何処なの?
しれっと魔法とか使ってたけど、もしかして地球じゃないの?
ラノベで良く見るあれかな。異世界とか。まさかね。
…そうなの?!
「私は…何者でしょうか?」
待て。聞いてるのは此方だ。
美形は自分の状態に今気づいたとばかりに、しきりに首を傾げている。
「私は…名前も出身地も年齢も、何故ここに居たのかも…思いだせません。
性別は男だと思いますが…」
それは見ればわかる。
美形だけど長身でガタイいいし骨格も男のそれだ。
しかしこの美形記憶喪失か。まじで?魔法とやらはスラスラ唱えてたのに。
部分的なものなんだろうか。
「なら…この場所の事はわかる?」
「ええ、それなら。遠方に見える森と太陽の位置、さらに先ほど出現した魔物からこのあたりはシン国の遥か南に位置する草原かと。」
シン国ね。聞いた事ない国だね。それに…
「さっきの狼もどきって魔物なの?」
「ええ。シンロウという魔物です。二頭を持ち、獰猛で群れで狩りをします。通常森から出てくるのは稀なんですが」
やっぱり魔物か。いるんだー魔物。これはますます異世界くさくなってきたなーハハハ。
…やっぱり僕夢見てるのかな?
この所ラノベといえば異世界ものばかり好んで見てたから、大分影響受けてるなあ。
などと現実逃避をしていたら、今度は美形から質問された。
「それで…貴方はどちらの方ですか?ここで何を?」
いやいや、ここで何をしていたのかとか、僕が聞きたい位だってば。
どちらの方って、地球の…日本の…えっと…あれ?
「僕は誰だっけ…」
ナンテコッタ、僕もかよ!!
初連載です。
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