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異世界召喚

頑張りました、読んでやってください

ある晴れた日の日常のほんの一コマに、それは起こった。

そしてそのたった一度の非日常な出来事によって俺の、俺たちの人生は日常から遠ざかり、

すべてが非日常な世界へと誘われていくことになったのだ。










俺こと神薙 至(かんなぎ いたる)が大学の合格祈願のために近くの神社へと歩いていると、 


「おっはよーうごっざいまーす!先ぱーい!」


そう後ろから声をかけられた。後ろを振り向いてみると、そこに美少女が二人ほどたっていた。


「何だ、唯に夏ちゃんじゃないか。朝っぱらよくもまあ元気なっこたなぁ」


「もー、至。うるさいのは夏だけじゃない、私も一緒にしないでよね!」


「ははっ、そりゃそうだ。悪かったな唯」


「えー、なんでわたしはそんな扱いなんですかー?平等じゃないですー」


俺と唯がそう言うといかにもわたしは不満です、といったように頬をふくらませている。

美少女ってのはこんなふくれっ面をしてても美少女なんだな、などと思いながら言ってやった。


「だって唯は俺の彼女だぞ?一番大切にするのは当たり前だ。それに実際うるさかったのは夏ちゃんだけだろ」


そう俺が言うと夏ちゃんは、ぶー、ぶー、と言いながら言ってきた。


「そもそも先輩が何で唯ねぇと付き合ってるのか今でも信じられませんから」


そう、夏ちゃんが言っている通り俺と唯が付き合っていることは当人たるこの俺ですら信じられないのだから。

なぜなら俺の彼女の唯こと天城 唯(あまぎ ゆい)は先の感想の通り、とてつもない美少女だったからだ。

これは彼氏の俺の贔屓目無しで見てもだ。

その肩のあたりまでのばした艶やかな黒髪も少しつり目気味な大きい瞳、ぷっくらとした形のいい唇も、

各々のパーツがすべて最高の位置にあった。きゅっと引き締まった腰にきれいな脚線美。

容姿で問題点を挙げるとすればそのやや慎ましい胸部くらいであろう。といってもぎりぎりBはあるらしが。

そのうえ実家は世界規模の大企業、祖父が某お米な国の元大統領さんとも交流があったりなかったりするレベルだったりする。

そんな容姿に家柄、さらには校内模試では常に一桁で運動もでき誰にでも分け隔てなく優しかったりするので、唯は俺が通っている学校のアイドル的なポジションにいたりする。

そんなハイスペックすぎる唯に俺が一目惚れしたのは当然といえよう。

それに対して俺なんか普通がふくを着て歩いているようなスペックだから、付き合えるようになるまで色々ありまくったのだが、それはまた別の機会に語るとしよう。

ま、今となってはいい思い出だが。

ちなみにさっき俺にうるさい挨拶をしてきたやつの名前は守木 夏(もりき なつ)、唯の幼馴染で一つ年下なので唯のことを姉のようにしたっている。

唯の幼馴染という点でわかると思うが、夏ちゃんもなかなかにハイスペックである。

短めに切った亜麻色の髪に感情がよく出る顔、そして小さいながらもよくちょこまかと動き回るその姿に小動物的な可愛さを感じるらしくとても人気がある。ロリ巨乳だったりする。


「まあ、俺の努力が実っただけだろ」


「それでも信じられませんよー。だって先輩よりかっこよかったり頭良かったり運動できたりした人たちがことごとく振られてるのにですよ」


「そこは俺も否定はせんが。そいつらより俺の方が唯が好きでそれが唯の目にとまったんだろ」


「そうなのー、唯ねぇ?」


「うん、だいたいそれであってるわ。付け加えるなら私は至のことが全部大好きよ」


そう唯が言うと、言われた本人たる俺も夏ちゃんも顔をまっかにした。

唯はたまにこんなことをいきなり言ってくるからうれし恥ずかしくて死にそうになる。

そこら辺も可愛くて大好きだけど。

のんびり神社の本堂へ向かって歩きながら話していると、声がきこえてきた。


(・・声に応・よ、・界の武・たちよ。大・・・運命を・・せし力・・・て顕・した・え)


いきなり聞こえてきた声に驚きまわりを見渡してみるが誰もいない。

唯と夏ちゃんの二人も聞こえたのか俺と同じようにまわりをみわたしていた。

だが二人も何も見つからなかったのか、頭に?を浮かべていた。


「ねえ至」


「わかってる。何が起きようとしているのかは分からないが、とりあえず一つにかたまろう」


そう俺が言い俺と唯、それに夏ちゃんの三人が一つに集まった。

そしてそれと同時に足元に魔法陣が現れ光り始めた。


「えっ!?な、何がおきてるんですか、先輩!?」


「知るか!むしろ俺が知りてえよ!」


そう俺が夏ちゃんに怒鳴ると同時、魔法陣からの光が強まり俺たちを包み込んでいった。










しばらくして光が収まったのを閉じた瞼の裏で確認した俺が恐る恐る目を開けてみると、

そこはまるで欧州の中世の頃の建造物のの中のようだった。

分かった理由は簡単だ。俺が前、唯の家族に連れられてヨーロッパに旅行に行った際に見たからだ。

まわりを見渡して俺は思った。きっと唯と夏ちゃんも同じことを思ったと思う。

だって異世界召喚系のテンプレのはずなのにまわりの人たち(獣人ぽいのとかエルフっぽいのとか人間っぽいのとか何か色々いたが)が俺たちを見て驚いていたからだ。

ただ驚いていただけならいいが、彼ら彼女らの驚き方は物を召喚したら人が出てきた、みたいな感じだったからだ。

俺たちが衝撃から戻ってこれず固まっていると、まわりにいた人たち(獣人ぽい以下略)の中から

一人の男性が歩いて出てきてそのまま俺たちに問いかけた。


「君たちはどこのものだ?」


いきなり声をかけられた俺はすぐさま後ろを振り向き相談をしようとした。

が、後ろの二人からの無言の圧力に屈した俺は、代表して答えることになった。

というより何で俺なのだろう。こういう偉い人とのお話とかに慣れてるのはあっちの二人だろうに。

まずは情報を得なくちゃな。


「えーと、その前に一つ確認してもいいですか?」


「まあ、俺に答えれる範囲でなら良いぞ」


「この召喚?で俺たちが現れるのは想定されていたことだったんですか?」


「いや、違うぞ。今回の召喚では異世界より対悪魔用の強力無比なる武器を呼ぶはずだったのだ。

それが何を間違えたのが不思議な恰好をしている人族の男に、妖精族(ハイエルフ)の女、それに加えて最高位の天族の女が現れたんだ、驚くなという方が無理だぞ」


「へ?」


(いやいやいや、何言ってんだこのおっさん。とりあえず人族の男は俺、だよな。だとするとほかの妖精族と天族ってやつは唯と夏ちゃんだよな。何で種族?が違うんだよ)

そう思い後ろの二人に確認をとるために振り向いてみると、そこにはあり得ないほど姿が変わってしまった二人がいた。いい方にだが。

唯はその黒髪をきれいな銀髪へと変え、背中に端から端まで1メートルほどの大きさの三対六翼の純白の翼があった。まんま天使だった。

これだけでも十分驚けるのに夏ちゃんまでもが変わっていた。

短めにしていた亜麻色の髪が腰のあたりまで伸び、色もきれいなはちみつ色になっていた。さらに目も碧眼へとなり、耳までなぜか伸びていた。まんまエルフだった。

というかこの流れでなぜに俺だけ人族なんだ?いや、もしかしたら人族って俺たちの世界でいう人間じゃなくてここでは違うじゃないのか、と淡い期待をこめて唯に聞いてみた。


「なあ唯。やっぱり俺も姿変わってるのか?」


「ううん、あっちと変わんないよ」


現実は無情だった。

だが俺はあきらめなかった。


「おっさん、人族って普通なのか?」


「おっさん、だと・・・。はぁ。まあ言っても無駄そうだしな。

何をもって普通とするかは知らんが、ステータスでいうなら平均まっしぐらだな」


「おっふ」


現実はやはり無情だった。

おっさん呼ばわりに少しおっさんのまわりの騎士っぽい人たちの額がぴくぴくしてるけど俺は知らん。

というか何で俺だけひねりのかけらも無い種族なんだよ、ここはせめて獣人とかでもいいからそっちが良かったよこん畜生!

などと思いながら俺が衝撃の事実に打ちのめされ全力で落ち込み、哀れに思ったらしい夏ちゃんと唯に励まされていると、さっきのおっさんが話しかけてきた。


「あー、もういいか?もういいよな。とりあえずこんなとこで立ち話もなんだしな、移動するぞ。

色々聞くことがあるから少しは考えとけよ」


そう言うとおっさんは他の人?たちとどこかへ行ってしまった。

結果的に置いてきぼりにされる形になった俺たちがどこへ行けばいいのかとオロオロしていると、THEメイド、な人が近づいてきた。


「それでは案内するのでついてきてきださい」


そう言うと優雅にお辞儀をし、くるっと後ろを向き歩いて行った。

いきなり「ついて来てください」などと言われ、少し混乱しかけた俺だが、メイドさんの後を唯と夏ちゃんがすぐについていってしまったので、慌てて追いかけていった。

よくわからないままメイドさんについていくが、思ったよりかかるようで唯や夏ちゃんに話しかけようかと思い見てみるが、残念ながら二人ともこのあとのことでも考えているのか何やら考えにふけっているようだった。

なので俺は、今歩いている廊下やそこの窓から見える風景を見ることにした。

そうしたら、そこにはファンタジーの定番、ドラゴンがいた。


「は?」


体が固まった。比喩抜きで死ぬと、そう思った。

そいつは、全長数百メートルはありそうな巨躯に端から端までへたしたら1キロほどもありそうな翼を持っていて、全身は鮮やかな空色だった。

俺の目の前を堂々と飛んでいくその姿に、今さっきあれほどの恐怖を感じさせられたといういのにも関わらず、感動してしまった。

後に知ったことだがこの時見たドラゴンは龍族の王、始まりの龍(ゲオルギウス)だったらしい。










そんなファンタジーあるあるな幻獣を見てビビったり感動したりしながら長い長い廊下を歩いていき、

ようやくさっきのおっさんが入っていったと思われる部屋の前までたどり着いた。


「でかすぎないか、この扉」


「うん、私の実家の大広間の扉より大きいんじゃないかしら」


「やっぱりそれくらいでかいよな」


ちなみに唯の実家の大広間の扉は横幅5メートル、高さ4メートルもある立派な扉だったりする。

こんこん、とメイドさんが扉を叩くと、中から


「すでに全員集まっている。入ってきていいぞ」


と言われたのを確認すると、メイドさんが扉に手を当てた。そしてブツブツと何かを呟くと、扉が勝手に開いていった。中に入って行ってみると、そこには召喚された場所よりもはるかに多くの様々な種類の種族がいた。

パッと見ただけでも6~9くらいは種類分けができそうな感じだった。というかどうみても悪者だろってやつもちらほらいるからけっこう怖い。

そんな風に俺がビビリながら周りをキョロキョロしていると、唯が代表しておっさんたちに話しかけた。

さすが俺の彼女!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・頼りなくてすまん


「それで、私たちはなぜここまで連れてこられたのですか?理由をお話いただけますか?」


財閥令嬢なだけあって、その所作はきちっとしていた。というか少しばかり強気すぎやしないだろうか。唯を守るためならたとえ火の中水の中な俺ではあるがわざわざ面倒事をおこすのはやめてほしいんだが・・・・・・

そんな俺の心を読んだのか、唯が小声で


(大丈夫よ、至。こういう交渉とか外交は私の分野なんだから。ここは私に任せて至は周りを見て何かあった時に備えておいて。夏もよ?)

(うん、わかってるよ唯ねえ。サポートは任せて!)

(重ね重ねすまん)

((気にしないで(ください)!!))


そんあやり取りをさっさとし終えると、おっさんたちの方に向き直り、返答にそなえた。

この返答次第ではやばい方へといくかもしれないからだ。

だが俺たちの予想に反しておっさんたちの返答は予想とは全く違うものだった。


「俺が話している途中で色々聞きたくなるだろうがとりあえず話終えるまで待ってくれ。

気付いているとは思うが、初めに言っておく。ここは君たちがいた世界ではない。いわゆる異世界というやつだ。まあ最初の態度からいって気づいていたようだがな。ちなみに俺の名前は草鹿 悠佑(くさか ゆうすけ)という。名前から大体わかると思うが、君たちと同じ日本人だ。俺の場合は君たちとは違って召喚ではなく空間の裂け目に落ちてきてここにいる。そこから色々あって王様やってるがそこは省くとして、おそらく君たちが一番知りたいであろうことを言わせてもらうぞ。元の世界に帰れるかどうかだが・・・・・・結論としては無理だ。理由は色々あるが、一番の理由としてはまだ世界として未熟なこの世界で世界転移などを再びすればこの世界が崩壊するからだ。だからこそ、俺たちの謝罪も兼ねて俺たちが一人で生きていけるようになるまで支援をさせてもらう。ただ言わせてもらうなら基本チートと呼ばれる類はないぞ、普通(人族)は。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・とまあ、大体このくらいだな、話したかったことは。何か質問があるなら聞いてみろ。ある程度は答えれるぞ」


おっさん改め王様な草鹿さんの話を聞き終えたので、唯たちと話し合いをすることにした。


「なあなあ、何聞く?なんつーか聞きたいことほとんど言われた気がするんだけど」


「はー。先輩は本当にダメですね。まだまだ聞くべきことはたくさんあるじゃないですか。それにあの人が言ったことがすべて本当とは限りませんし・・・・・・・・。そんな様ではまだ唯ねえとつりあいませんね」


「ぐはっ!」


ふ、ふふふ。さすが夏ちゃん。俺の心の急所を躊躇なくえぐってくるぜ!

・・・・・・・・正直きついです。もう少しオブラートに包んでください、おねがいします。

そんなこんなで俺と夏ちゃんが漫才をやっていると、唯が俺たちをほっぽっておっさんに質問を始めた。

最初のころは俺たちがこんなことやってると毎回あわあわしてたのに・・・・・・・慣れって怖いな。


「聞きたいことはたくさんありますが・・・・・・・とりあえず三つほど聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」


「ああ、かまわん。まあ完全には信じれんだろうしな。しっかり聞いてどうするかは考えるのだな」


「っ!?・・・・やはり想定されていますか・・・・。なら、ここはあけすけに聞いてしまいましょう」


なんか今の一瞬で色々あったっぽいけど・・・・・・・

これが王様と日本最大の財閥の令嬢かぁ・・・・・・・・。すごいなぁ。正直よくわからないけどやっぱ唯はすごいなぁ。

・・・・・・・っと、また話が始まりそうだな。


「まず一つ目は、この世界の宗教について、です。簡単に一神教、多神教、といった違いていどでも構いませんので・・・・・」


「一応多神教、プラス精霊信仰といったところだ。といっても最近までは一神教で、殆どの神が異端視されてたんだがな。あまりにも異端異端うっとうしかったんで元凶のやつらをぶっ潰してやったがな」


「そ、そうですか・・・・。では、今この世界においては、宗教的な問題は少ないと。そのような認識でいいですね?」


「あー、実は問題は残っててな。その潰した宗教家の奴らがどこそこでテロ起こしてくれててなぁ・・・。それにまだ人種差別意識の改善が完全にできたわけでもないからなぁ・・・・・。だからまあまだたまに問題あるんだよ」


んん?テロ?差別?というかこのおっさん世界的宗教ぶっ潰したのか?人種差別世界規模で変えたのか?

え、てことはこのおっさん、前唯が言ってた世界で変えるのが大変なものトップ2両方したってことだよな

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ、このおっさんメチャクチャすごくね?

あの唯ですら驚きで固まってるし。

・・・・・・・・・・・・うんとりあえずおっさんじゃなくて草鹿さんと呼ぶことにしようそうしよう!

そう俺が考えていると、衝撃から立ち直ったらしい唯が、また話し始めた。


「で、では今この世界での宗教問題はそこまで深刻ではないわけですか・・・・・。となると私たちが気をつけるべきはこの世界の文化との意識の差異ですね」


唯はそうつぶやき顎に手をあてて少し考え込むと、真剣な顔をすると草鹿さんに話しかけた。


「私たちは、とくにこれといった神を信じていないのですが、何か生じる問題はありますか?」


「いや、特に問題はないな。一応、俺が何かこれっていう神様を信じてるわけじゃないって公表してっからな。事前に言っときゃ問題ねえよ」


「そうですか、安心しました」

「それでは次に、というより初めに聞くべきでしたが、この世界について教えてください」


唯が苦笑してそう言った。

確かに初めに聞いたほうがいいことではあった。

こんな初歩的なことですら忘れてしまうほど、今の唯は動揺しているようだった。


「この世界の名前は『


























「二人とも、何か聞きたいことはある?あるなら今聞いておきなよ」


「俺はないけど・・・・。夏ちゃんは何かあるか?」


「いえ、唯ねえが聞きたいことは全て聞いてくれましたから」


そう俺と夏ちゃんが言うと、草鹿さんはこれで話は終わりだというように手をパンパンと打って人を呼ぶと、その人を俺たちの方へと行かせた。

近くまで来て、よく見えるようになった、その人は、女性で、やっぱりメイド服を着用しており、結構な美人であった。

まあ唯の方が美人だけど。

そうして俺たちが先導され部屋を出ようとして草鹿さんの横を通ったとき、


「つらいだろうが、頑張って生きてくれ・・・!」


そう呟く声が聞こえた。

その声には後悔や懺悔、その他いろいろな感情が渦巻いていて、本当に俺たちのことを心配してくれているのだとそう思えた。

恐らく俺たちの個室へと案内されている間、俺たちは一言も話さなかった。

それぞれが今さっき聞いたことを自分の中で何とか消化しようと一生懸命だったからだ。

そのまま案内されるがままに進んでいくと、一つの部屋に入らされた。

何故か俺と唯、それに夏ちゃんも同じように入らされたのだが。

ふらふらっと備え付けのベッドへ歩いていくと、そのまま倒れ込んだ。

遅れて2つ、ぼふんという音が聞こえた。


「なあ、大丈夫か?」


「はい、何とか・・・」


「私は、かなりしんどいかな。親切にしてくれてるのは分かるけど、やっぱり、きついよ」


そう二言三言呟きあうと、また沈黙に包まれた。

俺を含めて、唯も夏ちゃんも急激に変わってしまったこの現状に戸惑い自主的に何かしようとはせず、流されるままになろうとしている。

最初はしっかりしているように見せていた唯も、

話が進むにつれてどんどん顔色が悪くなっていくのがみえた。

だが情けないことに、俺は何も言うことができなかった。

仮にも唯の彼氏を名乗っているというのに全部任せていたからだ。

それは夏ちゃんに対しても同じことが言えた。

本来なら心配ないと、そう励ますべきであったのに、何もできなかった。

だが、まだ挽回できる、そのはずだと信じている。

だから俺は、二人に話し掛けた。


「唯、夏ちゃん」


「んー、何ー?」


「何ですか?」


「俺、さ。今、すっげえ弱いけどさ、絶対強くなって二人を守るから。いや、強くなくても守るから。だから安心しろよ。俺は、唯と夏ちゃんとの約束だけは破ったこと一回もないだろ?だから、大丈夫」


そう俺が言うと、また部屋に静寂が訪れた。

衣擦れの音一つしない時間が、一瞬か、もしくは果てしなく長いほど過ぎた。

俺は居たたまれなくなって、項垂れた。

すると、示し会わせたのように唯と夏ちゃんが同時に立ち上がった音がすると、こちらに近付いてきた。

目の前に二人の足が見えても項垂れたままでいると、いきなり唯と夏ちゃん、二人の顔が、眼前に現れた。


「っ!?な、なんだ!?いきなりどうした!?」


「至は、私の恋人。恋人が本気で言っていることを信じるのは、(彼女)の義務、そう思ってるから」


「わたしも、先輩を信じてます。これは、先輩が唯ねえの彼氏だからではありません。わたしが先輩を、神裂 至(かんざき いたる)という個人を信頼に値すると、そういうことです。だからわたしは先輩を信じます」


そう言ってくれる二人を、俺は思わず抱き締めた。

泣いてしまったので、唯と夏ちゃんに見られたくなかったのだ。

ただ、隠せたとはまるで思えなかった。

肩が震えていたし、唯と夏ちゃんの二人共に背中を優しく撫でてくれていたからだ。

そのうち、唯と夏ちゃんまで泣き出してしまい、結局三人とも大泣きになってしまいそのまま泣きつかれて眠ってしまった。

・・・・・一つのベッドで抱き締めあったまま。


こうして、俺たちの異世界生活初日は幕を閉じた。

まだありとあらゆる問題が積み重なっていて、全く先行きが見えない、真っ暗闇な未来であったが、この三人ならなんとかしていける、そう思えた。


次回は11月9日0時です

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