黒石優斗の7月7日 IF 中編
前編の続きです。
予定より少々遅れましたね。
「な、なんで、僕がそんなことをしなきゃなら無いのさ!」
「白紙で出されると手続きに面倒が生じるんです!」
「手続きって……」
俺が呆れていると、プンスカと言うように自称織り姫織り姫は指を立てて説明してきた。
「良いですか?七夕って言うのは日本が大切に残してくれた文化でも、ありますが、日本は八百万の神の国!沢山の神様がいて、当然この願いもちゃんと神様は聞いているのです!」
だけど、いきなりそんなこと言われても、俺には理解でき無い。
いや、意味は分かるけど、その話しを頭が受け入れることが出来ない。
何故なら、ここは現代日本だからだ。
「そして、我々、七夕管理委員会は、そうした短冊の願いを星々に届ける役目があります!そうした、人々の清らかな願いが世界を安定させ、また、星はその願いを受け止め、叶えてあげることもあるのです!七夕は神聖な儀式なのですよ!」
懇切丁寧にエキサイティンな説明をしてくれる、自称織り姫さまの話しを、はい、そうですかと受け入れることは出来ないのだ。
「そんな儀式に貴方が行った暴挙!まさかの白紙ですよ!白紙!ありえませんよ!何もしないなら兎も角!書かないとか、どんだけ捻くれてるんですか!あなたは!ありえません!」
だが、受け入れられないのは、この際しょうがない。
人間は良く意見をぶつけるから、ここで、誰がどんな持論を持っていようと、真っ向から否定するのはよくない。
だが、そんな事より、ここに居たら面倒ごとに巻き込まれそうだ。
こういう時は経験上。
「……逃走……!」
「と言うわけで、貴方には二つの選択肢がって、待ちなさい!!」
ヤバっ!追いかけてきた!
夏だもんな。少し浮かれてるだけだよきっと。
いい加減目を覚ましてほしいな。
「そんな哀れみを込めた目で見るんじゃありません!さては、信じてませんね!」
「はっはっは、日本には表現の自由というものがあってね?」
「つまり、信じてませんよね!」
「いや、そんな訳ないじゃないか、自称織り姫ちゃん」
「絶対信じてませんよね!」
とあうか、逃げ回ってるけど、ここは本当に学校か?
いつまでたっても、目的地に着く気配がないし、人の姿も見かけない。
まさか寝ている間に連れ去られて?
それとも、本当に……。
いや、ないない。
「むきぃ!こうなったら、おりひめの力存分に思い知らせてやります!」
「なんか、きれた!?」
「星々に散りばめられた願いの形よ、我が元に来りて、その声を届けよ!来い!短冊ぅう!!」
「なんか、大袈裟な割にしょぼい!?」
え、なんで詠唱ぽいことして、呼び出すのが短冊止まりなの!?
と言うか、そんな、短冊に何の意味が!?
「幼稚園!」
「ふぇ、?」
「世界が平和になりますように。黒石優斗」
「グフっ!?」
思わず、何かが吐き出た。
な、なんだ、このダメージは!?
「小学一年生!皆んなが笑顔で入られますように。黒石優斗」
「ゴッハッ!?」
やべぇ、なんだこれ、なんだこの羞恥心。
あいつは何を言ってるんだ!?
なんで、俺はこんなにもダメージを受ける。
「2年生!争いがなくなりますように。黒石優斗」
「ゲボらバッ!?」
体から溢れ出てくる恥ずかしさ、そして、この拒否感。
「あの頃はまだ、こんなに純粋な子供でしたのに……」
「おまっ、まさか……」
「とばして、四年生!皆んなにたくさんの幸せが届きますように。黒石優斗」
「ゲボラボッハッ!?」
間違えない、これは俺の過去の黒歴史だ。
身体中から火が出そうなほど恥ずかしい。
つか、死にたい!
やばい、このままだと、心がやられる!?
「ちょ、おまっ!やめっ!」
「止メマセーン!私を散々バカにした罰ですぅ〜!」
方向転換して、自称織り姫を追いかけ始めるが、織り姫は既に逃げの体勢に入っていた。
つか、足はやっ!?
追いかける時より早いんじゃね?
「5年生!おおっと、これはすごいですね!凄いですよ?言っちゃいますよ?」
「てめっ!?止めぃ!おまっ、返せ!」
記憶を探ってもろくな思い出などない。
止めろ、これ以上言われたら死ぬ!
「あれ?六年生も同じ内容ですか〜?これは、尚更言っちゃいますね?ね?ね?」
「止めろぉおお!」
俺の叫びの声虚しく、その短冊は綴られた。
「将来の夢!世界征服!黒石優斗」
「いっそ、殺してくれぇええ!!」
あぁあああ!?
恥ずいはずいはずいはずいはずい!恥ずかしい!
死にたい!死にたいよぉ〜!
今すぐ存在ごと消えてなくなりたい!
くそ、小学生の俺の息の根を止めたい!
むしろ今息の根を止めて欲しい!
「ぐぁあああ!?」
「世界征服ぅ〜?あの頃はあんなに純粋だったのにぃ〜?」
「ぐぁああああぁああああぁあああ!?」
死にたい、崖から飛び降りたい、マグマに溶けたい、チリになりたい、海の藻屑になりたい、死にたい、死にたいよおぉ!
「さて、これで、私がおりひめだと、わかってくれましたか?人の一度書いた願いなんて分かりまくりですよ?」
「ぐぁあああぁぁあああ!!ぁぁあああ!!ぁぁあああ!!」
「ちょっと、うるせぇです。悪かったから、少し収まって下さい」
みじんこになりたい。
儚い幻想を抱かず、人に不快な思いをされないみじんこになりたい。
あぁ、今日は七夕じゃないか。
「……………………今すぐ、短冊の空白をミジンコで埋めるから叶えてくれないかな?」
「本格的に駄目なところまで来ちまいましたね」
「さて、と言うわけで、神聖な願いの空白を埋めてもらえますか?貴方去年も空白だったじゃないですか?」
もう、知ったこっちゃねぇよぉ。世界征服でいいよぉ。
「うるせぇ、もう、願いなんてないんだよ。変える気もねぇし、帰ってくれよぉ〜」
「そう言う訳には行きません貴方には、絶対に届けて貰わなければならないのです」
この自称織り姫しつこいよぉ。
「あん!?これ以上、俺から何かを奪おうってのか?おうおう、これ以上失うものなんてなぁ……」
「短冊、拡散モード。対象黒石優斗。範囲町中、レディ」
「すとっぷ!すとっぷ!待って、俺が悪かった!ちゃんと願い書きたくなってきたなぁ!やべぇ、これすぐ書いちゃうわ!」
もうこれ以上黒歴史が知れ渡ったら、俺は本格的に首をくくらないといけなくなる。
「分かればいんですよ!分かれば!と言うわけで、紙をですね」
「ほい、書いた。と言うわけで帰ってくれ」
「おぉ、早い!どれどれ?どんな願いを……、って、白紙やないかい!」
「甘いぜ、実はこれはあぶり出しになっていて、火に通すと……」
「なるほど!それなら、納得……、できるかい!こんな短期間に何ができるって言うんですか!」
意外とノリがいいな織り姫。
いや、みかんがあれば、簡易的なあぶり出しならいけると思うんだけど、いかんせんみかんがない。
「むむむ!どうしても、書かないつもりですか?」
「違うね。白紙で出したいだけだよ」
「一緒じゃないですか!どんだけ、捻くれてるんですか!」
むむむ、失礼な、俺は捻くれてないぞ?
少なくとも、右のほうが安全だったら、左に行くくらい捻くれていない。
「凄い、捻くれてやがります!もういやぁ!」
とまぁ、捻石さんは置いといて。
「ぶっちゃけ、本気で白紙で出したいんだけど。なんとかなんない?」
「むむむ、どうしようもないほど、我儘ですね」
「しきたりを押し付けてくる織り姫に言われたくないよ」
「むぐぅ、それを言われると痛いですね。実際、他の国ではやってないんですし」
よし、ようやく話し合いに持ち込めた。
これ以上何かされると俺の身がもたない。
「こうなったら!最後の手段です!」
とか、思ってたら、話が勝手に進んでいく。
あぁ、俺は基本スルーなんですね。分かります。
「貴方の手続きの手間の分、願いを受け取る手伝いをやってもらいます!それで、チャラです」
「願いを受け取る手伝い?」
願いを受け取る手伝いって、なんだ。
全く意味がわかりません。
要するにですねぇ、と得意げに話し始める自称織り姫ちゃん。
「願いはあるけど、みんなの目の前に短冊を晒す事は出来ないっていう、恥ずかしがり屋ちゃん、ツンデレちゃんから、短冊を奪い……もとい、受け取ってくるのです!」
「今、奪うって言いかけたよね?」
「言いかけただけです。大丈夫大丈夫」
絶対、大丈夫じゃない。
この案も断って。
「あ、言っときますが、これを断ったら、本格的にばら撒きますからね〜」
「おまっ、卑怯だぞ!?」
そんなことされたら、ミジンコになるじゃないか!
「卑怯で結構、元々書かない貴方が悪いんですし、…………これで、楽できますし」
「いや、おまっ、今本音出たぞ」
こいつ、最低な奴だ。
織り姫って、こんなに黒いやつだったの!?
「では、レッツラゴーです!」
「はなしをきけぇ!」
また、全然お話が進んでないことにビックリです。
はたして今日中に完結するのか!?