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薙刀を拾った経緯(前編)

「とりあえず、穂高のじいさんが直接話を聞きたいって言っていたから、彼を下に連れて行きますよ」



 村田や事務員の了解を得て、桐生が二階堂を訓練所へ案内する。滋も村田も後についてくる。エレベーターの中、二階堂は申し訳なさそうに桐生に名前を訊ねる。


「名前? 別に聞いていいよ。桐生って言います。こいつは滋、こちらは、まあ、村さんかな」


「それって、本名ですか?」


「俺は本名だけど。俺たち一応、秘密裏に動いているけど、存在を完全に隠しているわけじゃないからね。俺の大学の友人で、俺がこの手の仕事をしているって知っている奴もいるよ。まあ、世間一般に公表はしていないけどね。混乱すると面倒だし、何より、いわゆる超常現象を信じる人も少ないからね」


「自分は信じていましたけど。そしてこういう組織が世の中に絶対に存在すると、そう思っていました」


 地下三階、穂高の待つ訓練所に到着する。穂高は変わらず寝かせた薙刀の前で仁王立ちして飽きもせずにじっと観察している。見ているだけでは竜は顔を出さない、そうと理解しながら自分から触ろうとはしない。


「おお、この子がそうか」


 二階堂とは初対面の様子。すぐに滋にしたように品定めする。外見だけで体育会系と見抜いてしまう。二階堂も自ら剣道部であると説明する。自分の名前を名乗って、穂高の名を聞こうとするが、こちらは答えない。困って桐生に助けを求めるも、


「まあ、武器マニアのじいさんと、そう覚えていればいいと思うよ」


 穂高は昔から自分の名前を同業者以外の、いわゆる一般人に話そうとはしない。桐生たちも自分の名前は名乗っても、今のように本人が隠そうとする穂高の名前を誰かに教えたりはしない。


「君を呼んだのはほかでもないんや、この薙刀の竜についてなんやけど、何か喋ったとか? 何を喋ったのか、詳しく聞かせてもらえんか?」


 質問をされると二階堂も気を引き締めて、


「はい、確かに喋りました。『汝、我を使いて、武を極めん』だったか、そのようなことをまず言ってました」


「そのときの水竜の様子はどんな感じやった?」


「はい。こう、ぐるぐるっと柄の部分に巻きつくような感じで現れて、そのままそれを握る自分の腕へと登ってきて、次には竜の首が自分の肩口で何とか… 何だったかな? 『それを欲するは…』何とかで、そして『授けん』だったか、最後に『汝… それを欲するか?』と聞いたと思います。自分はその瞬間にびっくりしてしまって思わず手を放したのですが、そしたら、もう…」


「消えたというわけか。誠司のときと一緒やな」


 不思議な世界に興味があった二階堂だけに、調子に乗ってその後も何度か少し触れては竜を出し、すぐに手を放して消してしまうことを繰り返したそうだが、そのうち理性が働いてすぐに警察に連絡をしたという。


「君は、これを池の中から拾い上げたらしいけど、どうしてまたそんなところに飛び込んでいたんだ?」



続きます

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