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高校生は二階堂博明18歳(前編)

 地下一階、総務部の部屋の隣に来客用の応接室がある。八畳ほどの一室に二人掛けの黒革のソファが二つとガラスのテーブルが一つ。内窓から中を覗いてみると、黒い学生服を着た、頭の横も後ろも刈り上げた短髪の男子の後姿が見える。事務員の女性二人と情報局の若い男からの質問に答えている。姿勢が良く、背筋を伸ばしてソファに座る様は硬派なもので、返事もはきはきとして、一人称を「自分」と呼んでいる。聴取の途中、滋たちも中に入る。高校生のその顔を正面で拝んでみると、まず若い。童顔で中学生のようにも見えるが、ただ一点、眉毛だけが濃く太い。桐生にはそのゲジ眉が笑いのツボのようで、大笑いしそうなところを呑みこんでにっこりとする。それが高校生には挨拶と取られて会釈される。一礼の姿勢がまた潔い。


「こちら二階堂さん。十八歳の高校三年生です」


 情報局の村田という若い男がそう紹介すると、二階堂は律儀に立ち上がって、


「二階堂博明といいます」


 と、また会釈する。顔を上げると、きらきらした目で桐生や滋のことを見つめてくる。二人は訳もわからず、ふと照れてしまって、滋ならまだしも、珍しく桐生が、


「あ、座ってください」


 と年下相手に敬語を用いてしまう。そうして、


「村さん、どこまで聞きました? 発現した竜について、詳しく聞きました?」と、村田に訊ねる。


「いや、詳しくは、まだ。彼の身辺のことを聞き出した程度だよ」


 村田は二階堂を正面にして、ソファに座りながらテーブルの上にノートパソコンを広げて聞き出した話を入力している。UWに入ってまだ四年と経っていない村田だが、現状、この基地内で情報収集という一点に関して彼の右に出るものはいない。もちろん、能力者ではない普通の人間であるため戦闘は不向きである。それでも実行部、特に桐生隊が出動するにあたり、その作戦会議には毎度顔を出し、桐生とも常に情報を交換している。大きな仕事に限らず、身近な小さな活動に際しても、面倒な情報の収集がある場合は村田に頼むことが常で、それがまた正確に迅速に済ませてくれるものだから、桐生などは隊員の弥生以上に彼のことを重宝している。UWの経歴では桐生の後輩にあたるが、現在二十四歳であるから人生においては先輩となり、彼には敬語を使っている。


 桐生と滋は、ノートパソコンのディスプレイを覗き込む。


「なになに、W高校の三年生で剣道部。家の隣が剣道の道場で、学校の部活以外でもそこで薙刀を習っていると。家族は四人。両親に五歳離れた妹が一人。お父さんは地元企業のサラリーマンで、お母さんはスーパーで働く主婦。学校の成績は平均ほど、得意な科目は日本史。部の大会ではそこそこの成績を残すが優勝の経験はなし、剣より個人で習っている薙刀のほうが得意。最近、最後の大会も終わってそろそろ受験勉強を始めないといけないことが悩み。趣味はテレビゲームで主に格闘アクション。恋人はいない。好みの女性のタイプは清楚な人… って、こんな細かいことまでよく聞きだしましたね」


「いや、彼が自分から色々と話してくれるんだよ。俺らも調子に乗って逐一メモして、次々と聞きだしていたら、本題に入らずいつの間にか時間も過ぎちゃってね」



続きます

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