探索4-1 水海
さてさて、どの辺で食料の調達をするかなぁ。
全員男だし量が必要になる。図書室だからあまり調理しないものがいいだろう。「さすがに近くの店は漁られてるな。少し遠くに足を延ばさないと駄目っぽいな」
転移があるから、多少学園から離れても問題はないと思うんだが…。何か、この先にいる感じがする。
獣独自のにおいと生臭いなにかのにおい。…悲鳴のようなものも聞こえる。
助けに行きたいってのもあるが…武器が無いんだよな。
「ほっとくか。俺に被害が及ぶわけでもないしな」
そう結論付けて、気配の感じた場所を避けながら店を探す。
「本屋にしては見たことないな。覗いてみるか?でも、何が起こるか分からない」
…一人でいるのに声に出してる俺って悲しい人だよな。
今のところ、中には人がいる気配はない…と思うから調べてみよう。
見たこともない文字が看板に書かれているし、なにかしら情報が手に入るだろうし、だれかいれば話を聞けると思いたいし。
入り口をくぐると、真っ暗だった。
「…誰?」
「うぇ!?」
何?え!?誰かいるの?
「許可なく私の図書館に入るなんて命知らずね」
「…図書館?あの文字はそう読むのか」
「…?あなた、魔人族じゃないの?」
魔人族?異世界ならではだな。
「人間だ。というか暗いんだが」
「……人間が私の図書館に?」
おかしなこと言ったかな。入り口はすんなり開いたから問題ないと思っていたのに…。
「ライト」
おそらく、女性の声だろう。「ライト」と言ったとたんに店の明かりがすべて点いた。
「あら?ほんとね。貴方誰?」
「俺は水海 拓だ。おそらく貴女は知っているのかは知らないだろうが、異世界同士が融合をしてしまった」
「…時が来たのね。貴方は一人?」
時が来た?
「今は一人だが、学園に戻れば友達が六人いるが?」
「七人の勇者とぴったり。…私は、魔王のクシャナ・リーアという」
魔王?七人の勇者?いったい何を言っているんだ、この女性は。
本の読みすぎじゃないのかな?こんなにも…。
「綺麗で可愛い女性が?」
「にゃっ!?」
どうしたんだろうか?さっきの言葉以外なにも喋っていないはずなのに、何故顔を赤くしているのだろうか。
「どうしたんですか?」
「気が付いてないのか?」
「気が付いてない?というか、喋り方を統一してください」
「綺麗で可愛いって私に言ったの!」
「マジで!?」
声に出てましたか。マジかよ…恥ずかしいな。
「マジです。魔王に向かって可愛いとか言うやついないもん!」
…やっぱり可愛い。本当に魔王なのか?
「はいはい」
「…予言の通りに進んでるぅ」
「その予言ってなn「PPPP!」…ちょっと待て。どうした、ムトー」
『すまん。図書室が…』
「図書室がどうした?」
『奪われそうだ』
奪われそう?結界が張ってあるのにどうやって、乗り込んでこれたんだ?
『一年と三年の同盟軍と言ってる』
「なるほどな。俺たちがいない間を狙ってきたってことか。だが、同盟軍だと?随分と早くないか?」
できたとしても、もう少し先だと思っていたんだが…。
『素行の悪い奴らの集まりだ』
「ユニークスキル持ちか?」
『ユニークスキル?』
「固有スキルなんて言いにくいからな。おそらく、決壊だろう」
『結界だろ?』
「壊すほうの決壊だ。…鍵は?」
『渡してないが時間の問題かもしれん』
どうするかな。このままだと、拠点が奪われてしまう。何とかできないだろうか。
「あの、問題ないですよ?」
「どういうことだ?」
ケータイから耳を外し、魔王に答えを求める。
「石切と伊豆という勇者がもうじき駆けつけて追い払います」
『聞こえたが、どういうことだ?水海だけじゃないのか?』
「異世界の者と出会って情報を集めてたところだ」
『女性の声だが?』
「詳しいことは戻ってから説明する」
『分かった』
全く、俺たちはどこかズレているよな。こんな場面でも情報をよこせとか…。
「話が途中だったな。予言というのは何だ?」
「詳しくは言えないの」
そうか。しかし、そのままの事を受け入れることは出来ない。
「少しだけ、予言について話してあげる」
そういって、魔王は俺に座るよう声をかけてきた。
座るのを確認すると、魔王はゆっくりと語りだした。
長いので分けます